燃費は23.2km/L! フィアット600ハイブリッドに乗ってみた! 優れた燃費に加え機敏な走りに思わず脱帽!!

電気自動車のみを展開していたフィアット「600」シリーズに、新たにマイルドハイブリッド版「600ハイブリッド」が追加された。フィアット初の新パワートレインの実力を早速試してきた。

待望のハイブリッドモデルが登場

大学デビューを目前に控えていた私は大きな壁にぶち当たっていた。

通学に際して必要な私服がまったくなかったのだ。とりあえず大学生向けのファッション誌を参考に、量産型男子大学生装備一式を用意することとなったのだが、その道中で財布がイマイチなことに気づいた。ビニールっぽいテカテカな素材で、紛失防止用のチェーンまで付いており、中学受験を控えた塾帰りの子供が持っているようなものだった。

早急な飛躍が必要だった。そこで真っ先に候補に挙がったのが、みんな持ってるLOUIS VUITTONだ。耐久性に定評があることは二の次だった。重要なのは見た目のインパクトで、ひと目でわかるモノグラム・キャンバスはその点で完璧だった。

フィアットを選びたくなる理由にも同じものがあると思っている。軽自動車をはじめとした小さなクルマが数多く販売されている日本市場でもフィアットを代表する「500(チンクエチェント)」が欲しくなるのは、1957年に登場したヌオーヴァ500から変わらないフォルムをはじめ、素材や造形、色使いに至るまで感性で仕立てられたような雰囲気に満ちたインテリアなど、ひと目見れば「500」とわかるからだ。

フィアット500(ヌオーヴァ500)
2024年5月に販売終了となったフィアット500。

何に乗っているかを聞かれた時に「フィアット」と答える瞬間や、駐車場で愛車のフィアットに乗り込む瞬間、綺麗な景色とフィアットが並んだ写真をインスタグラムに投稿する瞬間を想像してほしい。平静を装っていながらも、内心ではこう思っているはずだ……「勝った!」と。これこそがブランド品を買う最大の喜びだ。

フィアット600ハイブリッド

ところが、そんな「500」は2024年5月に国内販売を終えてしまった。現在は「500e」という電気自動車(EV)のみが販売されている。また、同年9月にはコンパクトSUVの「600e」が発売されたが、こちらもEVだった。日常生活ならEVでも困らないが、遠出するときなどは手軽に給油できるガソリン車の方が安心だ。そのため、「600」に新たにマイルドハイブリッド版「600ハイブリッド」が追加されたのは「待ってました!!」という感じで素直にうれしい。

試乗車は上級グレードの「600 Hybrid La Prima」で、ボディカラーはイタリアの夕日をモチーフにしたというサンセットオレンジ。クローム仕上げサイドウインドウモールディングやグロスブラック仕上げミラーキャップなど細部の加飾が特徴。

フィアット500eに詳細はこちら。

フィアット600eについてはこちらもご覧ください。

ステランティスグループ共用ユニットをフィアットらしくセッティング

そんな「600ハイブリッド」に搭載される1.2L直3ターボ+モーターは、シトロエンやプジョー、アルファロメオなどステランティスグループの様々なモデルに搭載される肝入りのユニットだという。早速走り出してみると、すべての動きがスムーズで驚いた。

1199ccの直列3気筒ターボ(136ps/230Nm)にフロントモーター(16kw/51Nm)を組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを搭載。30km/h以下ならモーターのみで走行ができ、WLTCモードでの燃費は最良値で23.2km/Lを達成するという。

と言うのも、「500」が搭載していた1.2L直4+5速RMTの走りは、可愛い見た目だからこそ我慢できるレベルで、交差点の前で減速して右/左折からの再加速にはもたつきがあった。街中をスムーズに走らせるためにはズッキーニのようなシフトノブを使ってMT車のように変速を行なう必要があったのだ。

