夢の3Dを裸眼で実現! いよいよ自動車用にも採り入れられるか? CORNES Technologiesの「マルチビュー 裸眼3Dディスプレイ」 【人とくるまのテクノロジー展2025】

5月21~23日に横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2025」の、CORNES Technologies のブースでおもしろいものをみーつけた!
専用めがねもゴーグルもなく3Dを体感できる液晶ディスプレイだ。
自動車のどこに採り入れようとしているのか?

TEXT/PHOTO:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)

こんどはクルマ用にやってきた3D液晶技術

いままで2Dだったのを3Dで見せてやろうという、ブームというか波がときおり訪れることがある。

2000年代の初頭だったか、3Dテレビというのがあったが、メーカーによりけりで裸眼のまま3D放送を体感できるものもあれば、専用ゴーグルが必要なものもあり、確か3D効果はゴーグル着用のほうが大きかったものと記憶する。
ゴーグルによる3Dテレビはいまでも一部で売られているのではなかったか。

2010年代初頭には、スマートホンに3D液晶を用いたものがあった。
シャープのアクオスにあり、何を隠そう、筆者が初めて購入したスマートホンは、この3D液晶のアクオスだった。
といっても、通常のアクオスは知らず、3Dのアクオスは液晶が高精細でなかったはずで表示が荒く、最初の1週間こそ「おおっ」と新鮮な気分で使っていたが、立体感が明確でないのと、飽きたこともあり、8日めからは2Dのまま使い続けた。
機種変更の頃には3D液晶であることを忘れていたほどだ。

こう考えると、3D液晶の波は10年周期で訪れているような気がする。

2020年代版の3D液晶のウェイブは、「人とくるまのテクノロジー展2025」会場のCORNES Technologiesのブースが起こしていた。

CORNES Technologiesは、あの高級外車を扱うコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドを頂点とするグループ会社のひとつで、技術開発を提供する技術の専門商社だ。

CORNES Technologiesブース。

CORNES Technologiesが展示していたのは、「マルチビュー裸眼3Dディスプレイ」。

マルチビュー裸眼3Dディスプレイのディスプレイ展示。
マルチビュー裸眼3Dディスプレイのディスプレイ展示。

謳い文句は、

・専用メガネ不要で、自然な3D映像体験を提供
・複数人が同時に3D映像を楽しめる

の2つだ。

裸眼3Dディスプレイの説明パネル。

筆者も3Dが好きで、3Dテレビに興味があったが、裸眼3Dテレビを電器屋さんで見たときは3D感が乏しかったし、だからといってテレビを見るたび専用ゴーグルを着用するのも煩わしい。
だいたい、家族が夕食時テレビを見ながら全員ゴーグルをかけている光景は異様だ。

何をも必要とすることなく、いままで同様、寝そべって見るときでも明確な3Dが得られるようになるといいのにと、あきらめ半分でないものねだりしていたものだが、本当に新しい裸眼3D技術が展示されていたのだから驚いた。

で、展示されていたのは2種で、片方はタブレットを縦置きして人物の実写やアニメーションの動画を表示し、片方の小型のディスプレイではクルマのメーターを想定した表示でデモンストレーションしていた。

3D表示できる液晶モニターを2次元の写真でお見せしたところで伝わるはずはないのだが、まずは写真左のタブレット。

画面には、(たぶん香水の)瓶やスーパーマンのような恰好をした女性、椅子に座った男性が映っているが、見るひとにはこれでも液晶からいくらか飛び出して映っている。
見え方には個人差があるようで、ブースの説明員の方は「正面からの方が」といっていたが、筆者にはやや斜めから眺めるほうが立体的に見えた。

まずはタブレットの裸眼3Dディスプレイ。2次元写真でわかろうはずはないが、これでも3D表示されている。
スーパーマンのような恰好をした女性。筆者には斜めから見た方が3Dが実感できた。
3D実感の如何は、映っている絵柄にもよる。
このような絵柄は3Dを実感しやすい。

小型モニターのほうは、メーター表示と、ドライブレコーダーを想定(?)した運転視界の動画を表示していたが、メーター表示の3Dでは、アダプティブクルーズコントロール(ACC)作動中の表示に3D効果を想定しているという。
自車と先行車との車間距離調整表示や、自車&隣の車線の走行車両表示のとき・・・つまり奥行きのある絵柄でこそ有効で見やすいだろうというわけだ。
運転視界の実写表示も3D効果が表れていた。
画面内の先行車や道の両脇にあるガードレールなど、確かに3D感がある。

小さいほうのモニターではクルマのメーターを模した表示をしていた。
こちらも斜めの方が3D感を得やすいのと、奥行きのある絵柄の方が実感しやすいようだ。
ドライブレコーダーのようなドライバーズビュー画面。このモニターは3D度を調整できるようになっていたが、最大よりちょい下のほうが3Dを実感しやすかった。
写真ではわからないと思うが、肉眼では3Dを実感できる。

どういうわけか、筆者はさきのタブレットよりもこちらのほうがすぐに3Dが実感しやすく、タブレットの場合よりも相性がよかったのかも知れない。
このへん、ひとによって差があるのだろう。

タブレットの方は知らず、こちら小型版は3Dの度合いを調整できるようになっていた。
その調整を説明員の方がしてくれたが、最大であればいいというものではないらしく、筆者には最大よりちょい下くらいがいちばん立体感が得られた。

3D視は液晶ガラス裏にセットされた特殊なフィルムと液晶制御で実現しているそうで、説明パネルにあるとおり、適用サイズは5~90インチサイズまで、最大視野角が140°、3Dが体感できる距離はディスプレイから4mほどまでとなっている。

自動車用途ではメーターや車内ディスプレイへの使用を想定しているほか、ドアミラーや、いまの電子ミラーに3D化の可能性を匂わせている。

自動車用から話がずれるが・・・
液晶の3D表示とか3Dテレビの話を見聞きするたびに思うのだが、本当の意味での3Dは、液晶から映像を浮かび上がらせるのではなく、ホログラフィックではないだろうか。

テレビの中の人物や建物といった風景が自分の目の前にあるような、というより、映っている場所orシーンの中に自分もいるような感覚になれる3Dである。
ドラマなら目の前に演者がいるような、シーンが宇宙なら自分も宇宙空間にいるような、という具合だ。

ドラマに限らない。
野球やサッカーなどスポーツ観戦なら、自分もその場にいて応援席にいるような錯覚に陥る3D・・・こうなると、液晶画面というよりは、むしろ天井あたりからどこかに映像(といっていいものやら)を照射するプロジェクターのような仕掛けになろうが、何年先か、数十年先か、ホログラフィック映像が各家庭で見られるような技術が実現するといいと思った。

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