スバル新型「フォレスター」、選ぶべきは話題のストロングハイブリッドか? それとも爽快な1.8Lターボか?

新型フォレスター「Premium EX」
初月受注台数は歴代フォレスターで最多を記録するなど、発表以来注目度バツグンのスバル新型「フォレスター」。大きな話題はストロングハイブリッド「S:HEV」の搭載だ。受注の8割を占めるというが、試乗してみればその人気も納得の完成度。一方の1.8Lターボもその力強くて爽快な走りは「気持ち良い」のひと言で、それぞれに独自の魅力が宿っていることが実感できたのである。

TEXT & PHOTO:世良耕太 PHOTO:山上博也/世良耕太/SUBARU

販売は絶好調! 目標2400台/月に対して1万5000台以上を受注済み

新型スバル・フォレスターの受注台数は、先行予約を開始した4月3日から30日までの間に1万1466台に達した。初月受注台数としては歴代フォレスター過去最多で、レガシィの2代目(1993年)、3代目(1998年)に次ぐ実績だという。ちなみに、スバル登録者における単月最多台数は1997年3月に2代目レガシィが記録した1万4509台だ。

景気のいい話を続けると、5月31日までの新型フォレスターの累計受注台数は約1万5000台である。販売計画は2400台/月だから、計画の3倍以上で推移していることになる。

X-BREAK EX

新型フォレスターのグレードは3種類。また、各グレードにはアイサイトXや電動調整シート、キックセンサー式ハンズフリーパワーリヤゲートなどが標準装備の「EX」も用意される。写真はオフロードっぽいイメージが強い「X-BREAK EX」で、パワートレインはS:HEVを積む。

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「X-BREAK」はラダータイプのルーフレールを標準装備。

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無塗装のグリルにエナジーグリーンのアクセントがあしらわれる。

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「X-BREAK」のグリルのアップ。

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新型フォレスター「X-BREAK EX」

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アルミホイールはダークメタリック塗装の18インチ。タイヤサイズは225/55R18。

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「X-BREAK」は12.3インチのフル液晶メーターが標準装備。本革巻きステアリングはグリーンステッチ入り。

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シート表皮は撥水性ポリウレタンと合成皮革のコンビ。

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シートにもグリーンステッチが取り入れられている。

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荷室のフロアボードも撥水タイプ。縦に入ったラインは、荷物の出し入れをスムーズにするスムーザー。

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背もたれを倒すと、荷室をフラットに拡大できる。

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身長184cmの世良耕太さんの運転姿勢。

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身長184cmでも後席の膝回りには余裕があるのがうれしい。

Premium EX

本革シートがオプションで設定されるなど、上級仕様の「Premium EX」。こちらもパワートレインはS:HEV。

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価格的には、新型フォレスターの最上級に位置する「Premium」。フロントバンパー下部やサイドクラッディングの加飾はダークグレーを採用。

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フロントグリルもブラック塗装+ダークグレー塗装にシルバーを組み合わせて上質な雰囲気に。

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アルミホイールは19インチサイズで、表面が切削光輝タイプとなっている。タイヤサイズは35/50R19。

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「Premium」も12.3インチフル液晶メーターが標準。撮影車「Premium EX」でオプションの本革シート(ブラウン)を選択。標準ではプラチナカラーのインパネトリムがブラックとなっている。

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オプションの本革シートの表皮はナッパレザーとウルトラスエードのコンビ。

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カラーは写真のブラウンのほか、シックなブラックも選べる。

SPORT EX

こちらは1.8Lターボを搭載するスポーティ仕立ての「SPORT EX」。

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「SPORT」は随所でブロンズのアクセントを採用しているのが特徴。

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グリルはブラックで精悍なフェイスに。

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バンパーやサイドクラッディングのアクセントはブロンズカラー。

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18インチのアルミホイールもブロンズ塗装。タイヤサイズは225/55R18。

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「SPORT」のメーターはアナログ2眼+4.2インチ液晶メーター、「SPORT EX」は12.3インチフル液晶メーターを採用。インパネトリムはダークグレーで、加飾やステッチはブロンズカラー。

