最も高価なボルボ?大型トラック「FH」に乗ってみた!これは充実装備と快適空間の”走るマイホーム”!?

スウェーデン生まれのクルマといえば、ボルボが有名だが、それは乗用車だけではない。なんと大型トラックもある。元々は同じグループであったが、1999年に乗用車部門が売却をされたため、別会社となってしまったが、いずれも長い歴史を持っている。さらに日本の輸入大型トラック市場では、実はトップの人気を誇る存在でもあるのだ。そのボルボFHシリーズに、最新型となる2025年モデルが登場したことで、試乗会が開催された。実車チェックで感じた最新北欧トラックの魅力とは?
REPORT:大音安弘(OHTO Yasuhiro) CAPTION:MotorFan.jp PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)/MotorFan.jp

ボルボの大型トラック「FH」シリーズ

ボルボトラックの大型車「FH」の2025年モデルが、5月26日より発売され、その登場に合わせた試乗会が開催された。まずは主役について簡単に紹介しよう。ボルボの大型トラック「FH」はトレーラーヘッドのトラクターとラックフレーム一体のリジッドの2種類を展開している。

ボルボトラックFH4×2トラクターの2025年モデル。外装も小変更を受けた。

試乗した4×2トラクターは、ボディサイズが全長6030mm×全幅2490mm×全高3750mmと巨大だが、もちろん、トラクター本体だけのサイズ。ホイールベースだって、3500mmもあるのだ。
他の市販車と比べてみると、ボディサイズは、フィアットのバン「デュカト」の最大ボディ仕様の「L3H3」とほぼ全長が同等。ホイールベースだと、ジープのピックアップトラック「グラディエーター」とほぼ同じ。つまり、本体だけでも乗用車と比較できないサイズ感なのだ。

ボルボトラックFH4×2トラクターは、後輪の2輪が駆動する。

駆動方式は「4×2」。つまり、全4輪のうち後輪2輪を駆動することを意味している。ちなみに、ラインナップには「6×4」もある。もちろん、走行時にはトレーラーが連結されるが、その際の全長は17m前後まで拡大する。

トレーラーを連結して走るボルボトラックFH6×4トラクター。これは23トンの荷物を積載した状態だ。

乗用車とは桁違いのモンスターパワーユニット

多くの荷物を運ぶ力持ちのエンジンだって巨大だ。13.0Lの直列6気筒ディーゼルターボは、仕様に合わせて、2種類のスペックがあり、最高出力470ps/最大トルク2346Nmと最高出力551ps/最大トルク2652Nmがある。4×2では、キャビンにより出力が異なるが、6×4だと全車551ps仕様となる。

FHに搭載されるD13eSCR13.0Lの直列6気筒ディーゼルターボ。写真は4×2で最高出力551ps/最大トルク2652Nmというスペック。

トヨタランドクルーザー300に搭載される最新ディーゼルエンジンの3.3L V型6気筒ツインターボが最高出力307ps/最大トルク700Nmなので、桁外れのトルクであることが分かるだろう。トランスミッションは、12段変速のIシフト。その中身はDCTで、操作は乗用車のオートマと同じ。パーキングブレーキも電動化されている。

12速DCT「Iシフト」のシフトレバー。手前の「MODE」スイッチで「エコノミー」「スタンダード」「パフォーマンス」「オフロード」とドライブモードが切り替えられる。

2025年モデルでは運転支援機能を強化

2025年モデルの最大のポイントは、先進の安全運転支援機能の強化だ。同一車線内全車速運転支援システム「パイロットアシスト」と車線逸脱抑制機能「レーンキーピングアシスト」、メーター内に標識アイコンを表示する「道路標識認識機能」を装備。さらに衝突被害軽減ブレーキには、人検知機能を追加されるなど、安全性能が高められている。

2025年モデルで変更されたフロントマスクのエンブレムまわり。

またデザイン面でも小変更があり、フロントマスクのボルボエンブレムが、より強調されたものとなった。車内の機能面では、時代のニーズに合わせてUSBポートをタイプCに変更し、3か所6口まで増加させている。

