日産「セレナ」人気はここから始まった! ミニバン初の両側スライドドアを装備し241.4万円で2代目デビュー【今日は何の日?6月21日】

日産2代目「セレナ」
日産2代目「セレナ」
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日6月21日は、日産自動車のミドルクラスミニバン「セレナ」の2代目が誕生した日だ。初代のミッドシップレイアウトからFFレイアウトに変更して広い室内を実現し、さらにミニバン初の両側スライドドアを装備することで利便性を高めた。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・日産 バネット・セレナのすべて、新型セレナのすべて

■FF化と両側スライドドアにより利便性追高めた2代目セレナ

1999年(平成11)年6月21日、日産自動車はミドルクラスのミニバンである2代目「セレナ」を発売した。2代目セレナは、FFレイアウト化や両側スライドドアなどの採用によって、ミニバンとして不可欠な広い室内空間や利便性を高めて、今日の人気セレナの原型を構築したモデルである。

日産2代目「セレナ」
1999年にデビューした2代目「セレナ」

今に繋がるミニバンの先駆けとなったバネット・セレナ

1991年に乗用バネットコーチの後継としてミニバン「バネット・セレナ」が誕生した。従来の商用車ベースのバネットとは異なり、キャブオーバーから前輪を前席の前に搭載するセミキャブオーバーに変更。さらにエンジンを前車軸後方にミッドシップ。目指したのは、3列シートのファミリーユースを重視したミニバンだった。

1991年に登場したバネット・セレナ(初代セレナ)
1991年に登場したバネット・セレナ(初代セレナ)

新パッケージングによってフロントに有効なクラッシャブルゾーンが確保されて安全性が高まり、さらに長いホイールベースによって広い室内空間と自由度の高いシートレイアウトが実現された。8名の標準仕様と、定員7名の2列目キャプテンシートが選べた。

1991年に登場したバネット・セレナ(初代セレナ)
1991年に登場したバネット・セレナ(初代セレナ)

パワートレインは、最高出力130psの2.0L直4 DOHC、91psの2.0L直4 SOHCディーゼルエンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FRと4WDが用意された。

多人数でのファミリードライブが楽しめるバネット・セレナは、好調な販売を記録した。

FF化して広い室内空間を実現した2代目セレナ

1999年6月のこの日、モデルチェンジしてバネットの冠が外れた2代目セレナがデビューした。最大の特徴は、初代ミッドシップからFFレイアウトになったこと。

日産2代目「セレナ」
1999年にデビューした2代目「セレナ」

FFレイアウトの採用によって、低床化とともに先代よりも広い室内空間が確保され、さらにミニバンとしては初の両側スライドドアの採用によって利便性も大きく向上した。

2代目「セレナ」のリアビュー
2代目「セレナ」のリアビュー

また3列シートの最大8人(2/3/3人)乗りで、2列目シートはベンチタイプとスプリプトタイプが選べ、シートアレンジは多彩だった。3列は折り畳みが可能で、畳めば荷室が飛躍的に拡がる一方で、大人が座るのにはやや窮屈だった。

2代目「セレナ」のコクピット
2代目「セレナ」のコクピット
2代目「セレナ」のシートアレンジ
2代目「セレナ」のシートアレンジ

パワートレインは、最高出力145psを発揮する2.0L直4 DOHC、150psの2.5L直4 DOHCディーゼルターボの2種エンジンと、CVTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが用意された。

2代目セレナに設定された「キタキツネ」仕様
2代目セレナに設定された「キタキツネ」仕様。オーテックジャパンが手掛け、アウトドアシーンで活躍するRVテイストが楽しい
2代目セレナに設定された「キタキツネ」仕様
2代目セレナに設定された「キタキツネ」仕様。オーテックジャパンが手掛け、アウトドアシーンで活躍するRVテイストが楽しい
2代目セレナに設定された「キタキツネ」仕様
2代目セレナに設定された「キタキツネ」仕様。オーテックジャパンが手掛け、アウトドアシーンで活躍するRVテイストが楽しい

車両価格は、2WD仕様の標準グレードが241.4万円(ガソリン)/268.4万円(ディーゼル)、4WD仕様はそれぞれ約25万円高に設定。当時の大卒初任給は19.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約282万円/313万円に相当する。

日産2代目「セレナ」
1999年にデビューした2代目「セレナ」

乗る人すべてに楽しさ、快適さを提供する新世代ファミリーカーを目指した2代目セレナは、ミニバンブームの勢いに上手く乗り、2007年にはホンダ「ステップワゴン」とトヨタ「ヴォクシー/ノア」を抑え、5ナンバーミニバントップの座に君臨する大ヒットとなった。

その後も進化してミドルクラスの人気ミニバンに定着

2005年5月にモデルチェンジした3代目セレナは、大きなサイドウインドウと広い開口のスライドドアの採用などでブラッシュアップして2代目を上回る人気を獲得。また2010年11月に登場した4代目も、自動ブレーキやLDW(車線逸脱警報)、ハイブリッドモデルの追加など、最新技術を投入して人気を継続した。

3代目「セレナ」
2005年に大ヒットした3代目「セレナ」

そして、人気ミニバンとなったセレナは、2016年7月に5代目に移行した。5代目は、ブーメラン型の前後ランプや日産の象徴となっているVモーショングリル、サイドのシュプールラインなどダイナミックなフォルムを採用。最も注目されたのは、運転支援技術“プロパイロット”の採用である。プロパイロットは、信号のない高速道路や自動車専用道路の走行に限って、アクセルとブレーキ、ステアリングを自動的に制御して、単一車線を維持しながら先行車に追従するシステムであり、ACC(追従機能付クルーズコントロール)とLKAS(車線維持支援システム)の2つの機能を融合したものを基本としている。

5代目「セレナ」
2016年にデビューした5代目「セレナ」。プロパイロットを初めて搭載

さらに2022年12月に6代目にモデルチェンジしたセレナも、プロパイロットやe-POWERなど日産独自の技術とともに進化し、高い人気を獲得している。

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FF化による広い室内と両側スライドドアによる利便性の向上というミニバンに不可欠な構成要素を実現した2代目セレナ。この2代目で、現在もミドルクラスのミニバンとして長く人気を獲得しているセレナのベースが出来上がったと言える。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…