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シート表皮はウルトラスエード/合成皮革。

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「SPORT EX」のリヤシート。

新型フォレスターのパワートレーンはストロングハイブリッド車のS:HEVと、1.8Lターボ車の二本立て(もちろん、どちらも水平対向エンジンである)。先行予約を開始した4月はS:HEVが8割を占めたが、5月は1.8Lターボ車が盛り返して4割を占めた。S:HEVに受注が偏ったのは、フォレスターにストロングハイブリッド車が設定された話題性と、メディアがこぞってそれを露出した影響が大きいかもしれない。イニシャルコストで割り切って決めるなら1.8Lターボ車のほうが価格面で有利だし、当然、1.8Lターボ車でしか味わえない魅力はある。

先行予約開始直後にS:HEVに人気が集中したため、S:HEVの納期は1年超えとなってしまったそう。これについては短縮化を図るべく動いているそうだ。いっぽう、1.8Lターボ車の納期は3〜4ヵ月だという。いずれにしても新型フォレスター、人気を博しているのは間違いない。

2.5L DOHC 直噴+2モーターで構成されるS:HEV(ストロングハイブリッド)。エンジンは最高出力160PS/209Nm、駆動用モーターは119.6PS/270Nm。WLTCモード燃費は18.4〜18.8km/L。
1.8L DOHC 直噴ターボ。最高出力177PS/300Nm、WLTCモード燃費は13.6km/L。

アクセルペダルの操作に瞬時に応える俊足1.8Lターボ

今回、千葉県金谷の海沿いを起点に高速道路を約12km走り、あとは山に登って降りてくる全行程約45kmのコースを1.8Lターボ車→S:HEVの順で走り、採石場跡のオフロードコースでは新旧フォレスター(旧:2.0L e-BOXER=マイルドハイブリッド、新:2.5L e-BOXER=S:HEV)を乗り比べた。

「これはひょっとして、1.8Lターボ車を気持ち良く走らせるためのコース設定?」と勘ぐりたくなるくらい、気持ち良く走ることができた。アクセルペダルの動きに即応し、力が湧いて背中をグッと押してくれる。だから「ストレスがない」。という消極的な物言いでは足りず、「気持ちいい」という表現がぴったりだ。

ターボならではの爽快な走りが気持ち良い「SPORT」。

その気持ち良さは、ステアリングホイールの右側にあるSIドライブの「S」のボタンを押すと倍増する。アクセルペダルの踏み込み量に量に対する力の出方が増えるため、わずかな踏み込み量でグッとクルマが前に出るようになる。決して過敏ではなく、頼もしさが増す感じ。とくに、曲率の小さなカーブでの立ち上がりで威力を感じる。S:HEVもSIドライブモードを備えており、こちらもSモードに切り換えると踏み込み量に対する力強さは増すが、Iモード選択時の穏やかさと力強いSモード時のコントラストは1.8Lターボ車のほうが上だ。

「SPORT」のインパネ。ステアリングの右側に「SIドライブ」のモード切り替えスイッチが設けられている。

下りのワインディングロードでは、背が高く、重心高が高いはずのSUVとは思えないほどの粘り腰を見せる。強い旋回Gが発生するような状況でも倒れこみそうになるほどにはロールせず、適度な姿勢で持ちこたえる。なんとか踏ん張っている感じではなく余裕しゃくしゃくの懐の深さを乗り手に感じさせるところがいい。思ったより曲がらずにおっとっと危ない危ないという状況にはならず、狙いどおりのラインを忠実にトレースしてくれる。カーブのきつさを見誤ってステアリングを切り増しても、ドライバーの無理な注文をこころよく受け止めるだけの余力が残っている。だから、安心だ。

ちょっとしたワインディングロードをそこそこのペースで走っても腰高感がなく、懐の深い走りが味わえる。

基本的なクルマの動きは1.8Lターボ車とS:HEVとで共通しており、先代に比べてワンランク上質になった印象。1.8Lターボ車はエンジンの働きが濃密に味わえる仕立て。回転数を上げても決して騒々しくはなく(Sモードを選択するとIモード時より高めの回転数を維持するようになる)、雑味を通さずエンジンの鼓動だけを抽出して伝えてくる印象。

S:HEVはエンジンが黒子に徹して、静かで快適な移動を実現

いっぽう、S:HEVのエンジンは完全に黒子に徹している。ドライバーの意思とは関係なくエネルギーマネジメントの観点でエンジンをかけるシーンが多いが、エンジンの存在を極力感じさせない仕立てとなっている。エネルギーモニターを注視していればわかるが、そうでなければエンジンの存在を意識することはまずないだろう。静かで快適な移動が体験できる。

