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■ハイブリッド初のAT-PZEV認定を取得したシビックHEV
2003(平成15)年6月13日、シビックHEVが米国CARBより、AT-PZEVとしてハイブリッド車初の認定を取得したことが発表された。AT-PZEVとは、カリフォルニア州が進めているZEV(ゼロ排ガス車)規制の対象となる部分換算される先進技術搭載車であり、厳密にはHEVはゼロ排ガス車ではないが、特に排ガスが低いHEVに認められている特例的な認定車である。

AT-PZEV認定車は、初代シビックHEV
今回認定を受けた初代シビックHEVは、2000年のモデルチェンジで登場した7代目シビックの翌2001年にデビューした。

シビック初のハイブリッド車システムは、「インサイト」で採用されたマイルドハイブリッドIMAの進化型である。ハイブリッドに組み合わせたエンジンは、1.3L直3 i-DSIエンジンで、1気筒に2本の点火プラグを装着したリーンバーン仕様である。さらに、VTECに気筒休止機構を適用し、減速時に4気筒のうち3気筒を休止させてポンピングロスを減らすとともに、減速回生を増やすことによって燃費改善を図ったのが特徴だ。

IMAと低燃費エンジンの組み合わせで、10-15モード燃費は29.5km/Lを達成。発売当時は、プリウスを上回る燃費で注目されたが、2013年に登場した2代目プリウスが35.5km/Lの燃費を記録して、燃費値では大きく引き離された。
なお米国向けのシビックHEVの詳細については不明だが、米国向けに専用のチューニングが施されていたと予想される。
世界に先駆けてカリフォルニア州が進めたZEV規制
ZEV(ゼロ排ガス車)とは、走行時にCO₂などの排出ガスを出さない車両であり、EV(電気自動車)やFCEV(燃料電池車)が相当する。
ZEVという呼び名が広く広まったのは、1990年代初頭に米国カリフォルニア州のCARBが、新車販売台数のうち一定の割合をZEVにすることを義務付けるZEV規制を導入したのが始まりだ。

この規制の特徴は、ZEVの販売台数が目標比率を上回った場合には、「クレジット(CO₂削減量/実績係数)」が得られるという制度があること。反対に、下回った場合はCARBに罰金を支払うか、クレジットを多く保有する他メーカーからクレジットを購入しなければならない。
HEVやPHEVは内燃機関を搭載しているため、厳密にはZEVではない。しかし、米国のZEV規制が始まった当初は、排ガスレベルの低いHEVやPHEVについても販売台数のカウントを低くして、ZEV規制で義務付けられた台数に含めることができた。
HEVやPHEVなど特例でZEVとしてカウントできる排ガスの低いクルマを、先進技術を採用した部分的なZEVという意味のAdvanced Technology PZEV(パーシャルZEV)と呼んだ。このAT-PZEVには、天然ガス車や超低排出ガス車なども含まれる。
ホンダのシビックHEVがAT-PZEVの認定を取得することは、米国市場で販売するホンダにとっては大きな意味があったのだ。
最近のZEVの取り組み
カリフォルニア州がZEV規制を導入して以降、販売比率目標は変更を繰り返しながら、2008年には10%程度まで引き上げられた。またカリフォルニア州だけでなく、ニューヨーク州など他の州でも導入が始まった。さらに中国も同様の「NEV(新エネルギー規制)」が始まり、EUでも2036年にすべてZEVとする法案が提出された。

2018年にカリフォルニア州のZEV規制は大きく強化された。従来の大規模メーカー(トヨタ、日産、ホンダ他)だけでなく、中規模メーカー(マツダ、スバル他)も規制対象となった。最大の変更点は、従来まで含まれていたHEVや低排ガスエンジン車が対象から除外されたこと。これによって、対象車はEVとFCEV、PHEVに絞られるが、これらの車両はEV走行が約80km以上必要で、EV走行距離に応じてクレジットが策定されることになった。
また2022年には、2026年の販売比率を35%に上げて、2035年には同州で販売する乗用車およびライトトラックはすべてZEVにするという新たな計画が承認された。
一方日本では、ZEV規制は導入されていないが、2021年当時の菅首相の施政方針演説で、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」ことを宣言した。 ただし、日本の目標はZEVやBEVではなく、電動車と表現しており、HEVを含めている。

またEUも2035年までに新車すべてをZEVにするという方針を表明した。しかし、実際にはEV化が進んでいないことなどから一部メーカーがZEV達成時期を後退させたり、法案の見直しを求める意見が出始めており、計画通り進むかが不透明になっている。
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現時点は、計画された米国ZEV規制も計画通り進むかどうか不透明だ。経済優先の政策を進めることが予想されるトランプ大統領が再選されたことで、CO₂規制やZEV規制を緩和したり、後ろ倒ししたりする可能性があるからだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。