おれもわたしもそう思う必至 ・ 高騰するクルマの値段を安くするための提案 ~いまどき装備の要・不要をあらためて考えてみよう~ 【MFクルマなんでもラウンジ】 No.17

今回の「ラウンジ」は、単なる嘆き、愚痴に終始しそう。
昨今、上昇の一途をたどりっぱなしの、新車の車両価格について話題に考えてみたい。

TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi) PHOTO:山口尚志/スズキ/モーターファン・アーカイブ

新車はもう無理? 素人頭で考える、高いクルマの値段を安くする方法

自動車の価格も高くなった。

家の次に高い買いものと昔からいわれているが、ここ10数年のクルマの値段の上がりっぷりは目に余る上、このところ価格改定に次ぐ価格改定で値上げが続き、なお高騰中だ。

半導体不足による納車遅延や値上げはいったんの落ち着きを見せた感があるが、こんどは原材料や輸送費の高騰ときたものよ。
それが車両価格に転嫁され、「クルマも買いにくいなぁ」が今後も続く気配だ。
いや、「買いにくい」どころか「もう新車は買えないヤ」というひとが増えるような気がする。

そうでなくとも安全デバイスの充実などで価格が上がっているのである。
そこにイレギュラーな要因でさらに上がったのではたまったものではない。

90年代初頭、バリエーション増加やパワーモデル台頭で軽自動車が100万円を超えたとき、「軽自動車が100万円を超えるようになって・・・」という、感慨とも嘆きとも取れる声が聞かれたものだが、30年余も経ったら、軽乗用ですら乗り出しで200万円かかる有様だ。

ここで、日本を代表するカローラとアルトの、初代から現行モデルに至るまでの車両価格を表にしてみた。

どちらもいまどきの売れ筋ではないことを知っていながらカローラとアルトを持ち出したのは、カローラはモータリゼーションの火付け役にして、アルトはオイルショックで消えかかった軽自動車市場をよみがえらせた立役者であり、どちらも共通していまに続いているブランドだからだ。
この2車を責める意図はまったくなく、むしろ敬意を表すべきカローラ&アルトだ。

日産のサニーとともに、日本のモータリゼーション(自動車大衆化)の扉を開いた初代カローラ(1966年(昭和41)年)。
初代カローラの計器盤。
なくなるといわれた軽自動車市場に息を吹き返らせた初代アルト(1979(昭和54)年)。
初代アルト計器盤。

アルトは商用カテゴリーのバンでスタートして成功を収めたクルマだが、あくまでも乗用「ユース」として解釈。
そのアルトが1989年の税制改革による物品税の廃止で乗用主体になるまでの間、純乗用軽だったフロンテも併記してある。
参考までに、その後の軽乗用車像を一変させたワゴンRにもご登場願った。

それまでスズキの軽乗用はフロンテが担っていた。初代アルトにわずかに遅れて登場したこのフロンテは、この時点ですでに5代めだった(1979(昭和54)年)。
5代めフロンテ計器盤。
軽自動車の概念を一変させた初代ワゴンR(1993(平成5)年)。
初代ワゴンR計器盤。

この表では主に各車の最廉価モデルの価格を入れたが、暮らしが豊かになるにつれ、カローラもアルトも装備充実機種が売れ筋になってくるから、ある代は量販機種の価格も入れてある。

歴代カローラ、最廉価&量販機種の価格表。
歴代アルトと5~7代目フロンテの、最廉価&量販機種の価格表。
歴代ワゴンR、最廉価&量販機種の価格表。

さて、ここから何が見えてくるか。

長い間、「自動車の値段と卵の値段は上がらない」というのが通り相場だった。
少し前、卵の価格が上がってスーパーから姿を消し、その神話も崩れたばかりだが、この表を見てのとおり、自動車の値段は、カローラもアルトも初代の時代から順調に上昇している。

なぜ「上がらない」が通説だったのか。
「上がらない」のは、車両サイズや重量増、装備の充実分ほどに価格が上がっていないという意味だ。
その充実ぶりをふり返ってみよう。

