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「見せる」イベントに戻った総火演
モーターファンWebでは先週8日にも、速報的に初公開された新装備4両について紹介したが、今回は演習全体を見ていきたい。さて、昨年の総火演は「見せる」イベントから、実際の訓練に近い内容となり、現場の取材陣すら戸惑うほどだったが、今年は一転して丁寧な解説アナウンスに沿って進められる、従来型の総火演に戻った。

しかし、その構成には大きな変化があった。演習全体を「前段」と「後段」に分けている点は同じだが、これまで後段で行なわれてきたシナリオ型式の展示が、前段から開始されるようになった。これまで前段で披露されてきた個々の装備品の射撃は、対戦車火器(対戦車ミサイルやロケット)と各種火砲・迫撃砲のみとなっている。
シナリオ型式の展示では、戦場の後方にいる火砲・迫撃砲の出番がない…ということもあるだろうが、今回はアナウンスにおいてウクライナ戦争に触れて「特科火力は火力戦闘の中心的存在であり、勝敗を決する決定的要素としてその重要性が高まっています」との解説がなさたことが印象的だった。実際、シナリオ型式の展示でも防御・反撃・攻撃の各場面で、火砲により敵を制圧する状況が描かれている。

ウクライナ戦争からの影響

後段では、敵上陸部隊と守備部隊が対峙しているなかで反撃部隊が上陸し、敵を撃破するところまで展示された。後段でも新たな要素が追加されている。塹壕への突入だ。こちらもウクライナ戦争の教訓に基づくもので「ウクライナ軍はロシアによる大砲やロケット攻撃に対して、塹壕を掘ることにより人的被害を最小限にとどめています。塹壕線が見直されつつあるとともに、敵の塹壕陣地に対応する必要が生起しています」とアナウンスされている。

最終的に3個の戦車小隊が攻撃ヘリの掩護のもとで会場を前進するという、迫力ある戦果拡張のシーンで演習は終了となった。大筋の流れこそ、従来どおりではあるが、ウクライナ戦争の影響がところどころに感じられる点が印象的だった。先週の記事で紹介した新装備とあわせて、「これからどう戦っていくのか」を示した総火演となったのではないだろうか。
