目次
試乗コースは2つ!まずはトラクターヘッドで取り回しを体験
今回の試乗コースは、ふたつ。まずはトラクターヘッドのみで、カーブの多いショートコースを走ることで、取り回し性を確認するもの。もうひとつが、外周路での直線加速と搭載されるADASの体験である。


トラクターヘッド単体だけといっても、全長6mにも及ぶ巨体な上、着座位置は自身の身長を大きく超える2.5mほどの高さになる。それだけに運転席からの視界は、絶景と言っても良い。普段接することのある大型SUV、メルセデス・ベンツGクラスやランドローバー・ディフェンダーでも、この見晴らしの良さは味わえない。まさに特等席といったところ。


前回も記したが、着座位置が高いもののドラポジはワンボックスと変わらないものなので、合わせやすい。まずはトラクターヘッドのみで走行する。コーナーの多いヒョウタン型のようなコースなので、しっかりとトラクターの取り回し性を体感できるというわけだ。

ただコース幅は、車両1台が通行できる分しかないので、30km/h以下のゆったりとした走行となる。しかし、全長6m、ホイールベース3.5mという巨大さだけに、コースのトレースに少しは苦労すると思いきや、良い意味で裏切ってくれた。とても運転し易いのだ。

乗車位置の高さと視界に優れた広いガラスエリア、そして、ドライバーが車両の前よりに位置するキャブオーバー構造による恩恵で、車線が追いやすいのである。特に低速走行だと、道路への視線は見下ろすようになるのだが、それにさえ慣れてしまえば、操作自体は乗用車と変わりない。

強いていえば、大きめのステアリング操作への慣れが必要な程度。だから、大きな舵角が必要な際には、乗用車のものとは、持ち換えのタイミングが異なる。短い時間とはいえ、無事、脱輪することもなく、走り切ることができた。

高速周回路では積載重量20トンのトレーラーを牽引体験
高速外周路を使った走行では、最大60㎞/hでの加速とパイロットアシストなどのADAS機能を試すのが目的。今度の車両には、後部のトレーラーを接続する。荷台に荷物を積んだ状態で、その重量は、なんと20トン。そのため、車両総重量は33トンにも及ぶ。多くの普通乗用車の重量が2トン前後に収まるので、10倍以上となるわけだ。まさに子供と力士を比べているようなものである。

発進のために、アクセルをゆっくりと踏み込む。発進時こそ、20トンの荷物の積むトレーラーの存在を感じさせるが、加速と共に、その存在を忘れさせるような滑らかな走りとなっていく。さらに直線で加速性能試すべく、アクセルを全開にする。最高出力551ps/最大トルク2652Nm の13.0Lディーゼルターボエンジンが低い唸り音を挙げ、ちょっと強めの変速ショックを感じつつ、シフトアップを繰り返し、速やかに60km/hに到達する。乗用車の全開加速と比べれば穏やかなものだが、こちら33トンの重量物である。その走りには、なんとも表現しがたい迫力に満ちている。

乗り心地に関しては、かなり良好だ。路面がフラットなこともあるが、サスペンションにエアサスが使われるだけでなく、ドライバーズシートに自体にサスペンション機構があるため。これも乗車位置が高いトラックならではの機能といえるだろう。

コーナーを目前に30㎞/h以下まで減速。やはり、ブレーキはよく効くが、こちらもペダルフィールは、エアブレーキであるため、乗用車とは異なるが、軽やかで操作しやすいもの。サイズが大きい大型トラックだけに、公道では様々な配慮が必要となるが、運転に集中できるクローズドコースでは、大きさを忘れさせる運転のしやすさに、クルマとしての完成度の高さを感じさせる。

2024年モデルと2025年モデルで最新の運転支援システムを体験
ADASの進化を体感すべく、外周路では、2024年モデルと2025年モデルを比較した。2024年モデルまでは車線逸脱警報までであったが、2025年モデルでは、車線維持支援機能「レーンキーピングアシスト」が装備されるように。これは乗用車同様に、車線を逸脱しようになると、ステアリングアシストが入るものだ。

実際に、直線路で車線逸脱をさせようとすると、警告と共に緩やかなステアリングアシストが入り、車線逸脱を抑制してくれた。特に全長の長い大型トラックでは、車線逸脱時に他車を巻き込む危険性も高いため、安全運転への効果は大きいはずだ。

もうひとつの先進安全運転支援機能の目玉が「パイロットアシスト」だ。こちらも乗用車同様、ACC作動時に車線内を走行するようにステアリングアシストを行う自動運転レベル2の機能である。機能の設定は5㎞/hから可能で、作動領域は0㎞/h~90㎞/hとなっている。

今回は車線内のトレース性の良さを体感すべく、より厳しい走行環境となるコーナーを30km/hで走行してみたが、牽引するトレーラーを含め、車線内にしっかり収まるようにステアリングアシストを行うことに驚かされた。

長距離移動が基本となる大型トラックでは、横風を受けやすい直線や渋滞走行がドライバーの大きな負担となる。それを軽減できる先進機能は、安全な荷物の輸送にも大きく貢献するだろう。
ボルボとスカニアが争う日本の輸入大型トラック市場
今、日本の大型輸入トラック市場は、ボルボとスカニアの一騎打ちである。現在、販売台数では、ボルボが優勢だ。ボルボとスカニア共に、乗用車ライクな運転のしやすさを持ち味とするが、ボルボがリードする理由のひとつに、強固なサービス体制があることも、今回の取材で分かったことのひとつ。

日本では国産メーカーのUDトラックスが販売しているため、その基盤を活かした全国規模の整備ネットワークを持つのだ。プロを支える道具だけに、メンテナンスも重要な要素なのだ。もちろん、価格面では、国産トラックに比べると、輸入車の方が断然、高価。それでも優秀なトラックドライバーからは熱烈な支持がある。それは単にカッコよさや装備の豪華さだけでなく、クルマの基本である運転のしやすさにあることを試乗で実感できた。

限られた時間とはいえ、巨大なボルボFHとのひとときは、濃厚なものだった。正直、もっとテストコースを周回していたかったというのが本音だ。というのも、運転も乗用車とは異なる楽しさがあるからだ。ボルボなどの北欧トラックたちには、日本製トラックにない魅力があるのは間違いない。

ただ日本人として、国産トラックにも期待する部分は大きい。幼い頃に、街中を元気に走り回る国産大型トラックの姿は、実にカッコよかったし、今もスタイリングでは見どころがあるモデルも多いからだ。乗用車同様に、輸入車を良きライバルとして、更なる進化を期待したい。