アルト、アトレー、BMW これって何推し!? MF編集者が推す3台

カースタイリング 的にはアルト、アトレーそしてBMWの新しいキドニーグリル!! 2021-2022 MF編集者が推す3台

2021年も自動車の世界は色々話題が豊富。何よりも、本当にEVの時代が来るんんだ!と実感させられた年だった。

と言いながらも、クルマのデザインはその使命を果たすべく生まれ続けている。EVか内燃機関かという前提は極めて大きいが、コンベンショナルな内燃機関のクルマだってデザインはどんどん進化しているのだ。もちろんその開発のなかで生まれた考え方などは必ずや、これから先の時代にも貢献するはずだ。

新型スズキ・アルトには実直さが見える

大きく注目したいなと思った3台を挙げてみよう。まずは新型スズキ・アルトだ。このクルマ、なんか平凡になっちゃったのでは?と思うかもしれないが、それは2014年に登場した先代があまりにもぶっ飛びすぎていたから。いまでもなおそのスタイルは綺麗で、ある種、新型に変わってしまうのはもったいないと思うほど。それこそ営業車として走る様は、街の景観をちょっと変えたと思う。

新型スズキ・アルト。堂々と安定した形を見せる。

しかし、今回そこを大きく変えるにはそれだけの理由があって、その目指すものがなかなかストレートにズドンと心に伝わるものだった。

何をやりたかったのかというと、正真正銘のファミリーカーにしたかったのではないか…ということ。アルトという王道のクルマは、必要最小限ながら充分な4ドアセダン。4ドアである以上、後席もしっかりと使いたい。しかし先代のアルトはクーペ的なカタチなので、後席が狭いように見える。ファミリーで乗ることを想定すると、ちょっと違うかなと思わせてしまう要素ともなったように思う。

先代アルトは、実にスタイリッシュ。その後に登場したイグニスにも影響を与えた。

「王道セダンのカタチ」として、初代アルトどころか初のFFとして世に送り出されたスズライトSS系のオマージュなんじゃないかな? とも思われるほど。しっかりと存在感のあるボンネット、四隅に踏ん張るタイヤ、ウインドウをあまり大きくしないことで、小さいのに堂々とした雰囲気も充分。

スズライトSS。軽自動車ながら堂々たるスタイル。1956年撮影。

今回登場した新型アルトには、そんな雰囲気を回帰させたようなイメージがある。新型で何よりも重要なのが、しっかりと存在感を見せるボンネット&ヘッドライト。そしてすっくと立ち上がったウインドウ&ピラー。広い室内を外からも感じさせ、それいてどっしりして感じられる。このどっしり感は、ボンネットの存在感とともに、前後に伸びるサイドに伸びる太いライン=キャラクターラインが効いている。ピラーの付け根をあえて内側にすることによって、ショルダー状の太いラインを感じさせる。

重要なのはリヤドア後端とリヤフェンダーのあたりでリヤピラーが徐々に外側に広がりながら、キャラクターラインが消えていく。もしこのショルダーを後ろまで残してしまったら、リヤピラーは内側に入ったままでリヤゲートが小さくなる。それだけでなく、こうして広げたことでリヤから見るとピラーが下に向けて開いて見えるので、リヤタイヤに力をかけるような、安定感のあるカタチに仕上がった。

大きな荷室を印象づける新型ダイハツ・アトレー&ハイゼットカーゴ

新型ダイハツ・アトレー。ハイゼットカーゴも基本デザインは同じ。

そして2台目は、ダイハツ・アトレー&ハイゼットカーゴ。アトレーは4ナンバー登録となり、ワゴンの文字が消えた。4ナンバーでも後席を充分に確保できたことと荷室を存分に使い倒せるように、という思いが伝わる。大きな荷室はリヤタイヤの張り出しもないフラットさで、荷室幅も4人乗車時に1410mmとクラストップ。後席を格納すると、幅は1270mmとなり室内長/荷室高はアトレーが1820/1215mm、ハイゼットカーゴが1915/1250mmという完全にフラットでスクエア、そして天井の高い空間が生まれることから、畳なども余裕で載せられるほかロードバイク(スポーツ自転車)もタイヤを外さずに載せることができる。

ズドンと開く大きなゲートが特徴。

何より驚くのがリヤゲートからの開口部の大きさで、ボディサイドからガバッと開くゲートの様子は、側面から切って開けるコンビーフ缶のように中身が何の抵抗もなくするっと出せる痛快感がある。サイドまで回り込んだゲートは先代同様だが、ルーフ部分をさらに外側に広げるなど徹底した開口部拡大が進められている。

この広大な空間を創り出すにはエアクステリアのデザインが重要になってくる。基本はできるだけ垂直に立ち上がるピラーによって広い空間を稼ぐことがいいのだが、ボディ剛性の確保からはできるだけ丸い形がよい。そのために空間にあまり影響のない頭上部分を内側に傾斜させて丸めながらも、肉厚を薄くできるだけ広く確保するというせめぎ合いをみることができる。また、デザイン的には本当に垂直にピラーを立ててしまうと、上に広がって不安定に見えてしまうことから、四角い形を演出するなかでも四隅を適度に絞った形にするのは必須。

