目次
■マツダを代表する大衆車ファミリアは9代目がラストモデルに
1998(平成10)年6月9日、1963年に誕生したマツダの大衆車「ファミリア」が最後のモデルチェンジを行ない9代目に移行した。プラットフォームなど基本コンポーネンツを上級車「カペラ」と共有し、セダンとともに5ドアハッチバックとステーションワゴンを融合させた「S-ワゴン」が注目を集めた。

本格的な総合自動車メーカーを目指して誕生したファミリア


1955年に政府が提唱した「国民車構想」に刺激され、自動車メーカーから新型の小型乗用車が続々と登場。トラック事業で成功し、総合自動車メーカーを目指していたマツダは、1960年に乗用車市場への進出を図るトップバッター「R360クーペ」、第2弾として1962年に軽乗用車「キャロル」を発売した。

続いたのが、1963年にデビューしたマツダ初の小型車「ファミリア」であり、最初は当時ライトバンの需要が高いという判断から「ファミリアバン」を投入。最高出力42psを発揮するアルミ合金製782ccの直4 OHV水冷エンジンを搭載し、最高速度は105km/h、最大積載量400kgと実用性の高い商用車だった。

翌1964年、本格的な小型大衆車として「ファミリアセダン」がデビューした。ファミリアバンのエンジンを改良した最高出力45psのエンジンを搭載して、最高速度は115km/hと大衆車としては世界レベルの動力性能を誇った。
小型大衆車の先陣を切ったトヨタ「パブリカ」や三菱の「コルト」よりも商品力で上回り、ファミリアシリーズの月販台数は1965年には1万台を超える大ヒットを記録した。
その後、ファミリアは着実にマツダの中核モデルに成長


・2代目(1967年~)
量産初のロータリーエンジン搭載車「コスモスポーツ」に続く、第2弾のロータリー車「ファミリア・ロータリークーペ」が設定され、大衆車ながらパワフルな走りをアピールした。


・3代目(1973年~)
排ガス規制が強化されたため、排ガス低減が困難なロータリー車は廃止。排ガス規制対応については、独自に開発した希薄燃焼方式や酸化触媒車で対応した。

・4代目(1977年~)
それまでの3ボックス型セダン/クーペから当時流行っていた親しみやすい2ボックス型のハッチバックに変貌。鮮やかなボディのパステルカラーとキュートなデザインが若者や主婦層から支持されてヒットモデルとなった。

・5代目(1980年~)
それまでのFRからマツダ初のエンジン横置きのFFに変更。エッジの効いたスタイリッシュな欧州風のスタリングとFF化によって実現された広い室内空間が特徴だった。さらにターボモデルも追加され、軽快かつスポーティな走りも高く評価され、国内月販台数で首位に立つこともあり、マツダの国内販売最高を記録する空前の大ヒットを記録した。



・6代目(1985年~)/7代目(1989年~)/8代目(1994年~)
大ヒットした5代目のキープコンセプトで6代目も好調な販売を続けたが、販売系列の5チャンネル化の失敗やバブル崩壊の影響などで、7代目と8代目ファミリアの販売も低迷してマツダは経営危機に。この状況を受けて、1996年にマツダはフォード傘下に収まった。


フォード傘下の中、特徴的なS-ワゴン誕生
フォードから派遣された社長のもと、マツダは経営再建に向けて車種ラインナップの見直しを進めた。そのような状況下で、1998年6月のこの日、ファミリアは9代目へとモデルチェンジした。

ボディタイプは4ドアセダンとコンパクトワゴン「S-ワゴン」の2タイプを設定。S-ワゴンは、5ドアハッチバックと当時流行っていたステーションワゴンを融合させたようなモデルだった。セダンは、オーソドックスなファーマルにもカジュアルにも似合う調和のとれたスタイリング、S-ワゴンは5ドアハッチバックをベースに伸びやかなルーフやソリッドの面構成によってスポーティさが演出された。

エンジンは、最高出力130psと150psを発揮する1.5L直4 DOHCをベースに、セダンには85psの1.3L直4 DOHCと70psの2.0L直4 SOHCディーゼルの4種、S-ワゴンには135psの1.8L直4 DOHCを加えた3種を設定。トランスミッションは、5速MTおよび電子制御4速ATが組み合わされ、駆動方式はFFと4WDが用意された。


車両価格は、セダンが99.1万~166.4万円。当時の大卒初任給は19.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約117万~196万円に相当する。9代目ファミリアのS-ワゴンは、当時のステーションワゴンブームの中で一定の人気獲得に成功したが、セダンは厳しい販売を強いられた。

結局、2003年10月に実質的な後継車「アテンザ」のデビューに合わせて9代目ファミリアは生産を終了、同時に9代40年余り続いたファミリアの歴史に幕を下ろした(ただし、OEM車のファミリアバンは継続)。

・・・・・・・・
9代目ファミリアは、マツダの経営難に端を発するモデル再編などの影響によって厳しい環境下での船出となった。ただし、9代目が引き継いだファミリアのDNAは、その後のアクセラに受け継がれて「デミオ」とともに2000年以降のマツダ再生の起爆剤となった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。