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CR-Vより大きく、パイロットより先進
前回このコーナーで取り上げた「パイロット」に続き、今回レポートするのもホンダのSUVである「プロローグ」だ。ただ、こちらはホンダがGMと共同開発したBEV専用SUVで、GM製の「Ultium(アルティウム)」バッテリーを搭載。アメリカでは2023年9月に正式発表され、25年3月には航続距離を伸ばす一部改良が早くも取り入れられている。

ボディサイズは全長が4876mm、全幅が1988mm、全高が1643mm。パイロットと比べると少しコンパクトだが、逆にホイールベースは3093mmと長く、フロア下にバッテリーを搭載するスペースを稼ぎ出している。

幅が広くて背が低いワイド&ローなフォルムは、あまり他のSUVでは見られないこともあり、BEV専用車らしい先進的な印象を生み出している。ちなみにアキュラブランドから展開されている「ZDX」も同じプラットフォームを採用する兄弟車だが、そちらもまたかなり先鋭的なデザインだ。

アメリカだとそもそも狭い路地に鼻先を突っ込んでいくようなシチュエーションがほとんどないため、取り回しに苦労することも多くはないのだが、もし仮に日本で乗ったらと想像すると、やはり1988mmに達する全幅にはそれなりに気を使うだろう。日本でも販売しているCR-Vよりひと回りは大きいので、アメリカではミドルサイズでも、日本ではラージサイズと捉えるのが現実的ではないだろうか。

304ps&航続455km──最新BEVに求められる性能をどう実現したか
今回試乗したプロローグは「Elite(エリート)」という最上級グレードで、21インチの大径ホイールを標準装備。純正装着タイヤはブリヂストンのALENZA A/S 02というオールシーズンタイヤだった。車内が静かな分、ロードノイズは少し大きい印象も残った。

サスペンションには前後ダブルウィッシュボーンが採用されており、実際の乗り味も上質で洗練されたものだった。バッテリーの重量を支えつつ、不快なショックを生まないためには相応のチューニングも施されているはずだが、オールシーズンタイヤから伝わるザラついたフィーリングを除いては、オンロードでもオフロードでも快適そのもの。BEVらしいスムーズな走りを味わうことができた。

バッテリー容量は全グレード85kWhで共通だが、駆動方式はフロントモーターのみの2WDとリヤモーターも搭載するAWDをグレード別にラインナップ。「Elite」はAWDのみの設定だ。
試乗車は一部改良前のモデルだが、最新の25年モデルはモーターの最高出力も向上。2WDモデルが223ps、AWDモデルが304psを発揮する。航続距離は2WDモデルが495km、「EX」と「Touring」のAWDモデルが473km、「Elite」が455kmだ。

現在、アメリカの急速充電で標準規格となっているCCS1の充電ポートを左フロントに装備。25年からはアダプターを使うとテスラのスーパーチャージャー(NACS)を利用することも可能となったが、急速充電の最大受け入れ能力は150kWとなっている。

先進性と実用性が共存するインテリア
水平基調のインパネと大きなセンターコンソールを組み合わせたインテリアは、ここ最近のホンダ車に共通するデザイン。ただし、プロローグは11インチのデジタルメーターと11.3インチのセンタータッチスクリーンが大きく存在感を放ち、外観に負けない先進性をイメージさせる。

車載システムにはGoogleのGoogle built-inが搭載され、GoogleマップやGoogleアシスタント、Google Playなどのアプリケーションをデフォルトで利用可能。OTAによるソフトウェアのアップデートにも対応している。

タッチスクリーンとは別に独立したエアコン操作パネルも装備。物理キーがずらっと配列されたパネルの見た目は好みが分かれるかもしれないが、目当てのコマンドを一発で選択できる操作性には、やはりホッとさせられるものがある。

ギヤセレクターはコラムレバー式を採用。指先でレバーを手前に引きながら下に下げるとドライブ、上に上げるとリバースを選択できる。先端のボタンを押すとパーキングモードだ。これはシボレーのシルバラードEVにも同じものが装備されているので、おそらくGM主導で採用されたものと思われるが、正直なところホンダが採用しているセンターコンソールレイアウトの電制スイッチより直感的に操作することができた。

運転席の左側にいくつかスイッチが配置されているが、一番左がパーキングブレーキのスイッチ。その隣に「SPORT」とあるのが文字通りスポーツモードのスイッチで、モーターのレスポンスがよりクイックになる。ただ、それでも「EVらしい怒涛の加速」というほどのフィーリングではなく、登坂時のトルク感を増すなど、割と実用的な用途に向いたモードと感じられた。

「Elite」は110VのAC電源も標準装備され、リヤコンソールにコンセントの差し込み口を備える。隣にあるUSB-Cの充電ソケットは全車に標準装備。

快適装備と実用的な積載性──ロングツーリングにも応える室内パッケージ
シートレイアウトはオーソドックスな2列5人乗り。「Touring」と「Elite」にはレザーシートが標準装備されている。フロントシートのシートヒーターは全グレードに採用されているが、最上級の「Elite」にはシートベンチレーションも備わるのがトピックだ。


リヤシートは一般的な60:40の分割可倒式。ラゲッジルームのフロアはホイールハウス間の幅が約1070mm、奥行きが約840mm、開口部までの高さが約700mm。リヤシートを格納した時の運転席シートバックまでの奥行きは約1830mmだ。

さて、今回の試乗取材はロサンゼルスを起点にネバダ州のラスベガスを目指すという、なかなか無謀な旅となった。片道は約457kmあり、そもそも「Elite」の航続距離では足りないため、必ず途中で充電を行わなければならない。電欠のリスクもゼロではないスリリングなドライブは、実際ちょっとした珍道中でもあったのだが、その詳細は後編でお送りしよう。
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