ルノー「キャプチャー」がフロントマスクを一新した! 389万円のハイブリッド仕様に進化した欧州コンパクトSUVを試乗レポート

ルノーのBセグメントSUV「キャプチャー」が新しくなった。マイナーチェンジながら「フューチャーアイコン」デザインにより斬新に生まれ変わったフロントマスク、10.4インチのセンターディスプレイを備えたコックピットがまさに未来を示している。ルノーの電動化戦略に則り、1.3Lターボのマイルドハイブリッドを新搭載。輸入車ハイブリッドとしてはトップの燃費性能を誇るフルハイブリッド「E-TECH」と合わせた電動パワートレインの違いは?

REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

電動化を推進、2種類のハイブリッドを搭載

新しいフロントマスクになったルノー・キャプチャー

SUVがメインストリームとなって久しいが、欧州におけるコンパクトSUV(Bセグメント)マーケットを切り開いたのは「ルノー・キャプチャー」といって異論はないだろう。初代キャプチャーが誕生したのは2013年で、グローバル累計で200万台を超える販売実績を誇る人気モデルだ。

現在、販売されているキャプチャーは2019年にフルモデルチェンジした2代目。2022年には「E-TECH」と名付けられたルノー独自のフルハイブリッドを追加設定したことで日本での注目度がグンと上がった。なにしろ、輸入SUVにおいてフルハイブリッドという存在は珍しく、その主要メカニズムであるドッグクラッチマルチモードATはF1テクノロジー由来というのだから、いわゆるステロタイプなフレンチ好き以外にも刺さる一台として進化した印象がある。

そんなキャプチャーがマイナーチェンジを受けた。

結論からいうと、新型キャプチャーは全車ハイブリッド仕様となった。

ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ E-TECH

新しくなったことがひと目でわかる外観の変化は後ほど触れるとして、まずはパワートレーンの進化から紹介したい。

将来を見据えたルノーの電動化において、まずはハイブリッドを拡大する戦略を取っている。キャプチャーから純エンジン車が消えて、すべてハイブリッドになるというのも、その一環といえる。

ただし、全グレードが「E-TECH」となったわけではない。手頃な価格となるマイルドハイブリッドの新設定がニュースだ。

リヤバンパーの意匠も変わった。車名ロゴがブラック仕立てになるのはエスプリ アルピーヌの差別化ポイント

マイルドハイブリッドの構成は、1.3L 4気筒ガソリン直噴ターボを、12Vのモーターでアシスト、7速トランスミッションでフロントタイヤを駆動するというもの。WLTCモード燃費は17.4km/L、最高出力158ps(116kW)は、この輸入車のBセグメントSUVカテゴリーにおけるもっともパワフルな一台といえるパフォーマンスとなっているのも注目だ。

1.6Lエンジンと2つのモーター、1.2kWhの水冷バッテリーを組み合わせたフルハイブリッド「E-TECH」も、バッテリー充電量を40%以上にキープして、電動パワートレインのアドバンテージを最適化する「E-SAVE」機能を備えるなど進化。WLTCモード燃費も23.3km/Lとマイナーチェンジ前の22.8km/Lから向上している。

林道もよく似合うルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド

グレード構成は、スポーティかつエレガントな雰囲気の「エスプリ アルピーヌ」とフレンチモデルらしい温もり感のある「テクノ」の2つ。ただし、後者はマイルドハイブリッドだけの設定となる。なお、全車FWD(前輪駆動)のラインナップだ。

ルノー・キャプチャー グレード構成
エスプリ アルピーヌ E-TECH(フルハイブリッド):454万9000円
エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド:409万円
テクノ マイルドハイブリッド:389万円
エスプリ アルピーヌにはフロントフェンダーに専用マスコットが与えられる
18インチタイヤを履く「テクノ」グレード

フロントグリルだけでなくボンネットまで新作された

ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ E-TECH

それにしても、新しくなったキャプチャーを目前にすると、パワートレーンの進化を忘れてしまうほどインパクトがある。

従来のキャプチャーは、コンサバティブやオーソドックスといった表現をしたくなる顔つきだったが、今回のマイナーチェンジにより未来的な印象になった。ルノーいわく「エレガントでありながらテクノロジーを感じさせる」と表現しているが、まさしく「フューチャー・アイコン」として、ルノー電動化の未来を示すデザインとなっている。

大きな変更点は、前後バンパーとボンネット。ポリカーボネート素材により深みと広がり表現するフロントグリルは、たしかに未来の表現という印象だ。従来型と異なり、中央部分が盛り上がったボンネットは押し出し感を強めている。

ルノーのロゴにイスパニアされたDRL、その脇にはエアインテークも見える

なにより、新しさを感じさせるのはフロントバンパーの両サイドにあるデイタイムランニングライト(DRL)。ルノーのロゴ「ロザンジュ」を分割したようなデザインとなっているため、遠くからも”ルノー”であることが感じられる。さらに、DRLに近づいていくと、その脇に、ダミーではない2つのエアインテークが設けられることが確認できる。これは空力とブレーキ冷却を担う機能デザインであり、新しいキャプチャーのスタイリングがテクノロジーに裏付けられていることを実感させる。

インテリアでの注目は、インパネ中央に置かれた10.4インチの縦型ディスプレイ。こちらは各種設定を行なうほか、スマートフォンと連携するインフォテイメントシステムとして機能する。さらにエスプリ アルピーヌは、助手席前にあるグラデーションの効いた加飾パネルや、ロゴ入りバイオスキンシートを採用。シートベルトにブルーステッチが入っているのも洒落ている。

ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ E-TECHのインテリア
フルハイブリッドの荷室容積は440L、マイルドハイブリッドは536Lとなる

