日産が誇る高級車「セドリック」、バブル崩壊の逆風下でも安全性能を高め9代目(Y33型)登場!【今日は何の日?6月12日】

日産「セドリック」
日産「セドリック」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日6月12日は、かつてトヨタ「クラウン」と高級車市場を2分する人気を誇った「セドリック」の9代目が誕生した日だ。バブル崩壊や日産の経営悪化など厳しい状況下で登場した9代目だったが、新型エンジンの搭載や安全性能の強化などで商品力アップを図った。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日産 新型セドリック/グロリアのすべて、80年代日産車のすべて

■安全性能を強化した9代目セドリック

日産「セドリック」
1995年にデビューした9代目(Y33型)「セドリック」

1995(平成7)年6月12日、日産自動車の高級車「セドリック」の9代目(Y33型)がデビュー。同時に兄弟車「グロリア」も10代目に移行した。先代同様4ドアハードトップのみだったが、SRSデュアルエアバッグやABSが標準装備され、グランドツーリスモには電動スーパーハイキャス(4WS)が装備されるなど安全性能が強化された。

10代目(Y33型)「グロリア・グランツーリスモ」
1995年にデビューした10代目(Y33型)「グロリア・グランツーリスモ」

トヨタの高級車クラウンに対抗して誕生したセドリック

トヨペットクラウン
1955年にデビューした初代クラウン「トヨペットクラウン」

初代セドリック(30型)は、1955年に誕生した日本初の純国産高級車のトヨタ「トヨペットクラウン」に対抗して、1960年にデビューした。日産が初めて独自開発した6人乗りの高級セダンで、縦目4灯のフロントマスクとAピラーを前傾させたパノラミックウインドウなどアメ車風のスタイリングが特徴だった。

1961年デビューした初代(30型)「セドリック」
1961年デビューした初代(30型)「セドリック」

モノコックボディによって車重を1195kgに抑えながら剛性を高め、さらに足回りはフロントがダブルウイッシュボーン/コイル、リアは3枚リーフ/リジッドサスペンションを装備して、高級車らしい乗り心地を実現。パワートレインは、最高出力71psを発揮する1.5L直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせ。

1965年登場の2代目セドリック
1965年登場の2代目セドリック

車両価格は、クラウンと同額の101.5万円に設定され、日産のフラッグシップセダンとしてスタート。その後、セドリックはモデルチェンジしながら、日本を代表する高級車としてクラウンと人気を2分する人気を獲得したが、6代目(Y30型)以降は販売面ではクラウンの後塵を拝した。

国産車初のターボ、電子制御噴射、V型エンジンを採用した歴代セドリック

5代目(430型)セドリック
1979年にデビューした国産車初のターボエンジン搭載「セドリックターボ」。5代目(430型)セドリック

5代目(430型)「セドリック」は、1979年10月の国内乗用車としては初のターボチャージャー搭載エンジン、さらに同じく国産車初の電子制御燃料噴射(日産の呼称EGI)エンジンを搭載した。1970年代は、オイルショックや排ガス規制が強化されて環境性能が重視された時代。そのためセドリックターボは出力向上のためでなく、中低速トルクを増大して低燃費と性能のバランスを取ったターボを謳った。

430、Y30、Y31型セドリック/グロリア
430、Y30、Y31型セドリック/グロリア

6代目(Y30型)「セドリック」は、1983年6月に国産車初のV型6気筒エンジン(VG型)を採用。直6よりもV6の方がより高級で高性能なエンジンであることをアピールする戦略をとり、”V6エンジンは高級車の証し“というキャッチフレーズでアピールした。V6にすることでエンジン長が短くなり、パッケージングが容易となる、また衝突安全性に有利であることが実質的なメリットである。

ちなみに、国産車初のV6ターボは、V6誕生の3ヶ月後1983年9月に登場した「フェアレディZ(Z31型)」に搭載された。

Z31型フェアレディZに日本で初めて搭載されたV6ターボエンジンのVG30ET
Z31型フェアレディZに日本で初めて搭載されたV6ターボエンジンのVG30ET

バブル崩壊と経営悪化の逆風の中で登場した9代目セドリック

1990年代、日産は1991年のバブル崩壊による不況とセダン人気の低迷、販売不振によって経営状況は大きく悪化した。そのような中で、1995年6月のこの日にY33型の9代目セドリック/10代目グロリアがデビューした。

日産「セドリック」
1995年にデビューした9代目(Y33型)「セドリック」
1995年にデビューした10代目(Y33型)「グロリア・グランツーリスモ」

9代目セドリックは、先代(Y32型)同様4ドアハードトップのみで、標準グレードの「ブロアム」シリーズと丸目4灯が特徴のスポーツグレードの「グランツーリスモ」シリーズが設定された。

3.0L V6 DOHCインタークーラーターボのVG30DETエンジン
3.0L V6 DOHCインタークーラーターボのVG30DETエンジン
3.0L V6 DOHC(NA)のVG30DEエンジン
3.0L V6 DOHC(NA)のVG30DEエンジン
3.0L SOHC(NA)のVG30Eエンジン
3.0L SOHC(NA)のVG30Eエンジン
2.8L直6 SOHCディーゼルのRD28エンジン
2.8L直6 SOHCディーゼルのRD28エンジン

パワートレインは、最高出力270ps/最大トルク37.5kgmを発揮する新型3.0L V6 DOHCインタークーラーターボ、220ps/28.5kgmの同NA、160ps/25.3kgmの同SOHC NA、100ps/18.2kgmの2.8L直6 SOHCディーゼルの4種エンジンと4速AT(E-AT)の組み合わせ。駆動方式はFRである。

グロリア・グランツーリスモ・アルティマ(左)とセドリック・プロアムVIP
グロリア・グランツーリスモ・アルティマ(左)とセドリック・プロアムVIP

9代目の特徴は、全車にSRSデュアルエアバッグシステムが搭載され、1996年には全車にABSが標準装備されるなど、安全性能が強化されたこと。その他にも、グランツーリスモのトップグレードには、電動スーパーハイキャス(4WS)が採用され、1997年には4WDのアテーサE-TSも追加設定された。

9代目(Y33型)「セドリック・グランツーリスモ アルティマ」のコクピット
1995年にデビューした9代目(Y33型)「セドリック・グランツーリスモ アルティマ」のコクピット

車両価格は、トップグレードのターボモデルが489万円(ブロアム)/404万円(グレンツーリスモ)に設定。当時の大卒初任給は19.4万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約580万円/479万円に相当する。

Y32型セドリック/グロリア
Y32型セドリック/グロリア

先々代(Y31型)、先代(Y32型)は、バブルの勢いもあり、比較的に好調な販売を続けたが、9代目セドリックは厳しい販売を強いられた。

1999年にデビューした10代目(Y34型)「セドリック。最後のセドリック」となった
1999年にデビューした10代目(Y34型)「セドリック。最後のセドリック」となった

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9代目に続いて1999年には、最後のセドリック/グロリアとなった10代目(Y34型)が送り出されたが、結局2004年に「フーガ」に統合されて、44年以上も長きに渡って日産を代表した高級車セドリック/グロリアは幕を下ろした。比較的に人気があったY31型やY32型とラストモデルY34型の狭間で、話題性が少なく存在感が薄かったのが9代目だった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

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竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…