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■若い層をターゲットにした小さな高級車ブレビス
2001(平成13)年6月4日、トヨタから小さな高級車をコンセプトにしたミディアムセダン「ブレビス」がデビューした。1998年に同様のコンセプトの「プログレ」が発売されており、ブレビスはその派生車でやや若い層をターゲットにスポーティなスタイリングを採用した。

小さな高級車の元祖プログレ
1998年5月、コンパクトながら一般的な高級車のような質感のクルマ“小さな高級車”をテーマに開発されたトヨタ「プログレ」がデビューした。全長はクラウンより300mm短く、5ナンバー規格の4700mmより200mmも短い。そして車幅は、5ナンバー規格に収まるコンパクトサイズである。

全長の割にホイールベースは2780mmと長いため、余裕の室内空間を確保。インテリアについては、ウォールナットの本木目パネルや革シート、高級高性能オーディオなどの高級車にふさわしい素材が贅沢に使われた。

パワートレインは、最高出力200ps/最大トルク25.5kgmを発揮する2.5L直6 DOHC、215ps/30.0kgmの3.0L直6 DOHCの2種エンジンと4速/5速ATの組み合わせ。駆動方式は、エンジン縦置きのFRおよび4WDが用意された。
またサスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン。ABS、TRC(トランクションコントロール)、VSC(スタビリティコントロール)、ブレーキアシストを標準装備、上級グレードには世界初のカーテンシールドサイドエアバッグが採用された。
車両価格は、標準仕様の2.5Lエンジン搭載車が310万円、3.0Lエンジン搭載車が350万円。高級車並みの静粛性や乗り心地、安全性をアピールしたプログレは、新たなコンセプトのクルマとして大きな注目を集めて発売当初は好調な販売で滑り出したが、その後は徐々に伸び悩んだ。
プログレに続いたやや若い層向けのブレビス

プログレデビューの4年後の2002年6月のこの日、小さな高級車第2弾となる「ブレビス」がデビューした。ブレビスは、プログレの姉妹車として生まれた3ボックスセダンだが、ターゲットはやや若い年齢層とし、プログレとの差別化を図った。

「セルシオ」を思わせるスタイリングと同等以上のクオリティを目指し、フロントのメッキグリルや前後バンパー、サイドモールはメッキ処理、ボディは5層コートが施され高級感が演出された。

インテリアについても、本革巻ステアリング、高級ファブリック、または本革シート(オプション)、電動リヤサンシェードなどを備える。さらに、シートポジションやステアリング位置のみならず、ペダルの位置まで設定できる「パーソナルドライビングポジションシステム」など、高級車に負けない先進技術が採用された。
パワートレインは、最高出力220ps/最大トルク30.0kgmを発揮する3.0L直6 DOHC直噴エンジン(FRのみ)、200ps/25.5kgmの2.5L直6 DOHC直噴エンジンの2種エンジンと5速MT(FR)および4速AT(4WD)の組み合わせ。駆動方式は、FRとフルタイム4WD(i-Four)が用意された。

車両価格は、FR仕様で337万円(2.5L)/377万円(3.0L)。当時の大卒初任給は19.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約393万円/440万円に相当する。
余裕のある走りと滑らかな乗り心地は、輸入車を含めても群抜くレベルだったが、プログレと同様にその魅力が日本市場では評価されず、2007年にプログレとともに1代限りで生産を終えた。
日本で小さな高級車が成功しない理由は

小さな高級車を謳ったブログレとブレビスの人気は限定的だった。それ以前にも、日産「ローレルスピリット」やマツダの「ベリーサ」なども小さな高級車を目指したクルマだったが、やはりヒットモデルとはならなかった。

小さな高級車を好むのは、金銭的な余裕はあるが、大型車でなく扱いやすい手頃なサイズの高級車を望むユーザーになる。例えば、サラリーマンがリタイア後に入手する、余裕のあるシニア層が該当するかもしれない。一方で、日本には高級車=大型車という既成概念が根強くある。加えて、設計的にスタイリングがどうしても寸詰まり的、ズングリムックリになりやすい点も、小さな高級車の人気が盛り上がらない理由と思われる。

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2023年11月に発売された「レクサスLBX」は、久しぶりに登場した小さな高級車だが、発売以来好調な販売を続けている。レクサスLBXが、今後も引き続き人気を維持して新たな市場を開拓するのか、注目だ。
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