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コンセプトは俊足の電動シティレーサー

ノートは、日本でもっとも売れている日産車だ。2024年の国内販売台数は10万1766台で第4位(1位カローラ、2位ヤリス、3位シエンタ)だ。
現行ノートのデビューは2020年12月、ノートオーラが追加されたのが21年8月だった。23年にノートがマイナーチェンジを受け、24年7月にはノートオーラNISMOもマイナーチェンジを受けている。その際に新設定されたのが、ノート オーラNISMO tuned e-POWER 4WD(以下オーラNISMO 4WD)だ。
全長×全幅×全高:4120mm×1735mm×1505mm
ホイールベース:2580mm
車両重量:1390kg 前軸軸重810kg 後軸軸重580kg
最低地上高:130mm
最小回転半径:5.2m
オーラNISMO 4WDのコンセプトは、「俊足の電動シティレーサー」。e-POWERだから、駆動は電動モーターによるもの。4WDのリヤ駆動を担うのも、モーターである。このモーターのパワーと制御が、オーラNISMO 4WDのキモの部分だ。
日産自動車グローバル本社地下フロアで、オーラNISMO 4WDに対面。ガーネットレッド/スーパーブラック2トーンと各種エアロパーツを装着したルックスは、明らかに上品・上質を目指したオーラとは違う。ちょっと古い言葉でいえば、「ボーイズレーサー」だ。
車両価格は347万3800円だから、「ボーイズ」がちょっと背伸びして買うにはお高いのだが、NISMOを名乗るために投入された技術と装備を見ると、リーズナブルと言える。

まずはリヤモーターだ。ノーマルのノートオーラ4WD(G-FOUR)のリヤモーターは
型式:MM48
種類:交流同期電動機
最高出力 68ps(50kW)/4775-10024rpm
最大トルク:100Nm/0-4775rpm
これに対してオーラNISMO 4WDは型式こそ同じだが、スペックが
最高出力 82ps(60kW)/3183-10024rpm
最大トルク:150Nm/0-3183rpm
とノーマルでも充分なパワー/トルクなのに、10kW/50Nmも高められている。

ドライブモードは、デフォルト(始動したときのモード)のECO、NORMALに加えて「NISMO」モードが用意された。
このNISMOモードは、ワインディングなのでアクセルで積極的にクルマの向きを変えられる走りが可能(NOMALモードも、通常のオーラより後輪駆動力が高くなっている。

タイヤはミシュランのPILOT SPORT⁴(205/50ZR17サイズ)だ。
つまり、オーラNISMO 4WDは、e-POWERだけれど、「ECO」「燃費」よりも「SPORT」に思い切り振ったモデルなのだ(NISMOなんだから当然だけど)。
にもかかわらず、そのオーラNISMO 4WDをよりにもよってロングドライブに連れ出してしまった。目的地は岐阜県恵那市だ。
天候は曇り/雨、ときどき強雨。中央自動車道をひた走る。きつい勾配、荒れた路面。そんな状況下でオーラNISMO 4WDは、「やはり4WD、しかもちゃんとリヤに駆動力を配分する4WDは安心だ」と感じさせてくれる。
ただし、荒い路面もなんのその、”矢のような直進安定性”を見せてくれる……わけではなく、しっかりステアリングを握って進路を制御する必要がある。試乗車にはメーカーオプションのプロパイロット(ナビリンク付き)を装備していたが、正直、あまり恩恵に与れたた感じがしなかった。もちろん、速度と車間はしっかり制御してくれたが。

恵那まで335.2km走って、メーター上の平均燃費は18.0km/L。平均時速が70km/hとかなり高かったので、この燃費は悪くない。WLTCモードの平均速度は36.5km/h、高速道路モードでも56.7km/hだから、70km/hは高過ぎ。
オーラNISMO 4WDのモード燃費は未公表だが、ノートオーラG-FOURの燃費は
WLTCモード 22.7km/L
市街地モード 22.3km/L
郊外モード 24.8km/L
高速道路モード 21.7km/L
だから、この高い車速(70km/h)で18.0km/LならOKだ。
NISMOモードはどうだ?