税制改革を引き金にエアコンが標準化

まずは90年代初頭のエアコンの標準化がある。

一部例外はあったが、新車にはもともとヒーターしかなく、ヒーターとクーラーを統合したエアコンは、販社オプション品から選んでつけるものだった。
というのも、税制改革で消費税が導入される前の1989年までは、車両価格に物品税が含まれていた(5ナンバー車 18.5%、3ナンバー車 23.0%、軽乗用車 15.5%)。
物品税は車両が製造工場から出荷された時点でかけられる税だから後付けのエアコン(だけではないが)には課税されず、エアコンはクルマが販社に届いてからつけるほうがお得だったのだ。
物品税廃止と引き換えに導入された消費税になると、エアコンをつけるのが製造時、納車時関係なく消費税がかかるため、だったら初めっからつけちまおうということで(?)、90年代初頭から、大衆車やミドルクラスの上位機種から限定的に標準化され始めた。
車両製造時に組み付けることで、結果的に安くする狙いもあったろう。

ここで思い出されるのが1991年の7代目カローラだ。
バブル時代だけに、カローラの売れ筋はSEシリーズに移っていたが、カローラ価格表を見ると、6代目登場時1987年に129万9000円(5MT)だった売れ筋「SEリミテッド」の5MT車は、1989年4月の物品税廃止・消費税導入で、物品税分ほどでないにしろ、いったん114万7000円に下がった直後、翌月5月末のマイナーチェンジで内外変更、エンジンのEFI化(5A-F → 5A-FE)などで117万2000円になり、そのままモデル末期まで続いている。
6代目の販社エアコンは、オート式が18万1000円、マニュアル式が15万5000円だったが、末期型にオートエアコンをつけると117万2000円 + 18万1000円で、単純に135万3000円になる勘定だ。

6代目カローラ(1987(昭和62)年)。
6代目カローラのリヤビュー。
6代目カローラ計器盤。内装はマークIIを思わせるほどの豪華仕立てになった。
A/Cボタンのない、6代目カローラの空調パネル。

その2年後の1991年6月にフルモデルチェンジした7代目では、最多量販「SE-L」(と「SE-G」「GT」にも)にオートエアコンを標準化。
バブル期開発のクルマだけに品質も史上最高になったものだから、値札の数字も139万8000円(5MT)とお高くなった。
不運だったのは、発売されたのがバブル崩壊後だったことだ。
標準装備のオートエアコン代はわからないが、サイズ増と装備充実分、エアコン性能アップ分を加味すれば順当な価格なのだが、それを忘れて見かけ上の数字だけで判断されたものだから「カローラも高くなったわな」となり、6代目末期に比べて販売台数は落ち込んだ。
比較対象となる直前6代目後期が前期と比べて13万円弱安く、7代目との差額がよけいに広がって見えたのもまずかった。
不況の訪れでみな財布の紐をシメてかかっていたこともあり、新聞では「新型カローラ不振」が叫ばれたものだ。

カローラ史上最大の品質を引っ提げ、サニーやシビック、ミラージュ/ランサーには実に迷惑な存在になった7代目カローラ(1991(平成3)年)。
7代目カローラリヤビュー。写真ではわかりにくいかもしれないが、豊かな面を持つスタイルは、すぐ上のコロナ/カリーナまでもがしっぽ巻いて逃げるほどの仕上がりだった。 このカローラの外観写真は、最多量販機種のSE-L。
内装もコロナ/カリーナが青ざめる出来。これはSE-Lよりさらに上のSE-G。筆者は「やりすぎカローラ」と呼んでいる。
7代目のSE-L、SE-G、GTの3機種に、オートエアコンが標準化された。

お話戻して80年代後半あたりからは、それまで上級機種に限られていたパワーウインドウやパワーステアリングなど、ドライバーや乗員にラクをさせるデバイスが大衆車寄りにも広まり始め、安全分野ではオプションながら運転席エアバッグやABSが導入され始めた。

その後エアバッグに助手席用がプラスされ、エアコンやABSなどがどのクルマにも標準でつき始めたのは、90年代後半から2000年代初頭にかけてだったと思う。
カローラでいうと、最廉価モデルの「1300 X」でもみすぼらしさが消え、全機種パワーウインドウやパワーステアリング、14インチタイヤ、ABS、デュアルエアバッグなどの全機種標準化を果たしたのは、スタイル、パッケージで大変革を起こした、2000年のニューセンチュリーバリューの9代めのときだ(営業用途の「1300 X アシスタパッケージ」を除く)。
その代わり最廉価モデルとしては値段が高くなり、1300 Xで122万3000円、営業ユースの1300 X アシスタパッケージですら112万3000円(いずれも5MT)に・・・100万円未満のクルマがなくなった9代めカローラだった。

