スズキ・ジムニー ノマドのカスタム、そのトレンドを探る。ガッツリいじる派と派手にはいじらない派に二極化か!?

7月から月間3300台の増産が決まり、受注再開も待ち遠しいスズキ・ジムニー ノマド。徐々にカスタムも盛り上がりを見せつつあるが、ユーザーは「ガッツリいじる層」と「派手にはイジらない層」に二極化する傾向にあるようだ。「マスターピース」と「アピオ」、ふたつのジムニー専門店に詳しく話を聞いてみた。

TEXT:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) 写真協力:マスターピース/アピオ

マスターピースは2.5インチアップのサスキットをリリース

国内デビュー発表後わずか4日後に受注停止となり、国産自動車史の中でも希有な記録を残したスズキ「ジムニーノマド」。

日本の道路にマッチしたサイズと、シリーズ中もっとも実用的なスペースユーティリティの両方を備えた本格クロカン4WDは、多くのユーザーに賞賛をもって迎えられた。2025年5月30日には、当初の月産1200台から3300台へと増産されるなど、何かと話題が絶えない。

スズキ・ジムニー ノマド(ノーマル)

ジムニー ノマドは4月上旬からユーザーへのデリバリーが開始され、ボチボチと道で見かけるようになった。取材したスズキ系アリーナ店によれば、約1年先には現在の受注のすべての納車を完了する予定だという。今回の増産により一刻も早い受注再開を期待したいが、同時に活況を呈しそうなのがアフターパーツマーケットだ。

ジムニー ノマド用カスタパーツは、サスペンションやボディサイドに付けるものを除いては、ほぼ「ジムニー シエラ」や「ジムニー」用のものが流用できる。サスペンションについては各社が開発中であり、まだリリースしているメーカーは少ない。しかし、夏のボーナス商戦辺りから市場に出てきそうだ。

ところで、ジムニー はどんなカスタムの方向性になりそうだろうか。そのトレンド予想を、いくつかのジムニー専門店に聞いてみた。カスタムのメニューは、ユーザー層に大きく影響する。特にジムニー ノマドはファミリー層の需要が多いと予想されているのだが、各ショップによれば実は買っているユーザーは二極化しているのでは…という。

兵庫県にあるジムニー専門店「マスターピース」の奥原正之店長は、こんな話をしてくれた。「ノマドだからファミリー層が多いんじゃないかと思ってたんですが、ウチのジムニー ノマドを見に来てくれるお客さんの半分はスポーツカーなどに乗っている。“クルマ来たらコンプリ状態にしたい”なんておっしゃっているので、割と余裕のある方が多いんじゃないでしょうかね。ジムニー ノマドというクルマの客層は、こういった方たちとファミリー層と二極化していくのではないかな」

マスターピースのジムニー ノマド
マスターピースのジムニー ノマドとジムニー シエラ

ちなみにマスターピースは、2025年のオートサロンにおいて、いち早く5インチアップというオフロード仕様のカスタムモデルを展示し、大きな話題を呼んだ。同社ではすでに2.5インチアップのサスキットもリリースしており、そこまで上げたくない派にもアピールしている。

アピオはゼロリフトアップサスペンションも鋭意開発中

さて、ジムニーに限らずカスタムの世界では関西と関東は“味付け”が異なる。やはりダイナミックな関西カスタムに比べて、関東カスタムはパーツの親和性を重視することが多い。言って見れば、関西は派手、関東はおとなしめ、だ。

神奈川県にあるジムニー専門店「アピオ」の河野仁社長は、ジムニー ノマドのユーザーで大勢を占めるであろうファミリー層にターゲットを当てている。とは言え、これまでのジムニーユーザーの実像を考えると、そこだけにスポットライトを当てるわけにはいかないという。

「ジムニー ノマドはたしかにファミリー層が待っていたカタチなので、爆発的ヒットを支えているのは間違いないのでしょう。しかし、ジムニーはそもそもクルマ好きが注目してきたクルマ。ウチのお客様の多くは、ロードスターなどのスポーツカーに乗っており、そもそもクルマをイジるのが好き方が多いんです」と語る。

となると、やはり2インチ以上上げて、前後にショートバンパーを付けるといった従来どおりのオフロードテイストカスタムが主流になるのだろうか。同店でデモカー製作を担当する井上健さんは、こんな展望を語った。

「ウチでも16インチタイヤを履かせて、前にガード付きバンパー、後ろにショートバンパーを装着させたデモカーをつくりました。しかし、これはあくまでイベント用に急遽製作したものです。たしかにイベントでの注目度は高かったですが、これはクルマ好きのお客様にウケている感じだと思います。やはりジムニー ノマドのメインは派手にはイジらない層。ファミリー層はリフトアップするとディーラーに整備で入庫できなくなるし、そこまでカスタムにお金をかけないのではないでしょうか」

アピオのジムニー ノマド

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以前、当サイトでも紹介したが、アピオはジムニー ノマド用のゼロリフトアップサスペンションを鋭意開発中で、これは乗降性を気にするファミリー層には間違いなくウケそうだ。井上さんによれば、タイヤもノーマルサイズ、もしく215/75R15までで替える人が多くなりそうということだ。その理由としては、外径をあまり大きくし過ぎるとバンパーのショート化が必要になるためだという。

「エクステリアは、少しラギッドなデザインのタイヤとグリルを交換するだけ。あとはキャンプ用のラックを付けたり、インテリアに機能パーツを付けるというのがノマドカスタムの主流になるんじゃないでしょうか」

筆者も同意見だが、一方でジムニー ノマドが持つオフロードでの潜在性能も捨てがたい。ホイールベースが伸びたことで、凹凸の激しい地形対応力が高くなっているからだ。ジムニー シエラやジムニーが横転や転倒をしていたシチュエーションでも、ジムニー ノマドはクリアしそうだ。

重量が増えていると言っても100kg。ランドクルーザーに比べたら、軽量さのアドバンテージは言われるほど失われていないはず。であれば、2インチほどアップしてクロスカントリーをするのにむしろいいかもしれない。もちろん、動力性能をフォローするチューニングは必要になりそうだが。

筆者がひとつ気になるのは、ジムニー ノマドのステアリングの重さ。シエラに比べるとかなり操作が重く感じる。これで大きなタイヤを履かせたら、車庫入れなどで大変なのでは…と思ってしまう。マスターピースの奥原店長に聞いてみた。

「僕はむしろ、直進安定性が高くていいなと思います。あの重さであれば、リフトアップしても高速の操縦安定性がそれほど気にならないですから」とポジティブ。なるほど、それも一理ある。

いずれにせよ、自分だけの愛車という人は別だが、ファミリーで乗るという人は、奥様はじめとする同乗者の意見をよく聞いてからカスタムメニューを決めた方が良さそうだ。例えばだが、タイヤの大径化やリフトアップで最低地上高が高くなってしまうと、後席の乗り降りが大変になる。これは意外と同乗者のストレスになる。また、タイヤのトレッドパターンが変わることで、車内騒音も発生することがある。

ジムニー ノマドはノーマルでもよくデキのクルマなので、まずはどうしても気に入らないところだけを変えていくというのが、カスタムとしては無難かもしれない。

マスターピース http://www.4×4.co.jp/
アピオ https://www.apio.jp/

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…