三菱「デリカスターワゴン」、本格4WDのワンボックス型ミニバンの3代目、人気のディーゼルターボは193.6万円【今日は何の日?6月19日】

三菱「デリカスターワゴン」
三菱「デリカスターワゴン」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日6月19日は、三菱自動車の3代目デリカ「デリカスターワゴン」が誕生した日だ。三菱が得意とするパジェロ譲りの4WDを組み込んだワンボックス型ミニバンは、パジェロとともに1980年代後半から始まったRVブームをけん引した。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・三菱 新型デリカD:5のすべて

■RVとして人気を獲得したデリカスターワゴン

1986(昭和61)年6月19日、三菱自動車はデリカの3代目となる「デリカスターワゴン」を発売した。本格的な4WDを搭載したワンボックス型のミニバンで、広い室内空間とどこでも出かけられ4WDの走破性が魅力のマルチユースなRVとして人気を獲得した。

1986年にデビューした3代目デリカ「デリカスターワゴン」
1986年にデビューした3代目デリカ「デリカスターワゴン」

商用車デリカから派生した乗用デリカシリーズ

初代乗用デリカ「デリカコーチ」
1969年3月にデビューした9人乗りの初代乗用デリカ「デリカコーチ」
1968年デビューのデリカ トラック
1968年デビューのデリカ トラックは、カーブドガラスを採用したソフトなスタイルに、同クラス初の3人乗りキャビン、同クラスの他車に比べて余裕のある600kgの最大積載量、エンジンはコルト1100と同じ1.1Lが搭載され、最高水準の58psを発揮
1972年、ルーフゲート開閉式の「デリカキャンピングバン」を発売
1972年、ルーフゲート開閉式の「デリカキャンピングバン」を発売
1972年、ルーフゲート開閉式の「デリカキャンピングバン」を発売
1972年、ルーフゲート開閉式の「デリカキャンピングバン」を発売

・初代デリカ(1968年~)
1968年に誕生した初代デリカは、ラダーフレームにキャブオーバーの3人乗りキャビンを組み合わせた小型トラックだった。車名のデリカは、デリバリー(配達)とカーを組み合わせた造語である。
クラス初の前席3名乗車をアピールポイントとして、エンジンは乗用車「コルト1100」の最高出力58psを発揮する1.1L直4 OHVを搭載。翌年の1969年には、後部の上開き式リアゲートドア、左側面にスライドドアを設けたワンボックス型の商用車「デリカ・ライトバン」と9人乗りの乗用ワゴン「デリカコーチ」が発売された。
その後バリエーションの充実によって、デリカシリーズの生産台数は1968年度の6639台から1970年度には1万5239台と倍増して、三菱を支える主力モデルへと成長した。

2代目デリカ「デリカスターワゴン」
1979年にデビューした2代目デリカ「デリカスターワゴン」

・2代目デリカ「スターワゴン」
乗用ワゴンのデリカコーチが、1979年に2代目デリカ「スターワゴン」へと進化。直線と平面で構成されたクリーンなワンボックススタイルで、後部の上開き式リアゲートドアと左側スライドドアを配置した3列シートの定員9名のミニバンとなった。
パワートレインは、フロントに縦置きされた86psの1.6L直4 SOHCエンジンと4速/5速MTの組み合わせ。駆動方式はFRだったが、1983年にパートタイム4WDモデルが追加され、オフロード性能が強化された。

スタイリッシュに変貌した3代目デリカ「スターワゴン」

3代目デリカ「デリカスターワゴン」
1986年にデビューした3代目デリカ「デリカスターワゴン」

1986年には、3代目デリカ「スターワゴン」(スターワゴンとしては2代目)が登場。標準ルーフ(エアロルーフ)とハイルーフが用意され、先代よりも角が取れた丸みを持たせたスタイリッシュなワンボックス型のミニバンに変貌した。広い室内空間と先代よりも15%増大したガラス面積により、明るく楽しい空間を演出。さらに、サスペンションの改良やラック&ピニオンの採用により、多人数が楽しめる乗り心地や操縦安定性が実現された。

1986年にデビューした3代目デリカ「デリカスターワゴン」
1986年にデビューした3代目デリカ「デリカスターワゴン」

パワートレインは、最高出力91psを発揮する2.0L直4 SOHC、85psの2.5L直4 SOHCディーゼルターボの2種エンジンと4速ATおよび5速MTの組み合わせ。駆動方式は、FRとパジェロ譲りの走破性に優れた4WDが用意された。

3代目「デリカスターワゴン」のコクピット
3代目「デリカスターワゴン」のコクピット

2WDのハイルーフ仕様には、クリスタルルーフと呼ぶ、フロントシート上部のルーフにガラスサンルーフを、セカンドシートからサードシート上部にもガラストップを装備。サンルーフには、チルトアップ機能が付き、遮光のためのサンシェードが採用された。

3代目「デリカスターワゴン」の前席スペース
3代目「デリカスターワゴン」の前席スペース
3代目「デリカスターワゴン」の後席スペース
3代目「デリカスターワゴン」の後席スペース
走るリビングルーム
「走るリビングルーム」をテーマに、マルチシートシステムが採用された3代目「デリカスターワゴン」

車両価格は、4WD仕様で売れ筋グレードが163.6万円(2.0Lガソリン)/193.6万円(ディーゼルターボ)。当時の大卒初任給は14.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値では約258万円/305万円に相当する。

先代より洗練されたデリカスターワゴンは、その後も進化しながらパジェロとともに1980年代後半から始まったRVブームをけん引するモデルに成長した。

その後、市場ニーズに対応してややマイルドになったが人気は不変

その後デリカは、1994年に4代目デリカ「デリカスペースギア」に移行、RVとしての人気は加速し、唯一無二の本格4WDミニバンとして確固たる地位を築いた。

2007年にデビューした5代目デリカ「デリカD:5」
2007年にデビューした5代目デリカ「デリカD:5」

RVブームが去った2007年に登場したのが5代目デリカ「デリカD:5」である。デリカD:5は、市場の変化に対応して先代のオフロード重視から、ミニバンとSUVしての機能を重視して、フロントフェイスも都会的な雰囲気に様変わりした。

先代までのデリカとの決定的な違いは、先代までのベースがFRのパジェロに対して、D:5のベースはFFベースのアウトランダーであること。その結果、4WDシステムについては、スペースギアのスーパーセレクト4WDに対して、デリカD:5は電子制御式4WDであり、クロカン性能についてはややマイルドになった。

2019年「デリカD:5」
2019年フロントフェイスがダイナミックシールドに変更された「デリカD:5」

また、2019年にフルモデルチェンジに匹敵するようなビッグマイナーチェンジを実施。フロントフェイスは、最近三菱が進めているデザインコンセプトの“ダイナミックシールド”を採用し“オラオラ系”に変身したが、現在も唯一無二の存在は健在である。

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ミニバンブームやSUVブームの中でも、他とはちょっと違う独自の存在感でロングセラーを続けているデリカシリーズ。この路線を確立したのは、RVとしてヒットした3代目「デリカスターワゴン」に他ならない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…