スバル「エクシーガ」はステーションワゴンみたいなミニバン、AWDターボ仕様は278.25万円で08年に登場【今日は何の日?6月17日】

スバル「エクシーガ」
スバル「エクシーガ」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日6月17日は、スバル初の独自開発した7シーターミニバン「エクシーガ」が誕生した日だ。ステーションワゴン風のスポーティなミニバンだが、“7シーター・パノラマツーリング”をコンセプトに開発された多人数乗り車と謳っており、ミニバンという表現は使わなかった。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・スバル エクシーガのすべて、CROSSOVER 7のすべて、歴代SUBARUのすべて、2005年最新ミニバンのすべて

■スバルらしいスポーティな7シーターミニバンのエクシーガ

2008(平成20)年6月17日、スバルは初のオリジナルミニバン「エクシーガ」を発売した。スバルらしく、ミニバンにもステーションワゴンのようなイメージを求めるスバルファンの声に応え、あえて乗用車的なデザインを採り入れたのが特徴である。

スバル「エクシーガ」
2008年6月にデビューしたスバル「エクシーガ」
スバル「エクシーガ」のリアビュー
スバル「エクシーガ」のリアビュー

スバル初のミニバンは、OEM車のトラヴィック

エクシーガは、スバルが初めて独自開発したミニバンだが、スバルにはそれ以前にOEM車のミニバン「トラヴィック」があった。

スバル「トラヴィック」
2001年8月にデビューしたスバル「トラヴィック」。オペルのOEM車

スバルは、1999年にGMと戦略提携を結び、トラヴィックは当時の欧州におけるGMの子会社であったドイツのオペルが開発したミニバン「ザフィーラ」のOEM供給車である。GMのタイ工場で生産され、GMジャパンを通じて輸入され、スバルブランド車として2001年8月に発売された。

スバル「トラヴィック」
2001年8月にデビューしたスバル「トラヴィック」。オペルのOEM車

欧州車らしく、取り回しの良いコンパクトなボディと合理的なパッケージングによって、7人乗りの快適な居住空間と多彩なシートアレンジを実現し、機能性と使い勝手の良さがアピールポイントだ。

パワートレインは、最高出力147ps/最大トルク20.7kgmを発揮する2.2L直4 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFのみ。また高い剛性ボディとチューニングされた足回りによって、優れた乗り心地と高い操縦安定性が実現されていた。

2004年12月、GMタイ工場でのザフィーラ生産中止に伴い、日本でもトラヴィックの生産は終了した。OEM車ということもあり、累計販売台数は約1.2万台と振るわなかった。

ステーションワゴン風の個性的なミニバンのエクシーガ

スバル「エクシーガ」
2008年6月にデビューしたスバル「エクシーガ」

2008年6月のこの日、スバルが初めて独自開発したオリジナルミニバン「エクシーガ」がデビューした。各メーカーからミニバンが発売される中、スバルが満を持して送り出したミニバンだが、スバルは“多人数乗用車”と表記していた。

スバル「エクシーガ」
2008年6月にデビューしたスバル「エクシーガ」のリヤビュー

“7シーター・パノラマツーリング”をコンセプトとし、「レガシィツーリングワゴン」よりひと回り大きいボディに、7人(2+3+2)乗りの3列シートを配備した広い室内空間が特徴である。パワートレインは、最高出力225ps/最大トルク33.2kgmを発揮する2.0L水平対向DOHCターボエンジン、148psのNAエンジンの2種と4速ATおよび5速AT(ターボ仕様のみ)の組み合わせ。駆動方式は4WDだが、NA仕様にはFFも用意された。

スバル「エクシーガ」のシートアレンジ
スバル「エクシーガ」のシートアレンジ
スバル「エクシーガ」のシートアレンジ
スバル「エクシーガ」のシートアレンジ
スバル「エクシーガ」のシートアレンジ
スバル「エクシーガ」のシートアレンジ
スバル「エクシーガ」のシートアレンジ
スバル「エクシーガ」のシートアレンジ

車両価格は、4WDの標準グレードが236.25万円(NA)/278.25万円(ターボ)に設定。ミニバンでありながら、スバルらしいスポーティさをアピールしたエクシーガだったが、激戦のミニバン市場で存在感を発揮することはできなかった。

スバル「エクシーガ」のコクピット
スバル「エクシーガ」のコクピット

当時は、ホンダ「オデッセイ」に代表される背の低い乗用車感覚のミニバン人気に陰りが見え始め、ボクシーなミニバンが人気となっていたこともあり、エクシーガのコンセプトもやや時代遅れと受け止められたのかもしれない。

スバル「エクシーガ」
スバル「エクシーガ」に搭載された2種エンジン

クロスオーバーSUVへ方向転換したクロスオーバー7

エクシーガ人気が今ひとつ盛り上がりに欠けた中で、2015年にエクシーガの後継モデルとして、2015年4月に「エクシーガ・クロスオーバー7」が登場した。

スバル「エクシーガ・クロスオーバー7」
2015年にデビューした3列7人乗りSUV、スバル「エクシーガ・クロスオーバー7」
スバル「エクシーガ・クロスオーバー7」
2015年にデビューした3列7人乗りSUV、スバル「エクシーガ・クロスオーバー7」

クロスオーバー7の基本コンセプトは、多様なライフスタイルを意識した“都市型SUV+多人数車“、クロスオーバーをベースにファッション性やSUVの要素を取り入れた新たな7シーターの多人数車である。そのため、専用サスペンションの採用によって最低地上高は170mmを確保、全長を10mm延ばし全幅は25mm拡大するなどしてSUVらしさが演出された。

スバル「エクシーガ・クロスオーバー7」のシートアレンジ
スバル「エクシーガ・クロスオーバー7」のシートアレンジ

3列シートは、フロントからリアに向かって座席が高くなるシアターシートスタイルを採用して快適性を向上。パワートレインは、最高出力173ps/最大トルク24.0kgmを発揮する2.5L水平対向4気筒DOHCエンジンとCVTの組み合わせ、駆動方式はもちろんスバルが誇るAWDが採用された。

クロスオーバー7は、当初こそSUVブームの後押しもあって先代エクシーガの販売不振を一時的に回復することはできたが、その後は人気のSUVの仲間入りはできず、2017年に生産を終えた。

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エクシーガ・クロスオーバー7が生産を終了して、2018年にスバルはミニバンから完全撤退することになった。もともとスバルの中核技術であるシンメトリカルAWDを生かすためには、ミニバンではなくSUVの方が適している。また莫大な開発リソースが必要とされる今後の開発を考えると、日本市場で人気のミニバンでなく、グローバルに人気のSUVを選択するのは必然であろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…