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■進化したクラリティ・フューエルセルの個人向けリ-ス販売開始

2020(令和2)年6月11日、ホンダは燃料電池車「CLARITY FUEL CELL(クラリティ・フューエルセル)」の個人向けリースの販売をホンダカーズの一部店舗にて開始した。2016年に始めた自治体・企業向けのリース販売の実績を踏まえて、個人向けのリース販売を始めた。

初めてリース販売したホンダFCX

燃料電池車FCEVは、車載タンクに高圧で充填した水素と大気中の酸素を反応させて発電する燃料電池(FC:Fuel Cell)の電力をバッテリーに蓄え、モーターで走行する。排出されるのは原理的には水だけなので、究極の環境対応車と呼ばれる。さらに、EVよりも航続距離を長くできるポテンシャルを持つこともFCEVの強みである。
ホンダは、1990年代からFCEVの開発を本格的に始め、1999年には「ホンダFCX」のベースとなる「FCX-V1」と「FCX-V2」を開発し、米国と日本で公道試験を始めた。
そして、2002年にホンダFCXが初めて米国のEPA(米国環境保護庁)とCARB(カリフォルニア州大気資源局)の認定を取得。これにより、米国での販売が認許され、2002年末にFCXはカリフォルニア州のロサンゼルス市庁と日本の内閣府に納車された。
その後、日米ともリース販売先を拡大し、日本では2004年の箱根駅伝や屋久島ゼロエミッションプロジェクトに参画し、米国カリフォルニア州では2005年から個人向けリース販売も開始した。
FCEV専用モデルのFCXクラリティが日米でリース販売

FCXを進化させたFCXクラリティは、次世代自動車にふさわしいスマートな流線形のスタイリングを採用し、2008年7月から米国、11月から日本でリース販売を始めた。

新システムの特徴は、水素や空気を縦に流す小型・高効率“V Flow(バーチカルフロー) FCスタック”で、モーターの最高出力を78kWから100kWに向上させ、パワープラント全体の重量出力密度2倍、容積出力密度2.2倍によって、大幅な軽量コンパクト化と高出力化を達成した。さらに当時課題であった低温始動性についても、マイナス30度まで問題なく始動できるようになった。

これらの改良と優れた空力性能によって燃費は20%向上。また、高圧水素タンク(圧力35MPa)容量は、156.6Lから171Lに増大させ、効率向上と相まって航続距離620km(10・15モード)が達成された。
FCXクラリティの日本でのリース販売は、官公庁および一部の限定された企業に限られた。ちなみにリース料は、米国は600ドル(約6.4万円)/月、日本は80万円/月と、日米で大きな差があった。この差は、日本ではFCEVは特別なクルマという認識があるが、米国では例え最先端のFCEVであってもリース料が一般的なリース料金のレベルを超えると市場で許容されないという、日米の認識の違いに起因している。
FCXクラリティは、クラリティ・フューエルセルへ進化

2016年には、FCXクラリティをさらに進化させた「クラリティ・フューエルセル」が、官公庁や一部企業へのリース販売を始めた。

クラリティ・フューエルセルは、FCXクラリティの流麗なフォルムからスポーティなイメージに変貌。さらにパワーユニットの省スペース化による優れたパッケージングを特長としており、4人乗りだったFCXクラリティに対して、セダンタイプのFCEVとして初の5人乗りを実現。“ゼロエミッションビークルで世界トップクラス”とうたわれる一充填走行可能距離や約3分という水素充填時間の短縮によって、ガソリン車と変わらない使い勝手の良さをアピールした。

さらに高圧水素タンク圧力を70MPa(←35MPa)に上げ、パワートレインの高効率化や走行エネルギーの低減により、一充填走行距離を従来比で約30%延ばして750km(JC08モード)を達成した。

リース販売だが、車両価格は当初は766万円、その後改良されて2020年6月のこの日にリース販売が始まった時点は783.64万円に設定。取り扱いは、水素ステーションのある都道府県の一部店舗で、同日時点で35法人が対象だった。



ただし、クラリティ・フューエルセルは、2021年8月に生産を終了してリース販売も中止した。
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FCEVの生産を中断していたホンダだったが、2024年7月に新型FCEV「CR-V e:FCEV」のリース販売を始めた。車両価格は809.49万円だが、補助金があるので実質500万円台で購入できる。外部充電機能を持ったユニークなFCEVだが、水素インフラが進まない現在、まだまだ一般ユーザーが入手するには敷居が高そうだ。
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