カローラ革命を起こした9代めは「ニューセンチュリーバリュー」がコンセプト(2000年(平成12)年)。写真は最廉価1300 X。
1300 Xのリヤビュー。同じ最廉価機種でも、過去カローラの1300カスタムDX(デラックス)のようなみすぼらしさは、この代からなくなった。
それは内装でも同じ。

しかし、これらが標準化されても、オプション選択で足し算して購入した場合ほど車両価格は上がらなかった。
量産による効果だろう。このへん、自動車メーカーの努力を称えるべきだ。

これが2010年あたりになると、以前なら高級車に限っていた先進安全デバイスというやつが普遍的なクルマにもあたり前に、あるいは義務化によってどんどん足し算され始める。

思いつくだけ挙げてみると、自動ブレーキ、トラクションコントロール機能を包含する車両安定制御装置、カーテンエアバッグやサイドエアバッグ、アダプティブクルーズコントロール、車線逸脱抑制装置、急発進防止装置、バックモニター・・・これらの中には、いつしか義務化されたものもある。

車線逸脱警報(のランプ)。写真は現行アルトより。
アダプティブクルーズコントロール。写真は現行ステップワゴンのもの。
バックモニター。写真は現行エクストレイルのものなので、日産名・アラウンドモニターだ。

安全デバイスにとどまらない。
ハイブリッド技術、多機能化したエアコン、多彩表示の全面液晶メーター、LED化した前後のランプ・・・あれこれ挙げていったらきりがないが、この趨勢に耐え切れず、かろうじて100万円を切っていた良心の塊・現行アルトの最廉価モデル「A」も2023年の改良でとうとう100万円を超えてしまい、さらに値上げした先日6月23日の改良では受注生産扱いになった。

全面が液晶となるメーター。こちらも現行エクストレイルのもの。ACCほか、安全デバイスの作動状態など、多彩な表示をするには全面液晶が有利なのはわかる。
2021年の登場時は94万3800円だったアルトAも・・・
2023年11月の改良で106万4800円となり、最廉価アルトも100万円を超えた。先日2025年6月23日の改良でアルトAのみ受注生産となり、値段もさらに上がって114万2900円となった。スズキはこの記事が出るのを予測していたかのようなタイミングだ。

この流れを踏まえて、先に掲げた価格表のうち、各世代登場時の最廉価モデルの価格だけ棒グラフにしてみたのでごらんいただきたい。

特にカローラなんて、90年代初頭から装備が充実し始めても価格の上昇はゆるやかで、安全デバイスがつき始めた2000年の9代めあたりから線の勾配が急になり始めていることがわかるだろう。

安全装備が充実し始めた2000年代初頭から、価格上昇が顕著になっている。

高額装備のオプション化はできないか?

やたら増えた安全デバイスも安全のためといわれると声を挙げにくくなるのだが、それにしても、サイズ、重量、装備各種・・・いまほどのものにしないといけないのだろうか?

ユーザーが要望しているとメーカーが勝手に思い込み、何でもかんでも、使用頻度の低いものまでをも取っつけ、無用に価格を吊り上げているのではあるまいか?
また、ここまで便利にしなきゃユーザーは納得しないの? と思うものもある。
本当に価格を下げる余地はないのか?

