改良「もがみ」型護衛艦は何が変わる? 防衛装備展示会「DSEIジャパン」三菱重工ブースで聞いた

「もがみ」型護衛艦の発展型である「新型FFM」の模型。「もがみ」型12隻に続き、こちらも12隻の大量建造が予定されている(写真/筆者)
5月21日から23日の日程で開催された日本唯一の防衛装備展示会DSEIジャパンより、日本の防衛大手、三菱重工に展示された「もがみ」型護衛艦改良型や次期練習機など、自衛隊の将来装備について話を伺った。【自衛隊新戦力図鑑】
TEXT:綾部剛之(AYABE Takayuki)

オーストラリアへの輸出も狙う「新型FFM」

現在、海上自衛隊への配備が進んでいる多機能護衛艦(FFM)「もがみ」型のアップグレード版が「新型FFM」である。既存の「もがみ」型は基準排水量3900トンで、海自の主力である汎用護衛艦(DD)より、ひとまわり小型。日本沿岸・周辺海域における平素からの警戒監視を担う艦として、現在7番艦まで就役している。

「もがみ」型が全長133m・基準排水量3900トンであったのに対して、新型FFMは全長142m・基準排水量4880トンと規模が拡大している(写真/筆者)

新型FFMは何がアップグレードしているのか? 武装ではVLS(ミサイル垂直発射装置)のセル数(発射管数)が倍増し、「もがみ」型16セルに対して新型FFMは32セルを備える。また、「もがみ」型のVLSが対潜水艦用の07式魚雷投射ロケットしか搭載しないのに対して、新型FFMは新型の艦対空ミサイル「23式艦対空誘導弾」や、長射程の対艦・対地ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)」が搭載され、戦闘力が大幅に向上する。また、「もがみ」型の対機雷戦ソナーに魚雷警戒能力を加えるという話も伺った。これにより「いずも」型など大型艦の直衛艦としての役割も期待できるだろう。

「もがみ」型護衛艦ではVLSは後日装備とされ、就役時には装備しておらず、この5月に就役した7番艦「によど」で、初めて就役時から装備されるようになった。1~6番艦にも今後搭載される予定だ(写真/海上自衛隊)

また、新型FFMはオーストラリア海軍の次期フリゲート選定候補ともなっており、官民一体となった売り込みが続いている。もし、採用を勝ち取った場合は最初の2~3隻は日本で建造されることになるという。

将来戦闘機を睨んだ次期練数機導入

三菱重工ブースで目立っていたのが今回初公開された次期練習機「T-X」の模型だ。現在、航空自衛隊では練習機としてT-4を使用しているが、同機の就役から40年近くが経過しており、最新のF-35戦闘機や将来戦闘機を考えたとき、搭載システムや性能面の発展にともない新たな練習機が必要となっている。

次期練習機T-Xの模型。T-4が担っている訓練だけでなく、現在はF-2やF-15Dで行なわれている高度な戦術訓練まで含めた練習機を想定しているようだ。コクピット横には機関砲を搭載し、その銃口部が確認できる(写真/筆者)

こうした変化のなか今回のDSEIジャパンでは、次期戦闘機計画「GCAP」のパートナーであるイタリアのレオナルド社や、韓国のKAIも練習機の模型を展示して日本の次期練習機の座を伺う姿勢を見せていた。

韓国の航空大手KAIのブースに展示されたT-50練習機。韓国軍での使用のほか、インドネシアやポーランドに輸出されている。練習機のほか軽戦闘機・攻撃機としても使用できる(写真/筆者)

装甲車の車体から自爆ドローンが!?

さて、三菱重工のブースでは89式装甲戦闘車に似た車両のCGが発表されていた。こちらはUGV(無人地上車両)であり、車体後部の乗員用キャビン部分からアメリカの自爆ドローン「スイッチブレード」ような無人機が射出されるというギミックが目を引いた。

三菱重工の大型UGVコンセプト・モデル。車体後部側面にUAVの射出口が設けられており、スイッチブレードに似たUAVが飛び出していた(写真/筆者)

UGVとしては大型の車体であり、オプションで乗員が搭乗できたり、隊員輸送なども考えられたりしているのかもしれない。ただ、担当者によればこちらはあくまでコンセプト・モデルであり、そのまま実現するものではないとのことだった。少子化により隊員募集が厳しさを増すなかで、自衛隊の無人機活用はますます重要になっており、空や海に続いて、陸でも偵察や輸送などの用途で各種の無人機を試験的に導入している。こうした大型車両UGVの動向も気になるところだ。

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綾部 剛之

軍事関連をメインとした雑誌/書籍の編集者。専門は銃器や地上兵器。『自衛隊新戦力図鑑』編集長を務めて…