「600ハイブリッド」にはリヤゲート右下端に「HYBRID」のエンブレムが備わる。

そんな経験を思い出しつつ「600ハイブリッド」に乗っていると、かつてのクセのようなものは全くない。発進から力強く、アクセルを踏み込んでいくと6速DCTを介して駆動力が途切れることなくタイヤへ伝わっていく。逆にアクセルを緩めるとしっかりと回生ブレーキが働き、速度は緩やかに落ちていく。アクセルの調整だけで速度を細かく調整でき、減速からの再加速もスムーズで一切のもたつきもなく、交差点での一連の動きやアップダウンが連続するような山道もストレスなく走れる。

その一方で、ちょっと太めのグリップのステアリングや、スルスルと軽い力で回せるハンドルの軽やかな操作感、にもかかわらず体幹を感じる走りなど、フィアットらしい走り味もしっかりある。

全長4200mm×全幅1780mm×全高1595mmというボディサイズは街中はもちろん、道幅の狭い山道も機敏に駆け抜けていける。「600 Hybrid La Prima」はピクセルパターンが目を惹く18インチのダイヤモンドカットアルミホイールを標準装備。

お洒落で楽しげな雰囲気を演出する巧みなデザイン

BIG SMILEがコンセプトのフロントマスクは、フィアットを代表するモデルの「500」と共通で、ひと目でフィアットとわかる。中央の数字は「600」となる。

もちろん、走り以上に見た目はフィアットらしい。1955年にデビューした初代「600」を彷彿とさせるプロポーションや、「500e」と共通のBIG SMILEをコンセプトとしたフロントマスク、テールライトやホイールのピクセルパターン、イタリアの夕日や海をモチーフにしたボディカラー、ブルーの刺繍で「FIAT」とあしらったシートなど理屈で説明することもできるが、見た瞬間に「お洒落で楽しげなクルマ」と気持ちを動かされてしまうあたりはやっぱりフィアットだ。

フィアット600(1955年)
電気自動車の「600e」とレイアウトは変わらない。エアコンやギヤセレクターはボタン式で中央に集約されており、スッキリとしている。「600 Hybrid La Prima」はインテリアカラーがアイボリーとなる。
「600 Hybrid La Prima」はブルーの刺繍でFIATのロゴが並んでいるFIATモノグラムエコレザーシート(アイボリー)を標準装備。受注生産の「600 Hybrid」はシート表皮がファブリック(ブラック)となる。
「600 Hybrid La Prima」には、運転中の疲労を軽減するアクティブランバーサポート機能が備わる。

クルマを購入するとき、機能性と見た目のどちらを重視するかと言われたら、迷わず見た目で選ぶ。というのも、室内の広さや燃費の良さなどは、1年も経たずに追い抜かれる。けれども見た目だけは他では真似できないからだ。

最新装備と必要十分なユーティリティ

とはいえ、「600ハイブリッド」は実用性も抜かりない。なんといっても「500」に+100だ。Apple CarPlayも使えるし、安全装備も充実している。ボディサイズは「500」よりも大きいため、荷室は5人乗車時で385Lも確保されているし、ドアの数も2枚多い。

アダプティブクルーズコントロールをはじめとした安全装備が充実。そのほか、緊急時にオペレーターへ連絡できるFIAT Connectサービスも利用可能。前席頭上にスイッチがある。
センターコンソールには大きめの収納スペースを2箇所用意。前側にはUSBポートに加えて、ワイヤレスチャージングパッドが備わる。
センターコンソール後部の収納スペース。2本分のドリンクが収まるほか、小さな手提げカバンなどを置くのにも便利な大開口が特徴。
5人乗車時でも385Lの荷室を確保。開口部との段差もなく大きな荷物の積み下ろしも楽にこなせる。
後席は6対4の分割可倒機構を採用。乗車人数や荷物に合わせてアレンジできる。
「600 Hybrid La Prima」はリヤバンパー下につま先をかざすだけでテールゲートを開けられるハンズフリーパワーリフトゲートを標準装備。

後席だって……前席のシートバックを若干抉って膝がぶつからないように工夫されている……のだが、ビジネスホテルのトイレと同等の広さしかない!?
まぁ、これもフィアットらしいか。

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著者プロフィール

今 総一郎 近影

今 総一郎

「クルマなんかなんでもいいじゃん」
そんな風に考えながら通っていた自動車教習所で、クルマを運転する…