S:HEVを搭載した「X-BREAK」。エンジンの存在感は希薄で、走りのスムーズさが際立つ。

走りの印象も「静」と「動」くらい印象は異なるが、S:HEVと1.8Lターボ車では燃費も大きく異なる。高速走行の比率が小さくアップダウンが激しい今回の試乗ルートでは、S:HEVは17km/L程度、1.8Lターボ車は10km/L程度の燃費を記録した。S:HEVは気持ち良く走っても燃費がいい。1.8Lターボ車は気持ち良く走らせると(S:HEVより気持ち良く走らせたくなる)、燃費はそれなりの数値に落ち着く。S:HEVがいいか、1.8Lターボ車がいいかは、イニシャルコストの観点も含め、どこに評価の軸を置き、何を優先するかに左右されるだろう。

1.8LターボとS:HEV、走りにはそれぞれの魅力があり、甲乙は付け難い。が、燃費に関しては明確にS:HEVに軍配が上がる。

オフロードでは先代からのレベルアップを実感

オンロードでの走行安定性を重視すると、オフロードでは脚の追従性が失われてバタついてしまう。いっぽう、オフロードにセッティングを合わせると、オンロードではヤワになりすぎて安定性に欠けてしまうのが一般論である。フォレスターはダンパーもアンチロールバーも可変ではなく固定だが、片方が良くてもう片方はダメではなく、ほどよくバランスしている。オンロードでは背の高いSUVと思えないほどカーブでは安定し、オフロードではよく脚が動いて悪路を苦もなく走り抜ける。

採石場跡のオフロードコースでの試乗風景。写真で見る以上にハードな路面だが、220mmという余裕ある最低地上高の威力を実感した。

脚のバタツキ、ボディの揺れや細かな振動、ステアリングの剛性感などを含め、新型は先代に対してレベルが上がっているのを、新旧を乗り比べて実感した。

個人的にはとくに、悪路を走行しているにもかかわらずすっきりしたフィールのステアリングに好感を持った。電動パワーステアリング(EPS)はシングルピニオン式だった先代に対して新型ではデュアルピニオン式になっているのが、印象の違いに影響しているに違いない。ステアリングギヤボックスの高い取り付け剛性や、EPSの制御も好印象に結びついた要因だろう。いっぽう、先代は先代で、オフロードを走っている感がよりダイレクトに感じられ、「これはこれで好き」だと感じた。

意外…というと失礼だが、オフロードコースで新型に遜色ない走りが楽しめた先代モデル。

しかし荒々しい自然の中で見る新型スバル・フォレスターのなんとカッコイイことか。「ずいぶん洗練されたルックスになった」と感じていたが、自然の中では浮くどころか、見事に溶け込んでいる。アスファルトも土も似合う、もっと言えば砂浜も森も似合う、憎らしい(ほめ言葉です)SUVだ。

新型になって走りとルックスは洗練度が高められているが、やはりフォレスターはこうした大自然が似合う。
グレードPremium S:HEVX-BREAK S:HEVSPORT
全長4655mm
全幅1830mm
全高1730mm
室内長1950mm
室内幅1540mm
室内高1270mm
※サンルーフ装着車は室内高-15mm
乗員人数(名)5
ホイールベース2670mm
最小回転半径5.4m
最低地上高220mm
車両重量1750~1780kg1730~1770kg1640~1660kg
パワーユニット2.5L水平対向4気筒DOHC直噴
+ 2モーター[e-BOXER(ストロングハイブリッド)]
1.8L水平対向4気筒DOHC直噴インタークーラーターボ
エンジン最高出力118kW(160ps)/5600rpm130kW(177ps)/5200-5600rpm
エンジン最大トルク209Nm(21.3kgm)/4000-4400rpm300Nm(30.6kgm)/1600-3600rpm
燃料(タンク容量)レギュラー(63L)
モーター型式・種類MC2・交流同期電動機
モーター最大出力88kW(119.6ps)
モーター最大トルク270Nm(27.5kgm)
バッテリーリチウムイオン電池ー 
電池容量4.3Ahー 
定格電圧[V]259Vー 
燃費(WLTC)18.4km/L18.8km/L13.6km/L
トランスミッションリニアトロニック(CVT)
ステアリングラック&ピニオン
サスペンション前:ストラット式独立懸架
後:ダブルウィッシュボーン式独立懸架
ブレーキ前後:ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ235/50R19225/55R18
価格448万8000円(EXは459万8000円)420万2000円(EXは447万7000円)404万8000円(EXは419万1000円)

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…