ボディを一周するような太いキャラクターラインで締め上げ、上屋はそれより膨れ上がるように大きな室内を想像させる。大きなウインドウも特徴。

このさじ加減が絶妙だ。

さらに重要なことは室内が広く見えるデザインにすることのようで、ひとつにはリビングルームのような大きなウインドウを入れ込んでいる。また、ボディサイドをくるりと回る強い段差のあるライン=キャラクターラインによって、車体をキュッと締め上げている。これを利用して、そこから上の部分が外に張り出して見える造形としているのが面白い。特に後ろからみるとその印象は強く、ここではルーフ周りを少し絞って内側に傾けたことが、逆にはちきれそうに張り出したキャビンの印象を強めている。

そして高く張り出す、四角いボンネットは安心感を表現。またフロントドアのウインドウは、側面から見た時に前傾していて、高い視認性を確保しながらも「動き」を見せている。また古臭いことかもしれないが、ドリップモール(雨どい)をちゃんと装着してきたことも嬉しいポイントだ。これがないと雨が降った時にドアを開けると、サッシに溜まった雨水が落ちてくることがある。実はドリップモールは現行センチュリーにもしっかり採用されているもので、美しいデザインを追求する時には省略されやすいのだが、すごく乗員に対する気遣いを感じる部分でもある。

かっこいい or 悪い はここからの頑張りで評価される!!  BMW4シリーズ&EVモデル

そして3台目はBMW4シリーズなど、キドニーグリルの進化だろうか。最近のグリルデザインといえば低く小さくなるのが一般的だったが、BMWは8シリーズや7シリーズなどヘッドライトとのバランスのなかでも、むしろ大きくしてきた。グリルを低く下げて空力に有利にするのは、世界的な流れ。その轍のなかで、グリル的なものがこれからもアイコニックな存在として重要であることを示唆したものでもあると思う。実際にはグリルそのものの形が空気を取り込む実効サイズではなく、上部を開口していなかったり、内部に可動式のフラップを用いるなどの傾向がある。そんなことを見ても、グリルが機能以上に個性の象徴となっていることがわかる。

評価の分かれるBMW4シリーズのより縦長になったキドニーグリル。でも見慣れるとかっこいい。

そんななかで4シリーズなどの新たな流れとなるのが、縦長のグリルだ。これはかつてのBMW328などいにしえのモデルが採用していたもののオマージュとも言われている。実際には当時のモデルには、縦にする必然があった。ボンネットはエンジンを包むカバーであり、その先端に冷却機能が必要だった。また、フェンダーは当時のモデルはまだエンジンフードとは独立した形だったので、エンジンの正面視の縦長とするのがもっとも効率的だったのだ。

1939年に登場したBMW328。エンジンを囲むためのボディにとって縦長のグリルは必然。その中でBMWらしさを表現しているのがキドニーグリル。

そしてデザイン的には、周囲の競合モデルが立派なメッキグリルを仕立てていたのに対して、ボディに一体化したスラントするようなグリルとすることでスポーティで個性的な出で立ちとしていた。

2011年ヴィラデステで開催されたコンクール・ド・エレガンスに出品されたコンセプトカー、BMW 328 Hommage(オマージュ)。縦長グリルでこんな表現も悪くない。IX

これらの時代の特徴のリバイバルが、現代の4シリーズやEVのiXなどに表現されている。まず4シリーズではBMWが大切にしていた縦に搭載される直列6気筒のエンジンのズドンと前に抜ける感じが、この縦長グリルに象徴された。左右のヘッドライトやボンネットのカウリングなどはできるだけ小さく、機能を最小限にカバーする形へと戻っていっているように見える。つまりは、内側の機能を想像させる形として、必然の表現になっているのだ。

それを引き継ぐ形となったのがEVモデル。燃焼を繰り返すエンジンをもっぱら水で冷やす……という役割を必要としないEVにとって、ラジエターグリルは不要なものとなっていくはず。しかし、顔としての何かを多くのメーカーが求めた。BMWも然りで、さらに伝統を色濃く継承したといえる。これからはオーナメントとしての存在の第一歩が縦に大きなグリルだ。

BMW iX。極めて個性的フェイスを持つ。ここからが進化の始まり。

形を継承するのは、ブランドとしては必要なことだが、そこに機能が存在すれば説得力は大きい。世界的にEVに向かって形が残されたグリルは、現状では「名残り」でしかない。その中で、あえて原点に戻り一見不恰好とも言える縦長のグリルにトライしたBMWには、この先の大きなサクセスストーリーを期待したいところだ。

それとヴェゼルについても書きたかったのだが、今回は3台ということでここまでにしておきましょう。

著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…