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新型ムーヴはN-BOXの牙城を崩せるか?

2025年6月、ダイハツは11年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型「ムーヴ」を発表した。最大の特徴は、スライドドアの採用である。これまでタントやキャンバスに任せていたスーパーハイト系の領域に、満を持して新型ムーヴが参入した形だ。
一方、そのカテゴリーで長年にわたって首位を守り続けているのが、ホンダ「N-BOX」である。本稿では、新型ムーヴと現行N-BOXの装備、価格、デザイン、使い勝手などを徹底比較し、“今あえて選ぶならどちらか”を冷静に見極めていきたい。

スライドドア採用で一気にライバル関係へ

これまでムーヴは、いわゆる「トールワゴン」系として、スライドドア非搭載のパッケージを維持していた。しかし今回のフルモデルチェンジで戦略は一変。ボディ全体を新設計し、Aピラーの角度を寝かせてスタイリッシュさを強調しながらも、ムーヴ キャンバスと同じくスライドドアを採用。事実上、N-BOXやスペーシア、ルークスといった「スーパーハイト軽ワゴン」と競合するモデルへと生まれ変わった。
N-BOXは現行モデルで3代目に突入しており、2025年5月時点でも月販1万3000台超と圧倒的な販売力を誇る。もはや“軽の王者”という言葉も定着しているが、新型ムーヴの投入により、状況に変化が生まれる可能性もある。

装備差は?──新型ムーヴは“必要十分”、N-BOXは“全部入り”

まず注目すべきは装備の違いだ。新型ムーヴは最廉価グレード「L」でもLEDヘッドライトを標準装備しており、必要最低限の安全・快適装備は押さえている。中間の「X」グレードでは助手席側にパワースライドドアが標準となり、上級「RS」ではターボ+専用エアロパーツも備える。

一方のN-BOXは、全グレードに両側パワースライドドア、電動パーキングブレーキ、ブレーキホールド、マルチビューカメラなどを標準装備し、後席ベルトにもプリテンショナーを備えるなど、細部に至るまで配慮が行き届いている印象を受ける。快適・先進装備の充実度は明らかにN-BOXに軍配が上がる。

ただし、ムーヴの価格は135万8500円からと圧倒的に安く、Xグレードでも150万円前後で、LED・パワースライドドア・スマートアシストなどが揃う。N-BOXは装備が充実する分、価格も高く173万9000円から、人気グレードでは200万円を超えることも少なくないと考えると、装備の質と価格のバランスは甲乙つけがたい。
【装備・価格】
項目 | 新型ムーヴ | N-BOX |
価格(税込) | 135万8500円〜 | 173万9000円〜 |
LEDヘッドライト | 全車標準 | 全車標準 |
パワースライドドア | 片側(X以上) | 両側(全車標準) |
電動パーキング | G 以上 | 全車標準 |
マルチビューカメラ | オプション設定 | 全車標準 |
エアバッグ | 前・側・カーテン(全車) | 前・側・カーテン(全車) 後席シートベルトプリテンショナー |
室内空間は?──どちらも軽規格の上限近くまで設計

ボディサイズは両車とも軽規格の上限近くまで設計されており、室内高や足元空間にも大差はない。
新型ムーヴはリアシートのスライド幅が大きく、荷室の使い勝手が高い点は好印象。フラットな床面や低床設計による乗降性も工夫されており、実用性という観点ではN-BOXに決して劣っていない。

走行性能は?──新開発のパワートレーンを採用

新型ムーヴの注目ポイントは新開発のパワートレーンにある。NAとターボが用意されており、CVTもワイドレンジ化された新設計だ。とくに「RS」に搭載されるターボエンジンは、段付き変速感を持たせたCVTによって、スポーティな走りの味付けを演出している。
対するN-BOXは、ホンダ独自のNAエンジンによるスムーズさと静粛性の高さが武器。変速フィールや振動抑制など、日常使いにおける快適性の面では、やはり一日の長がある。

新型ムーヴは「必要十分」を“賢く選ぶ”クルマだ

N-BOXが“全部入りの安心パッケージ”であるのに対し、新型ムーヴは「価格・デザイン・実用性」の黄金比を突き詰めたモデルといえる。価格差を考慮すれば「軽を選ぶ意味」つまり、自分のライフスタイルにとって、何が必要な要素なのかを考える必要がありそうだ。
【こんな人にオススメ】
タイプ | 新型ムーヴが向く人 | N-BOXが向く人 |
主な使い方 | 通勤・買い物・子供の送迎など都市部中心 比較的、近距離移動が多い | 郊外・長距離移動が多い 高齢者乗車や安全性重視 |
価格意識 | 装備は必要十分でよい、できれば160万円以内 | 高くても安心装備を最初から全部欲しい |
デザイン志向 | シャープなプロポーションで、 街に映える軽自動車が欲しい | 正統派ボックスシルエットを好む |