乗用車にも通じる北欧デザインのインテリア

まずは車内をチェックしてみる。ただキャビンが高い位置にあるので、乗用車のようにさっと乗り込むことはできない。何しろ、フロアが目線より高いのだ。運転席に乗り込むためには、ボディ側面のステップと手すりを使い、上っていく必要がある。乗降さえ、ひと仕事なのだ。室内に収まると、広い景色が広がる。乗用車の視点と比べると、SUVよりもさらに高い。まるで展望台に上ったような気分だ。

まさに見上げる高さのコックピット。手すりやステップは備わるものの、乗降には注意する必要がある。
コックピットからの視界。視点の高さもあり、前方視界はかなり広い(写真は助手席から撮影)。

室内空間はかなり広く、170cmちょっと筆者が立ってもまだ頭上にはゆとりがある。シート後部には広いベッドスペースがあり、ふかふかのマットレスが敷いてある。天窓もあり、室内も明るく開放的。ここでの睡眠はさぞや快適なことだろう。

シート後方のベッドスペースは長さ2000mm×最大幅815mmのサイズを誇る。スプリングコイルマットレスはラグジュアリー仕様ではリクライニングも可能。さらにベッド下も収納になっている。壁面のパネルはベッドにいても照明や空調、オーディオが操作できる「スリーパーコントロールパネル」だ。
室内高は2030mmと高く、コックピット内で立つこともできるほど。そのルーフ中央には天窓も用意されていて、アイボリーの内装と相まってキャビン内は明るい雰囲気だ。

もちろん、長距離移動で重要な収納も充実。さらにオプションで冷蔵庫を装備することも可能という。まるでキャンピングカーのような室内なのだ。

収納は多数用意されている。写真はコックピット上部左右の収納スペース。
ベッドスペース後方にも十分なサイズに収納が用意されている。

そんなキャビンの印象は洒落ており、さすが北欧生まれと感心させるもの。シックな色味で内装の素材も実用的のものだが、温かみと居心地の良さを重視していると感じる。例えるならば、「走るIKEA」といった雰囲気だ。海外では、数か月単位で自宅に戻らないトラックドライバーもいると聞くだけに、快適な空間作りは、安全運転にも繋がる重要な機能なのだと納得できる。

主にウインドウより上はアイボリー、下はマットグレーでまとめられた落ち着いた雰囲気のキャビン。

運転席に収まってみると、コクピットデザインはプロの仕事場らしいドライバー中心のレイアウトになっている。ただドライビングポジションは、国産トラックの日本特有のものとは異なる乗用車ライクなもの。近いものを挙げるならば、ハイエースだろうか。

メーターは、乗用車同様にフルディスプレイモニターとなっており、速度や回転数、ADAS機能などの表示も一目でわかるもの。運転席左側には、インフォテイメントシステム用ディスプレイが備わり、その下にはエアコンパネルもある。操作性は、乗用車ライクなもの。基本的な設定もディスプレイ上でできるという。

メーターは昨今乗用車にも多いディスプレイタイプ。
インフォテインメント用のサイドディスプレイは9インチのタッチパネル式。

細かいところ見ていくと、ライトスイッチやエアコンのダイヤルなどは、一世代前のボルボと同様なデザインとなっていたのは、ちょっと嬉しかったところ。そんな物理的なものだけでなく、ボルボの安全思想もきっと両者に受け継がれているのだろう。

広大なセンターコンソールはエアコン系(写真右下)やインフォテインメント、トラックならではの各種機能のスイッチが並ぶ。
ステアリングまわりも乗用車ライク。2025年モデルからワイパー系の機能が左レバーに移され、ワイパーとウインカーを左レバーだけで操作するようになった。

プロドライバーに愛されるボルボトラック……その走りは?

ビッグレース開催中のサーキットのパドック裏でよくみる「モーターホーム」が説明会の会場としてセッティングされた。

迫力満点でカッコよいエクステリアに加え、インテリアはボルボ乗用車とも共通する温かみに溢れた空間となっている「FH」。乗用車と共に磨いてきたボルボらしさは、今も健在と感じた。輸入車トラックがプロたちに愛され、憧れるのも分かる気がした。

トラック本体とは直接関係はないが、トレーラーとは思えないモーターホームの説明会会場の様子。

なんと当日は、筆者にも新型FHを運転させてくれるという。一体どんな走りを見せてくれたのか、次回をお楽しみに!

クローズドコースとはいえ、雨天での大型トラックの運転は……

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…