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■NISMOが手掛けた高性能マーチNISMO登場
2013年(平成25)年6月24日、日産自動車はNISMOによるハイチューンモデル「マーチNISMO」を発表、予約を開始した。日常の街乗りでの楽しさを重視した「NISMO」と、よりパフォーマンス志向の「NISMO S」の2つのグレードが用意され、同年12月から発売された。

世界に通用するリッターカーを目指して誕生したマーチ
1970年代後半は、1977年のダイハツ「シャレード」や1979年のホンダ「シティ」の登場で、コンパクト市場は一気に活況を呈した。

この盛り上がったコンパクトカーブームに対応して、日産は1982年10月に初代マーチ(K10型)を投入。初代マーチは内外装を著名なデザイナー、ジウジアーロがデザインし、洗練された親しみのあるハッチバックスタイルと運転のしやすさが特徴だった。

パワートレインは、日産初のアルミ製で最高出力57ps/市第トルク8.0kgmを発揮する1.0L直4 SOHCと4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせで、駆動方式はFF。初代マーチは、欧州でも「マイクラ」の車名で販売され、日本と同様欧州でも人気を獲得した。

1992年にモデルチェンジした2代目(K11型)は、丸みを帯びたスタイリングに変更され、“日本カー・オブ・ザ・イヤー”、“欧州カー・オブ・ザ・イヤー”を受賞するなど、マーチの人気は不動のものとなった。

2002年には3代目(K12型)に生まれ変わった。それまでのマーチの基本コンセプトを継承しながら、2代目よりさらに丸みを持たせた、愛くるしいキュートなスタイリングに変貌した。
マーチNISMOのベースとなったのは4代目マーチ

約8年半ぶりのフルモデルチェンジで2010年に4代目(K13型)に移行したマーチ。日本向けの車両はタイ生産となったため、輸入車という扱いとなった。全体のスタイリングは、先代のイメージを踏襲したものでやや新鮮味に欠け、ボディタイプは5ドアハッチバックのみ。

パワートレインは、最高出力79ps/最大トルク10.8kgmを発揮する1.2L直3 DOHC(HR12DE型)とエクストロニックCVTの組み合わせのみ。駆動方式は基本FFだが、3代目から採用された電動4WD(e・4W)が用意された。
タイ生産やシンプルなバリエーション構成から、グローバルモデルとしてコスト低減を重視していることが伺え、車両価格は、最も廉価な仕様が99.96万円に設定されていた。

3年後のノートNISMOが発表された同日に、マイナーチェンジが行なわれた。主要な変更は、内外装のブラッシュアップである。フロントグリルのVシェイプのメッキ加飾やヘッドランプのクロームアクセントの追加。インテリアについては、シルバーステッチを配したシートとドアのスエード調クロスなどでプレミアム感と華やかさを演出。マイナーチェンジでの廉価仕様の価格は、104.26万円に設定された。
NISMOシリーズ第3弾はマーチNISMO


NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)が仕上げるハイチューンのコンプリートカーNISMOシリーズは、2013年の「ジュークNISMO」を皮切りに、「フェアレディZ NISMO」、「マーチNISMO」と現在は日産の主要なモデルのほとんどに設定されている。


マーチNISMOは、同日にマイナーチェンジされたマーチをベースにして、エクステリアについては専用フロント・スポイラー、リア・スポイラー、フロントグリル、エンブレム、フェンダー・モール、サイドシル・プロテクター、リモコン・カラード・ドアミラー、LEDハイパー・デイライト、リア・フォグランプ、プライバシー・ガラスなどを装備。インテリアには、スポーツ・シート、専用コンビメーター、本革・アルカンターラ巻の専用ステアリング、専用エンブレム、アルミ製ペダル&フットレストが装備された。

パワートレインは、標準仕様の「マーチNISMO」がベース車と同じ1.2L直3 DOHC(HR12DE型)とCVTの組み合わせ。よりパフォーマンス志向の「マーチNISMO S」は最高出力116ps/最大トルク15.9kgmを発揮する1.5L直4 DOHC(HR15DE)と5速MTの組み合わせ。
その他にも、シャシーは専用サスペンションと、クイックにチューニングされたステアリング、専用ブレーキ・システム、専用16インチ・アルミホイールなどが装備された。
走りに関わる部分に大きく手が入れられたマーチNISMOの価格は、154.035万円、マーチNISMO Sが177.03万円に設定された。
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マーチは、2022年8月に生産を終了した。タイ生産となった4代目から、新興国向けのクルマのイメージが強まり、代わりにノート(2016年にデビュー)人気が高まった影響でマーチの存在感が薄れてしまった。マーチNISMOはホットハッチとして優れたクルマだったが、より先進的なノートNISMOの方が魅力的と考える人が多かったのだろう。
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