発電用エンジン
形式:水冷直列3気筒DOHC
型式:HR12DE
排気量:1198cc
ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm
圧縮比:12.0
最高出力:82ps(60kW)/6000pm
最大トルク:103Nm/4800rpm
燃料供給:EGI
燃料:無鉛レギュラー
燃料タンク:36L
ここまでの走行はほぼNORMALモード。高速道路走行でのアクセルオフ時の回生量がECOほど強くないNORMALの方が自分の好みだったからだ。


せっかくNISMOモデルをドライブしているのだから、NISMOモードも試してみなければ、ということで山間のワインディングロードでNISMOモードに切り換えた。パワーアップはすぐに体感できる。そして後輪の駆動力が格段に上がり、後ろから押してくれる感覚が味わえる。コーナーでアクセルを踏み込むとフロントが入っていきやすくなり、コーナーが楽しくなる。あいにくの雨模様だったが、NISMOモードでの走りは「俊足の電動シティレーサー」の名にふさわしいものだった。
燃費の話を少し続けると、
帰路東京まで726km走って、平均時速75km/hで燃費は17.0km/L
最終的にトータルで876.5km走行して平均時速69km/h、平均燃費は17.2km/Lだった。

スポーツモデルで、この平均速度でこの平均燃費は、e-POWERの性能の高さと言える。高速道路上でも下り坂やコースティングでは積極的にエンジンを止めるし、エンジンの停止・再始動の音や振動はこの速度域ならまったく気にならなかった。

そういえば、以前(21年11月)、ノートオーラを試乗した際にいたく感激した、BOSEパーソナルプラスサウンドシステムに今回はあまり心動かされなかった。いろいろセッティングを変えてみたけれど、以前のような感動はなかった。理由はよくわからないけれど、おそらく室内の騒音(NV)がベースモデルに対してNISMOモデルはやはり少々賑やかだから、なのではないかと思う。ちなみに、以前試乗したクルマはトランザT005A(205/50R17)だった。

900km走ってみてオーラNISMO 4WDで感心したのは、シート。岐阜からの帰路、まったく腰が痛くなることもなく、疲れ知らずでドライブできたのは驚いた。見かけは何の変哲もないシートなのだが……(あ、NISMO専用シート地です)。
オーラNISMO 4WDが証明したかったのは、モーター駆動でも楽しい4WDスポーツが作れるということだろう。それどころか、前後モーターを緻密に制御すること、より高い次元の走りが実現できることを示せたと言える。
NISMOブランドは1984年にスタートしているから40年を超える歴史を持つ。その間のモータースポーツでの実績は言うまでもない。RE:NISSANに取り組む日産にとっての大きな財産だ。安売りすることなく、磨き続けてほしい。ごくごく個人的な要望としては、さりげなく「NISMO」バッジを付けてはいるが、ルックスは限りなくノーマルに近い、それでいて走りの楽しさ・質感はNISMOというモデル、大人向けのNISMOがあったらうれしい……のだが。

日産ノート オーラNISMO tuned e-POWER 4WD
全長×全幅×全高:4120mm×1735mm×1505mm
ホイールベース:2580mm
車両重量 1390kg
Fサスペンション:独立懸架ストラット式
Rサスペンション:トーションビーム式
駆動方式:4WD
発電用エンジン
形式:DOHC水冷直列3気筒
型式:HR12DE
排気量:1198cc
ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm
圧縮比:12.0
最高出力:82ps(60kW)/6000pm
最大トルク:103Nm/4800rpm
燃料供給:EGI
燃料:無鉛レギュラー
燃料タンク:36L
Fモーター
型式:EM47
種類:交流同期電動機
最高出力:136ps(100kW)/3183-8500rpm
最大トルク:300Nm/0-3183rpm
Rモーター
型式:MM48
種類:交流同期電動機
最高出力 82ps(60kW)/3183-10024rpm
最大トルク:150Nm/0-3183rpm
動力用主電池 リチウムイオン電池
車両価格:347万3800円
メーカーオプション:ワイパーデアイサー8800円、ガーネットレッド/スーパーブラック2トーンなど52万8000円