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国内最大級のカスタムカーショーが今年も開催!
カスタムカルチャーファンにとっては初夏の風物詩とも言える『MOONEYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)が今年も5月11日(日)に開催された。

今回で37回を数えるこのイベントは、毎年5月にMOON OF JAPANが主催する国内最大規模のカスタムカーショーで、誰でも気軽に参加できる間口の広いイベントとして、1987年3月に第1回SCNを開催したのが始まりとなる。

これまでにSCNは大井競馬場、東京レールシティ汐留、レールシティ新鶴見ヨコハマ、横浜みなとみらい、東京ベイサイドスクエア、千葉ニュータウン、川崎の東扇島と開催地を移してきたが、2005年以降は現在の青海駐車場で行われるようになった。気がつけばこの場所での開催も20年目を迎え、改めて時の流れの速さを実感させられる。

今回のSCNは5月にしては少々気温が高すぎたものの好天に恵まれた。エントリーは1100台、ピンストライパー18名、スワップミート130件とたくさんのエントリーがあり、来場者は1万人を突破するなど例年にも増して大変な賑わいを見せていた。

来場者の多くが熱心なカスタムカーファンとなるが、ベテラン勢だけでなく10代や20代の若い世代や家族連れの参加も目立つ。

りんかい線東京テレポート駅やゆりかもめ線お台場駅から徒歩5分。実物大ユニコーンガンダム立像のあるダイバーシティ東京から目と鼻の先が会場ということもあり、なかには「面白そうなイベントをやっているからちょっと寄っていくか」と、軽い気持ちで訪れた一般の観光客やインバウンドの外国人の姿も見かけた。そうした人も楽しめる懐の深さもSCNの良いところではある。

以前、MOON OF JAPANのシゲ菅沼(菅沼繁博)氏のインタビューをした際に、昨今メディアが指摘する「若者のクルマ離れ」について尋ねたことがある。
その際に彼は「私はまったくそう思いません。クルマやバイクは依然として生活に必要ですし、愛車に情熱を注ぐ愛好家はまだまだたくさんいます。イベントのエントリーは着実に増えていますし、週末ともなれば大勢のファンで本牧にあるショップは大変な賑わいを見せています。しかも、来場するお客様の顔ぶれを見れば、老若男女問わずさまざまな年齢層の方がいらしてくださいます。僕の肌感覚で言えば『若者のクルマ離れ』などは起きているようには思えません」と力強く答えていたことをふと思い出した。
たしかに菅沼氏の言葉を裏付ける賑わいがSCNの会場にはたしかにあった。



MOONEYES×日産のコラボカー&アメリカ郵政公社の配達用ジープ
毎回、SCNを訪れるたびに頭を悩ますのが、その規模の大きさからどこから会場を見て回るかということだ。とりあえずは一般展示エリアはあと回しとし、まずは主催者に経緯を表してMOONEYESの車両展示スペースへと向かうことにした。

MOONEYES出展車両の目玉のひとつが、「NISSAN X YOKOHAMA Tire X MOONEYES 2023 NISSAN CARAVAN “COAST LINER”」だ。
このカスタムバンは「キャラバンにしかできないこと。キャラバンらしさを強調すること」をコンセプトに、MOONEYESらしいテイストで仕上げた珠玉の1台だ。

だが、よく見るとコーポレートカラーによるペイントを除けば、大掛かりな改造は施されておらず、ポイントを抑えたちょっとしたカスタムでここまでCOOLになるとい見本のような仕上がりとなっている。逆に言えば、 “COAST LINER”はそのエッセンスを取り入れやすく、これからオシャレなSTREET VAN(ストリート・バン)を作ろうと考えている人には大いに参考になるだろう。

ほかにも昨年のSCNに登場し、会場の話題をさらった「MOONEYES Project Car TOYOTA 60型PRIUS」や、YouTube番組でお馴染みのMOONEYES Imagineerのemiちゃんのドラッグ仕様のシボレー ・ヴェガワゴン”Sprightly Fairy”などの魅力的なマシンも展示されていた。

その中で筆者が注目したのがUSPS仕様のAMCジープだ。年式などの細かいことは不明だが、カラーリングからして1979年以降に導入された配達車両のようで、運転席に座った状態で各家庭のポストに手紙を投函できるように右ハンドル仕様のひとり乗りとなっている。ちなみに駆動方式は4WDではなくFRだ。

USPSの配達車両はグラマンLLVやダッジ・キャラバン、メルセデス・ベンツVクラスなどのバンが使用されることが多いが、右ハンドルのジープの採用も少なくないという。

