目次
■ミニバン、ステーションワゴン、4WDオフローダーの要素を融合させたエアトレック

2001(平成13)年6月20日、三菱自動車は都会的な雰囲気を持つライト感覚のSUV「エアトレック」を発売した。エアトレックは、パジェロの4WDを受け継ぎながらも、ミニバンやステーションワゴンの要素を融合させ、ひとつのジャンルに収まらない新たなSUVであることを訴求した。

エアトレックの先代は、パジェロ派生の弟分チャレンジャー
1990年代に入ると、武骨な本格オフローダーではなく、RVブームに対応した乗用車感覚を取り入れたライトなオフローダーや都会派SUVの人気が高まった。三菱は、「パジェロ」でRVブームをけん引する人気を獲得していたが、もう少し街乗りでも気楽に乗れるライトなオフローダーとして、1996年7月に「チャレンジャー」を発売した。

そのベースはパジェロであり、ラダーフレームや足回り、駆動系をほぼそのまま流用し、パジェロのロングボディの3列シートを外し、その上にパジェロより全高が140mm程度低いルーフのボディを載せる方式でスタイリッシュに仕立てられた。ロングボディながら乗員は5名なので、室内空間には大きな余裕が生まれた。

エンジンは、最高出力185psを発揮する3.0L V6 SOHCガソリンエンジン、125psの2.8Lおよび105psの2.5L直4 SOHCディーゼル・インタークーラーターボの3種。トランスミッションは、4速ATにスーパーセレクト4WDが装備された。
チャレンジャーはパジェロ人気の陰に埋もれたため、日本では2001年にもう少し小型のエアトレックにバトンタッチして販売を終了した。ただし、人気があった海外では主に「パジェロスポーツ」の車名で販売されている。
チャレンジャーの後継として登場したエアトレック

2001年6月のこの日、“スマートオールラウンダー”のキャッチフレーズとともに「エアトレック」がデビューした。ステーションワゴンとも、ミニバンとも、またオフロード性能を持つ4WD SUVとも異なる、特定のジャンルに収まらない、今で言うところのクロスオーバーSUVだ。当時は、まだクロスオーバーSUVという表現は一般に浸透していなかった。

エアトレックは、6代目ランサー「ランサー・セディア」をベースに、シャシーやサスペンション、エンジンなどを流用して極力コストを抑えて開発された。


全体的にやや膨らみを持たせた欧州車風のスタイリッシュなデザインに、大人5人が余裕をもって乗れる室内空間と広い荷室空間を持ち合わせ、さらに4WDによる走破性も兼ね備えた各ジャンルの良いところを融合させていた。
パワートレインは、最高出力126ps/最大トルク17.6kgmを発揮する2.0L直4 SOHC、139ps/21.1kgmの2.4L直4 DOHCの2種と4速/5速ATの組み合わせ。駆動方式はFFとビスカスLSD付センターデフ式のフルタイム4WDが設定された。

車両価格は、4WDの標準グレードが185万円(2.0L)/220万円(2.4L)。当時の大卒初任給は、19.7万円程度(現在は23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約216万円/257万円に相当する。

オールラウンダーをアピールしたエアトレックだったが、そのアピールは市場に上手く響かず、登場からおよそ4年後の2005年に後継車「アウトランダー」にその座を譲ることになった。

後継車は、より洗練された都会派SUVアウトランダー
エアトレックの後継車、アウトランダーがデビューしたのは2005年10月のこと。エアトレックよりひと回り大きくなり、街乗りからある程度のオフロード走行もできる、街乗りを重視したより都会的なクロスオーバーSUVとなった。

アウトランダーと言えば、人気のPHEVのイメージが強いが、最初はガソリン車で登場していた。エンジンは、当初は190psの2.4L直4 DOHCエンジンだけだったが、2007年には220psの3.0L V6 DOHCエンジンが追加された。トランスミッションは、2.0LがCVT、3.0L V6には6速ATが組み合わされ、駆動方式はFFと電子制御フルタイム4WDが用意された。

アウトランダーは、堅調な販売を続けながら進化を続け、2012年10月にモデルチェンジして2代目に移行。そして、2013年1月に「アウトランダーPHV」が登場したのだ。アウトランダーは、PHEVの先駆的なモデルとして高く評価され、国内のみならず、世界で最も売れているPHEVとして海外でも高い人気を獲得している。
・・・・・・・・・
エアトレックは、ステーションワゴン、ミニバン、4WDオフローダーの良いとこ取りという、少し欲張りすぎたコンセプトだったために、逆に狙いがボケてしまって存在感をアピールできなかったのかもしれない。また、当時は三菱がダイムラー社の傘下だった時期で、海外重視のモデルだったことも国内で評価されなかった要因かもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。