いまのクルマを、目を凝らして見て、「これは要らないんじゃない?」「こんなものいいから、その分安くして」といいたくなる、筆者独断のいまどきデバイス・装備を掲げてみる。

1.アルミホイール

筆者が不要と思っている外観装備の筆頭なので1番に掲げた。

「アルミは軽量でばね下重量軽減効果がある」とか「熱伝導に優れているのでブレーキの放熱性がよい」など、いろいろいわれているが、そんなのは同じクルマ同士、ホイールだけ鉄製とアルミ製を取っ替えて走り比べて初めて分かるもので、実際にはそんな比較をすることなどなく、アルミホイールなんて自動車メーカーがいい儲けの対象として標準化しているに過ぎないと私は思っている。標準化せず、見た目に惹かれたひとだけオプションなり社外品なりから選べばいいだけの話で、鉄製で充分だと思う。

いま筆者が使用中の旧ジムニーシエラのアルミホイール。モノグレード構成の上、標準装備なので鉄ホイールを選びようがなかった。

2.タイヤの大径化、極太化およびロープロファイル

なんだって最近のタイヤは径が大きくなるのかと疑問だったが、考えてみたら、ドラえもんのビッグライトを当てたようにボディが大きくなっているのなら、つられてタイヤだって大きくなるのも当然だった。

タイヤ径を大きくすると乗り心地が良くなるものだが、そうはいっても乗り心地なんてタイヤだけでなく、サスペンションやボディ、シートとの相乗効果で決まるのだから、むやみに大きくすることはないだろう。
ただ元来、車体サイズや重量、他もろもろとのバランスで決まるものであり、車体が大きくなればタイヤも大きくせざるを得ないのだろうが、こう考えると、タイヤのサイズ増は車体サイズ肥大化とつながっていることがわかる。

大径化や極太化で困るのは大きくなるほどタイヤ価格が高くなることで、交換時期が訪れると頭が痛くなる。

庶民派向けは、タイヤ径は大きくても15~16インチ止まり、太さはせいぜい195mmまで、ロープロファイルもせいぜい60~65%まで! にとどめて安くし、そこから先は普遍性のない高性能スポーツカーなど、趣味的グルマに限ってほしい。
クルマの価格が上がっているのだ、維持費まで高くなるようなことをしてはいけない。

現行CX-60のアルミホイールとロープロフィールタイヤ。買うと高いんだ、このサイズは。

3.3ナンバー車体

衝突安全対応で、ついぞカローラも現行型から3ナンバーサイズになり、併売していた旧5ナンバーカローラも秋にはいよいよ姿を消す。

1989年の物品税廃止を含む新税制導入で5ナンバーと3ナンバーの差がなくなり、以来、タガが外れたようにみんなで拡幅しまくって35年と余。
省エネ・省資源を叫ぶ割に「衝突安全がどうの」を理由にモデルチェンジのたびボディを肥大化し、使用材料の量を増やしているのは矛盾だろう。
加えてグローバル化を謳い、国内市場よりも海外市場を大きく睨むことででもボディを大きくしているが、日本だってグローバルのうちじゃないでしょうか?

大きいクルマを否定はしないし、抵抗のないひとは3ナンバー車を選べばいいのだが、クルマのユーザー全員が全員、デカいクルマを求めているわけじゃない。
どうかガラパゴスだなんていわず、せめて軽自動車からのステップアップ組をはじめとする一般庶民のために、価格を抑えた、手の届きやすい5ナンバーサイズのクルマをもう少し増やしてしかるべきだ。

現行型でついに3ナンバーボディに拡幅した現行ヴォクシー。

4.充電制御、アイドルストップ

一部例外はあったが、かつてのクルマはバッテリーの電気が満量であろうと何だろうと、オルターネーター(発電機)はおかまいなしにまわりっぱなしで、クルマが走っている間じゅう充電作業に勤しんでいた。

バッテリーは人間の腹8分目と同じで、充電量は80%がベストとされている。
なのにエンジン回転を駆動源とする発電機がまわりっぱなしじゃあ燃費に影響するというわけで、電気が減ったらその分だけ発電して補い、充電量80%を維持する制御が採られるようになった。
必要な時に必要なだけ充電し、それ以外のときは発電機を休ませて燃費を抑制しようという狙いだ。

いっぽうのアイドルストップは、信号待ちなど、クルマが停止しているときにエンジンをまわす(アイドリング)ことほど燃料のむだ使いはないだろうということで、ある条件が揃ったとき、クルマの停止時にはエンジンを停めるデバイスが採り入れられるようになった。これがアイドリングストップだ。

バッテリー保護のためにもよさそうだし、燃費も抑えられるから、一見いいことずくめに見えるが、アイドルストップはエンジン停止頻度が増えれば再始動の頻度も増えるわけで、バッテリーにもスターターモーターにも負担がかかる。
ならばバッテリーだってスタートモーターだってそれなりに強化したものでなければならない。