日常のリニア感はフルハイブリッド、スポーティさはマイルドハイブリッド

ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ E-TECH

今回、エスプリ アルピーヌの「E-TECH」フルハイブリッドと、新設定されたマイルドハイブリッドの2台に試乗することができた。いずれも19インチタイヤを履き、内外装では区別がつかないほどだが、はたして乗り味はどれほど異なるのだろうか。

まずはフルハイブリッドのステアリングを握ってみよう。

エスプリ アルピーヌの運転席は電動調整式となっており、ステアリングもチルト&テレスコピックの調整範囲は広い。SUVらしい眺めのいい高めのポジションにしても、F1由来のテクノロジーを楽しむべく低めのシート位置にしても、しっくりくるようにポジションを合わせることができる。動き出す前から好印象だ。

ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ E-TECH

エンジン側に4速、駆動モーター側に2速のトランスミッションを与え、その組み合わせによって高効率な走りを実現する「E-TECH」だが、運転している限りはそうした複雑な制御をしていることはわからない。それだけスムースなパワーデリバリーができているということだ。唯一、気になるのは走行中にエンジンが始動した際に、アクセルペダルから微振動を感じることだが、重箱の隅をつつくような話だ。

フルハイブリッドのエンジンルーム
マイルドハイブリッドのエンジンルーム

それにしても、アクセルペダルを操作する右足と駆動系がつながっているかのようなリニアなフィーリングは、たしかにフルハイブリッドらしい。「ルノー・マルチセンス」と名付けられたドライブモードは、スタンダードが「コンフォート」で、ほかに「エコ」や「スポーツ」などを選べるが、とくにコンフォートでのリニア感が抜群という印象も受けた。

ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド

マイルドハイブリッドには、アグレッシブな気持ちで運転するほうが似合っているという印象を受けた。

同じく「ルノー・マルチセンス」を切り替えて走ってみたが、コンフォートやエコでは物足りなさを覚えたレスポンスは、スポーツモードにすることで完全に解消。BセグメントSUVとして最強といえる158psのパワー感を存分に味わえる。フルハイブリッドに対して90kg軽いこともあり、コーナー進入時の姿勢もスパッと決まりやすい。パドルシフトが備わることもあり、ワインディングなどをスポーティに楽しみたいのであれば、マイルドハイブリッドを選ぶのは正解といえるかもしれない。

ドライブモード「ルノー・マルチセンス」はセンターディスプレイで切り替える

ただし、225/45R19タイヤを履くエスプリ アルピーヌの乗り心地についてはフルハイブリッドのほうが優勢といえる。リヤの軸重が重くなっていることがプラスに働いているのか、フルハイブリッドのほうが路面からの入力を上手に受け止めている印象を受けた。ちなみに、試乗車のタイヤ銘柄はミシュラン・eプライマシー2と共通だった。

こうした乗り心地の違いは車重によるものだけではないかもしれない。現時点で、フルハイブリッドとマイルドハイブリッドでどのようにサスペンションのセッティングが異なっているかは不明だが、足回りへのこだわりは見える範囲でも感じられたからだ。

シートにはアルピーヌのエンブレムが入る

エスプリ アルピーヌについてはタイヤ銘柄、アルミホイールの意匠とも共通仕様だが、ホイールの隙間から覗けるフロントブレーキはフルハイブリッドとマイルドハイブリッドで異なる仕様となっていた。キャリパーの形状も違えば、ブレーキローターも別物。マイルドハイブリッドのローターはハット部分にホールが開けられた設計となっている。その狙いをひと言で表現するのは難しいが、エンジニアが細部までこだわっていることは間違いない。

フレンチSUVの世界観を求めるルノーのファンだけでなく、テクノロジーファーストの意識が強いユーザーにとっても大いに注目のニューモデルといえそうだ。

19インチタイヤの指定空気圧はフロント230kPa、リヤ210kPa

新型ルノー・キャプチャー主要スペック

ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド。フロント軸重820kg、リヤ軸重510kg
エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド
全長×全幅×全高:4240mm×1795mm×1590mm
ホイールベース:2640mm
車重:1330kg
サスペンション:Fストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FWD
エンジン
形式:1.3L直列4気筒DOHCターボ
排気量:1333cc
最高出力:158ps(116kW)/5500rpm
最大トルク:270Nm/1800rpm
燃料:プレミアム
モーター(BSG)
形式:交流同期電動機
最高出力:5.0ps(3.8kW)/1800-2500rpm
最大トルク:19.2Nm/1800rpm
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
トランスミッション:7速DCT
WLTCモード燃費:17.4km/L
タイヤサイズ:225/40R19
車両本体価格:409万円

エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH
全長×全幅×全高:4240mm×1795mm×1590mm
ホイールベース:2640mm
車重:1420kg
サスペンション:Fストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FWD
エンジン
形式:1.6L直列4気筒DOHC
排気量:1597cc
最高出力:94ps(69kW)/5600rpm
最大トルク:205Nm/3600rpm
燃料:プレミアム
メインモーター
形式:交流同期電動機
最高出力:49ps(36kW)/1677-6000rpm
最大トルク:205Nm/200-1677rpm
サブモーター
形式:交流同期電動機
最高出力:20ps(15kW)/2865-10000rpm
最大トルク:50Nm/200-2865rpm
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
WLTCモード燃費:23.3km/L
トランスミッション:ドッグクラッチマルチモードAT
タイヤサイズ:225/40R19
車両本体価格:454万9000円
ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ E-TECH。フロント軸重840kg、リヤ軸重580kg
フロントガラスに配置されたQRコードは、事故の時などレスキュー隊に対して救助の役に立つ車両情報を提供する仕組み
QRコードを読み取ると、バッテリーや切断しにくいフレームの位置などが表示される。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…