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■スポーティ志向を強めた3代目ランサー
1988(昭和63)年6月10日、三菱自動車を代表する小型大衆車「ランサー」の3代目がデビューした。3代目ランサーは、サファリラリーなどを制覇してその名を世界に知らしめた初代ランサーGSRの伝統を受け継ぎ、大衆車ながらランエボに繋がる高性能モデルGSR 4WDを設定して走りを極めた。

“ラリーの三菱”の礎を築いた初代ランサー1600GSR
ランサーは、1973年1月に「ギャラン」よりワンランク下の小型大衆車として誕生した。ロングノーズにショートデッキの落ち着いた雰囲気で、パワートレインは1.2L/1.4L/1.6Lの3種のエンジンと4速および5速MTの組み合わせ、駆動方式はFRだった。

当初からWRCに参戦することを想定し、ボディは独自開発のフレームレイアウトで構成されたモノコックフレームで剛性を高め、足回りやブレーキも強固にセッティングが施されていた。そして、8ヶ月遅れで投入されたのが、スポーツグレードの「ランサー1600GSR」である。

エンジンは、最高出力110ps/最大トルク14.2kgmを発揮する1.6L直4 SOHCにツインキャブレターを装着。高性能エンジンと825kgの軽量ボディ、優れた耐久信頼性をもつランサー1600GSRは、WRCに挑戦してすぐにその実力を見せつけた。

発売されたその年の10月、サザンクロスラリーで初参戦ながら1位から4位まで独占して総合優勝。さらに、翌1974年にはサファリラリーで総合優勝、サザンクロスラリーも連覇し、その後1976年にかけてサザンクロスラリー4連覇、サファリラリー3連覇の偉業を成し遂げた。

WRCを席巻したランサーの名前は世界に轟き、“ラリーの三菱”という称号を獲得したのだ。
高性能ターボモデル“ランタボ”が登場した2代目ランサー

ランサーは、1979年4月に初めてのモデルチェンジで2代目「ランサーEX」に移行。ランサーEXは、初代よりボディサイズを拡大、好評だったギャランΣを小型化したような角型ライトとボクシーなスタイリングが特徴だった。

パワートレインは、排ガス浄化システムMCA-Jet搭載の最高出力80psを発揮する1.4L直4 SOHC、86psの1.6L直4 SOHCの2種エンジンと4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式は先代同様FRが踏襲された。

オーソドックスで地味なイメージのランサーEXだったが、それを覆すスポーツモデル「ランサーEX1800GSRターボ」が1981年に登場。最高出力135ps/最大トルク20.0kgmを発揮する1.8L直4 SOHCターボエンジンを搭載したモデルだ。

1983年には、インタークーラーを装備したターボエンジンが登場し、160ps/22.0kgmまでパワーアップした。「ランタボ」の愛称で呼ばれて、たちまち走り屋たちの絶大な支持を集めるようになった。
ランエボの原型となった“ターボ+4WD“モデルが登場した3代目ランサー
そして1988年6月のこの日、“アクティブセダン”を謳った3代目ランサーがデビューした。“オーガニックフォルム”と称するくさび型フォルムをベースにした5ドアハッチバックながら、セダン風ルックスによってスポーツセダンであることをアピールした。

エンジンは、GSR用の最高出力145ps/最大トルク21.0kgmを発揮する1.6L直4 DOHCインタークーラーターボを筆頭に、125ps/14.0kgmの1.6L直4 DOHC、73ps/11.0kgmの1.5L直4 SOHC、61ps/11.3kgmの1.3L直4 SOHC、61ps/11.3kgmの1.8L直4 SOHCディーゼルの5機種をラインナップ。トランスミッションは、4速/5速MTおよび3速/4速ATで駆動方式はFRだが、トップグレード“GSR 4WD”にはVCU(ビスカスカップリング)センターデフ式フルタイム4WDが設定された。

注目を集めたGSR 4WDには、60扁平ワイドタイヤやエアロパーツ、スポーツシート、3本スポーツステアリングなどを装備して、スポーツ派ユーザの獲得に成功した。


車両価格は、人気のGSRが182.4万円(2WD)/204.8万円(GSR 4WD)に設定。当時の大卒初任給は15.8万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約266万円/298万円に相当する。新しいスポーツセダンをアピールした3代目ランサーだったが、高性能GSRグレード以外のアピール力は弱かった。

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初代ランエボは、次の4代目ランサーに名機4G63(2.0L直4 DOHC)インタークーラーターボを搭載して仕立てられたが、3代目ランサーでほぼその原型が出来上がったと言える。大衆車セダンでありながら、三菱は当初から世界の檜舞台WRCでの活躍を見据えて着々と準備を進めていたのだ。
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