実際には充電制御用とアイドルストップ用のバッテリーは同じ製品として売られているが、こいつがまた高いのだ。
以前だったら、カー用品店自社ブランドのバッタもんが5000円ほどで入手できたのに、充電制御用になっただけで3万近くする。

となると何のことはない、平素の浪費抑制で儲かったガソリン代が、3~5年後、高くなった交換バッテリー代にまわるだけのことで、支払先が石油会社からバッテリーメーカーに変わっただけのことである。
節約したガソリン代と高額バッテリー代の差額を天秤にかけたらどれほどのありがたみが実感できるのか?
厳密に計算したら、むしろバッテリー代の方が上まわっているだろう。

最近アイドルストップを搭載しないクルマが増えたのはいいのだが、充電制御はついているので、結局は高いバッテリーを買わざるを得ない。
排ガス抑制、地球保護という大義名分はわかるのだが、これがユーザー個々の大きな出費につながるのなら、充電制御もありがたみは薄い・・・のだが、いまさらどうしようもないのかなぁ。

筆者が前に使っていた2008年型ティーダのバッテリー。充電制御がつくため、バッテリーも自分で買えば2万5000円もする。4桁で変えた時代を知る者には高くなったとしかいえない。写真右端に見えるマイナス端子の黒い箱が、バッテリーの充電状態を監視するセンサーだ。
充電制御するティーダのオルタネーター。
それに引き換え、旧ジムニーシエラには充電制御がないから、ただのバッテリーですむ。税込みで8000円台に踏み込むくらいの値段で変えた。ラッキ~♪。
何にも考えないで発電するオルタネーター。それでいいのだ。

5.ランプのLED化

省電力で明るく長寿命、発生熱量が低いというが、本当にそうだろうか?
その割に片方のヘッドライトが消えていたり、テールランプがちらついているクルマを見かける。

住宅用LED照明もそうだが、不点灯を起こした場合、たいていは裏の基板回路が熱でヤラれている。
もちろんLED素子そのものが外れダマの場合ももある。
省エネ・長寿命が謳い文句なのに、話が違うじゃないかというわけだ。

LEDライトは、雪国ユーザーがライト熱で雪が溶けなくて困るほど発熱量が低い代わり、光源手前の基板で熱が発生している。
品によってはさらにその手前でレジスタのような放熱板を設けているものもあるだろう。

つまりLEDがハロゲン球に比べ、光源での電気の消費量や発熱量が低いのは、熱の発生場所が光源部から基板部or放熱部に移っただけだからで、クルマの電源が12Vである限り、光源が何だろうと全体では省電力にはなっていないのではないだろうか?

いまのクルマのヘッドライトはコントロール基板と一体になっているし、後ろのリヤコンビランプまでLED化。
ハイマウントストップランプだって義務化されたから、基板やLED素子ひとつが切れたらまるごと交換を強いられ、出費が高くついてしょうがない。
というのも、素子切れは電球の球切れと同じで整備不良となり、車検をパスできないのだ。
色塗りバンパーの表面傷をがまんすればすむのとは話が違う。

前にいる車両やひとに幻惑させないハイビームなど、電球ではできないことをやってのけるLEDライトもあるが、それとの引き換えに、ただでさえ高く、故障時・損傷時のまるごと交換で何十万単位の出費を強要されるなら数千円のハロゲン球や、数百円の電球で充分、きれいなLEDはオプションにしてほしい。

クルマに限らず、世の中の照明のLED化は、どうも騙されているような気がしてならない。

フルLEDのヘッドランプ。写真は現行ステップワゴン。
現行eKワゴンはハロゲンランプだ。故障や損傷のことを思えばこれでいいのだ。

6.ボタン押しのエンジンスタート

かつてキーを挿して行っていたエンジンスタートは、いまはボタンひと押しで行なうようになっている。

キー時代は手動によるシリンダー操作でハンドルロックがかかるようになっていたが、ボタン式だとこれがモーター駆動の電動式になる。
スタート・停止ごとにエンジン始動・停止、ハンドルロック・アンロックを一手に引き受けるのだ。