1990年代初頭に2代目ジープ・チェロキー(XJ型)が日本市場向けに右ハンドルモデルを投入できたのは、このジープの後継として郵便配達車両としてすでに採用されていたことが理由であった。
なお、日本でもヒットを飛ばし、相当数が販売された2代目チェロキーも近年すっかり見なくなった。その理由は経年劣化による淘汰だけでなく、厳格な日本の車検制度により良好なコンディションを維持した個体が多く、相当数がアメリカへと里帰りして地方の郵便配達車として活用されているという事情もある。

USPS仕様のジープという日本ではこれまでお目にかかる機会がなかった珍しいクルマということもあって、この車両を目にした筆者のボルテージは上がりっぱなしだった。
ジャンル横断でさまざまなメーカー・年式のアメ車がエントリー
SCNの楽しさは一般展示エリアに並ぶさまざまなマシンを見ながら会場を散策することにある。集まった1000台以上のマシンはバリエーション豊か。


やはりSCNの主役はアメリカ車で、近年日本で人気を集めているSUVやピックアップトラックはもちろんのこと、普段街中ではなかなかお目にかかれないSTREET ROD(ストリートロッド。1949年までに製造された車両をベースに、公道走行を前提に製作したHOTROD)や1950年代のSHOE BOX(シューボックス。フラッシュサーフェイス化を狙ってフェンダーとボディを一体化させた戦後型乗用車。1949年型フォード・カスタムが始祖)、1960年代のフルサイズのセダンやクーペ、1970年代のマッスルカーなど、HOTROD(ホットロッド)、LOW RIDER(ローライダー)、TRUCKIN’(トラッキン)、STREET VANと、これだけの台数がジャンル横断で一堂に会する機会は、日本広しと言えどもSCNの会場くらいなものだろう。



そのレベルは良い意味でピンキリで、アメリカ本国のカーショーでも注目を集めるであろうハイレベルなマシンからほぼノーマルの車両までさまざまだ。アワード車両はもちろんのこと、惜しくも受賞を逃したクルマの中にも素晴らしいマシンが散見され、これらを見て回るだけでも充分に楽しめる。
DOMESTIC&EUROPEANは珍車・希少車・旧車が多数エントリー
もちろん、DOMESTIC(国産車)やEUROPEAN CUSTOM(欧州車)もアメリカ車に負けてはおらず、日本車や欧州車は年式やジャンルを問わず、魅力的なマシンが多数エントリーしていた。


DOMESTIC CUSTOMの中でもクラウンやセドリックなどのクラシックセダンやミニトラック、カローラやシビック、アコードなどをベースにしたUSDMのレベルが高いのは昔からのことだが、近年は軽自動車とコンパクトカーの中にユニークなCUSTOMが増えている。




相模原のBlowが手掛けたFuny Rider(ハイゼットトラックベース)やEasy Rider(バモスベース)などのフェイスコンバージョンカスタムはすでに一大勢力となっているし、流行の軽ベースのアゲトラ&アゲバンも元気が良い。また、1980年代のヤングタイマーのエントリーも目立っている。



EUROPEAN CUSTOMは空冷VW一色だった時代は今や昔のこと。青海駐車場が会場になってからは様々なマシンがエントリーするようになり、今年はスタンス系のBMWのエントリーが目立っていた。


これがアメリカン・カスタムかと尋ねられると正直なところ答えに窮してしまうが、自由で懐の深いSCNにはさまざまなマシンを受け入れてくれる懐の深さがある。


事実、マイノリティゆえに一般的なカーショーの枠にはまらず、エントリーするのが難しいクルマ……例えば、ロシア製のUAZ452ブハンカやマイクロバスの三菱ローザのカスタム(このクルマは「OUTDOORあそびーくる」のアワードを受賞した)などの珍しいクルマが見られた。


他にも、スズキ・ワゴンR C2やスバル・レオーネなどのマイナー旧車を暖かく迎え入れてくれる数少ないイベントでもある。おそらくはSCNならではの「来る者は拒まず、去る者は追わず」な自由な雰囲気、包容力の高さに魅力を感じて、こうした珍車や希少車が集まってくるのだろう。



そんなSCNでは「どこまでがアメリカンカスタムで、どこからが違うのか」といった神学論争はナンセンスだ。SCNのエントリー資格は「MOONEYESが好きだ!」という気持ちだけで充分なのかもしれない。まだ参加したことがないという人は、ぜひ来年こそ会場を訪れて欲しい。その際に家族や友人、恋人などを誘って行くとより一層イベントを楽しめることは請け合いだ。

なお、車種ごとのエントリー車両の紹介は次回から詳しく紹介して行くつもりなので楽しみにお待ちいただきたい。