これも故障すると厄介で、ステアリングロックを働かせるモーター不具合でエンジン始動不可になるリコール例もある。
リコールならまだしも、車齢が上がっての保証外故障となると、ユニット交換にざっと10万近くかかるのが考えものだ。

表には出ないが、走行中にハンドルロックが誤作動する例も・・・ハンドルロックは正立でなく、左右どちらかに向いた状態でかかるが、これが走行中「ガツッ!」と誤作動すると、車道からはみ出て回避することもできなくなる。
これが低速走行時ならまだしも、幹線路の右左折や車線変更時に起きようものならどうなるか、考えるだけで恐ろしい。

現行eKワゴンのエンジンスタートスイッチ。
いまのカローラクロスのハイブリッド起動スイッチ。

キーレスは便利だが、その操作は初期のキーレスのように、ノブまわしでいいじゃないか。

旧ジムニー シエラのキースイッチ。これでいいのだ。

7.電動パーキングブレーキ

レバー引き上げやペダル踏みで制動させるパーキングブレーキが、モーター駆動による電動式に変わり始めて長い。
ACC(アダプティブクルーズコントロール)装着車にとっては渋滞時などでの停止保持に都合がいいこともあるし、電子制御ゆえ、ATのクリープ現象でも下がるほどの急坂での坂道発進時には制動キープ、させておいてアクセル踏みで自動解除させるという使い方もできる。

ただ、これも従来より高いのは明白だし、故障すると厄介で、アクチュエーターの作動不良で電動パーキングが使えなくなったという事例もあるのと、既存のブレーキ付近にあるアクチュエーターの形状次第では、社外品のアルミホイールと干渉して取り付け不可になるとか、気づかず履かせて走り始めて損傷させるといった、手動操作式では思いもしなかった不具合が起きる場合もある。

手足の操作力次第で変わる制動力のばらつきと無縁なのは大きなメリットだが、不具合時の修理(というより、いまやユニット交換だろうが)費用が高くつくのも手動式に対するデメリットで、これも何とかならないものか・・・

現行初期のカローラクロスの電動パーキングブレーキスイッチ。やたら複雑で高いものにしないでほしいのだが、ACCの停止保持機能のためにはkちらのほうが都合がいいようだ。
旧ジムニー シエラのパーキングブレーキは旧弊なレバー式だ。

そうそう、坂道発進で思い出した。
高齢者による暴走事故が多発している。
このニュースが報道されるたび、「AT車なのも暴走の原因。高齢者はクラッチ操作の要るMT車にすべき」という声が必ず挙がるが、安直な考え方だと思う。

AT車で暴走させてしまう可能性のあるひとが、MT車で坂道発進をスムースに行なえるとは思えないからだ。
ヒルホールドがあるといわれそうだが、これもクルマによって数秒で解除されたりされなかったりで、暴走予備軍がこういった細かい仕様を理解しながらクルマを使うだろうかとも思う。
仮に「高齢者はAT禁止、MT限定!」にしたところで、坂道発進時、前のクルマがずり下がっておれのクルマにごっつんこという別の事例が多発して社会問題になることだろう。

8.オートエアコンおよび見てくれ重視の操作パネル

筆者は自動エアコンのクルマを3つ使い続けた後、いまはダイヤル操作のマニュアルエアコンのクルマに乗っている。
これまでクルマ任せにしていた温度の上げ下げ、風の強弱は手で行なうことになったが、特に不便は感じない。

それに引き換え、オートエアコンのパネルは見るからに高そうで、見た目もスタイリッシュだ。
見映えがいいのはけっこうだが、この手動操作のありなしを天秤にかけると、これほどのものが要るかね? とも思う。
操作時にちょい手を伸ばせばいいだけのことだけだから、これもオプションにとどめ、操作も構造も簡単なマニュアルタイプでいいのではないか。

ボタン操作のパネルは、裏側にある風の流路切り替えにサーボモーターが必須になり、故障時の修理費用が高くつくほか、ファン用はともかく、サーボモーター分の重量増にもなる。
手動操作のパネルならワイヤーとロッドだけだから、壊れたときも修理費用は安い。
別のクルマに乗っているとき、電気操作の空調パネルが故障で使えなくなってどえらい目に遭ったことがある。

オートエアコンも自動にしておけば、コンプレッサー稼動と燃費のバランスを考えながらクルマ自ら快適にしてくれるというメリットがあるが、ならば低燃費性がどれほどかというと実感はない・・・これもやはりオプションでいいんじゃないかなぁ。

これはCX-60の空調パネル。すべてがボタン式だ。
一部操作がダイヤルノブになっていくらか使いやすい、いまのステップワゴンの空調パネル。リヤエアコンもここで操作する。
旧ジムニーシエラの空調パネル。ダイヤルノブとレバー併用で、動かすと裏からガフガフ音がするし、すべてが手動操作だが、別に不便は感じない。
2021年アルトAの空調パネル。クルマの空調操作なんてこれでいいのだ。

9.コネクティッド技術

いまはクルマ自体通信機能を備えていて、何らかのやり取りが外部と行えるようになっている。

衝突事故やあおり運転をくらって救助を求めたいとき、SOSボタンを押せば、携帯電話やスマートホンを家に忘れたって、助けを求めることができる。

事故や急病で気を失い、無操作時間が続いたらクルマが自動で救助通報してくれるのもコネクティッド技術ならではだ。
ナビ機能や車両機能のアップデートも通信機能で事足りる。

ただ、これが車両価格押し上げの大きな要因になっている。

これら便利機能とてあくまでも表向きのもので、筆者は、この機能を搭載したがる自動車メーカーの大きな目的は、クルマの使われ方や履歴・・・ビッグデータの収受ではないかと思っている。
個人情報の悪用はしていないと思うが、クルマの使用形態を得ることで、今後のクルマの開発に役立てようとしているのではないかというわけだ。

それ自体否定はしないし、緊急時の救助要請のためなんていわれると、これも声高に叫びにくいのだが、われわれからすれば、こんなに車両価格が上がるような自動通信デバイスを求めた覚えがないし、他車やネット世界と「つながりたい」と望んだ覚えはない。オプションにすると選ぶひとが少なくなるから否応なく標準化させているのだろうが、このへんどうもしっくりこない。

ステップワゴンのコネクティッド画面。

×     ×     ×     ×     ×     ×     ×     ×     ×

ここに掲げたのはいずれも過去にはなかったもので、使えば便利なものばかりだ。
いまさらなくせないものも少なくない。
ただ、クルマの値段が上がったり、故障時の修理に費用がかかったりするなら、こんなの要らないよといいたくなるものばかりでもある。
これらがなかった頃に戻るだけのことだから、ならば値段を安くしてくれたほうがありがたいと考えるユーザーだって多いんじゃないか?

自動ブレーキやLEDランプなんて、どう見ても量産効果による低価格が実現しそうにない。
例えば電球は取り付ける口金によって種類はあるものの、メーカーを超えて共通に使えるようになっているから安い単品価格で手に入れることができる。

ところが、LEDランプや自動ブレーキとなると車両個別に専用設計しなければならないから、最多でもそのクルマの生産台数ぶんしか造ることができず、したがって量産効果も期待できない。

いまさら取っ払うことなどできないだろうから、ならばせめて、従来品ですむもの、メリットの実感に乏しいもの、見映え重視だけのものはオプション化し、ユーザーごとに変わる要否選択の余地を残してほしい。

メーカーサイドにも造り手ならではの事情はあろうが、このあたりを考え直すことでいまよりいくらかでもクルマが安く変える可能性が生まれてくると思うのだ。

今回、9点を例に掲げたが、中には私が忘れているものがあると思う。
また、みなさんが首をかしげたり、困った思いをしているものが他にあるかも知れない。
「こんなのもあるヨ」というあなたの「?」がありましたら、ヤフーのコメント欄で教えてください。

と、ここまで「値段が高い」だの「装備が過剰」だのいろいろ書いてきたが、クルマが買いにくい、自動車メーカーからすると販売台数が増えないことの要因は、もっと別のところにあると思っている。
たぶん察しのいい方はお気づきだと思う。
だからといって次のテーマを先回りしてコメント欄に書かないように・・・あ、いや、書いちゃってくれてもいいヤ。

というわけで、続きはまた別の機会に・・・

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