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毎年5月に開催されるフィアット・パンダのオンリーミーティング
“鬼才”ジョルジェット・ジウジアーロ氏の手により1980年に誕生したフィアット・パンダは、誕生から45年が経過した現在でもイタリアを代表する傑作小型車として世界中の多くの人々から愛され続けている。もちろん、ここ日本でもそんなパンダを愛してやまない人たちがいる。そんな彼らが年に1度、5月末に集まって交流を深めるオンリーミーティングが「パンダリーノ」だ。

2008年に第1回が開催され、今回で16回目を数えるこのミーティングは、例年通り静岡県浜松市にある渚園キャンプ場を会場に5月24日(土)と25日(日)の2日間に渡って開催された。今回集まった台数は約300台。

オンリーミーティングなので基本はパンダでの来場が前提となるが、過去にパンダでこのミーティングにエントリーした元オーナーも参加がOKなので、チラホラと他のメーカーも見かけるが(イタリア車とフランス車だけで国産車はゼロ!)、それでも会場に並んでいるクルマの95%以上がパンダとなる。ナンバーを見ると北は青森、南は大分からの参加もあり、北海道と沖縄を除く全国からパンダオーナーが集まった。
根強い人気に支えられてエントリーの半数以上が初代モデル
エントリーしたパンダのうち半分以上が初代モデルでもっとも多く、2代目は20台ほど、残りが3代目となる。

かつては「イタリアの国民車」と称され、彼の地で1980~1990年代に自動車免許を取得した人は、このクルマで運転を覚えたとされるほど普及した初代モデルだが、生産終了から20年以上が経過し、昨今では部品の入手性がかなり悪くなっている。それでもジウジアーロ氏による合理的な設計、個性的で愛くるしいデザインなどは、他のクルマでは替えが利かず、今なおこれほど多くの人に愛されているのだ。

最新型の3代目の台数が多いのは当然として、2003~2012年まで生産された2代目のエントリーが少ないのは、キープコンセプトの3代目が存在することに加え、パーツの一部に欠品が出始めていること、経年劣化により搭載するデュアロジックの新品への交換などの重整備が必要な時期に差し掛かっていることが影響しているのだろう。

近年では2代目パンダを街中で見かける機会がすっかり減り、個体数そのものが大きく減少しているようだが、この世代のパンダには、イタリアの高級雑貨店とのコラボによるパンダ・アレッシィや、100psを叩き出す1.4L直列4気筒DOHCを搭載したスポーツモデルのパンダ100HPなどの魅力的な限定車が存在する。会場でベースモデルを見かける機会は少なかったが、これら個性的な限定車の占める割合は大きかった。

ユーラシア大陸を横断したパンダをはじめ、希少なモデルも多数エントリー
また、会場には日頃なかなかお目にかかれない珍しいモデルのエントリーもあった。2024年の『さいたまイタフラミーティング2024』でもリポートしたころパンダさんのハーフ・バン仕様(乗用モデルの初代パンダのリアハッチを撤去し、観音開きのリアドアを持つバン・キットを装着した車両)のほか、スペインでライセンス生産されたフルゴネット(商用車)のセアト・パンダトランス、EVにコンバートされた初代パンダ、初代パンダ初期型の45などの珍しい車両もあった。


その中でも極めつけは、2023年にイタリアから1万9200kmを走破し、14カ国を旅して来日した「パンドゥーマ」(ファブリッツィオさんとサルヴォさん)の初代パンダが特別に展示されたことだ。この車両は昨年7月に名古屋に到着し、旅費の問題から帰国は延期となった。パンドゥーマのふたりは飛行機で一時帰国するにあたって、同地にある『チンクェチェント博物館』に預かってもらったというわけだ。

外国人旅行者が一時輸入した車両の国内滞在期限は1年。その期限が近づいたことから、6月末に日本を離れることになったのだ。そこで帰路に着く前に日本のパンダファンのためにパンダリーノの会場でパンドゥーマの車両がお披露目されることになったのである。
ステージイベントやスワップミート、ケータリングとミーティング以外の催し物も充実
今回、筆者はイベント2日目のミーティングだけを取材したのだが、イベント自体は前日のキャンプから始まっており、夜には実行委員会テントで催し物も行われたようだ(前日はあいにくの悪天候となったので、どのようなカタチで行われたのかはわからないが……)。もちろん、訪れた日も開会式に始まり、パンダ座談会などのステージイベントが開催され、大変な盛り上がりを見せていた。

パンダ座談会では、今年4月の『オートモビルカウンシル2025』にパンダの生みの親であるジウジアーロ氏がスペシャルゲストに招かれたこともあって、同イベントに実行委員のmeganeさんが訪れたときの様子が語られた。

ジウジアーロ氏は2010年のパンダ生誕30周年、2017年のパンダリーノ10周年の際に実行委員会と交流があり、今回のパンダリーノのために氏はメッセージとサインを寄せてくれたのである。

また、パンダリーノは企業出店やケータリング、スワップミートも充実している。企業ブースでは欧州専門のパーツやグッズ販売のFLAT OUTや欧州小型車に強いガッティーナ、イタリアのヴィンテージ自動車雑貨のMISCELA、オイルメーカーのユニルオパールなどが出店し、ケータリングはカレーの大野屋とガッティーナがカレーなどの軽食を販売していた。

そして、スワップミート会場では、筆者が『月刊モトチャンプ』時代にスーパーカブのパーツ提供を受けたCubyが参加していた。聞けば、最近はカブだけでなくフィアット車のパーツも取り扱っているとのことだ。

多くのファンを惹きつける日常生活を豊かにするフィアット・パンダの魅力
フィアット・パンダというクルマは、同じフィアットのコンパクトカーの中でもファッション性を強調したパーソナルカーの500とは違い、人や物を大量に詰め込んで日々の生活をともにする実用車だ。だが、日常生活の中でもオシャレに気を使うイタリア人が作ったクルマだけあって、シンプルで小さなクルマでありながらも、他にはない個性を持ち、チャーミングで、一緒に生活を共にしているとそれだけで生活が楽しくなる。

パンダはけっして速いクルマではないし、装備も必要最低限なものしかなく、ステータス性のかけらもないクルマかもしれない。だが、そこが良いのだ。このクルマの魅力は、余計な装備がたくさんついたトヨタやホンダあたりのオーバーデコレーションカーに乗って満足しているような俗人にはけっしてわからないだろう。何が自分にとって必要なのかということを熟知し、背伸びをすることなく、今の生活を大事に楽しめる人のみが、フィアット・パンダというエデンにたどり着けるのである。

そんなパンダを愛する人が集うお祭りだけあって、パンダリーノは誰でも気軽に参加でき、フレンドリーなイベントで、会場の雰囲気も終始和やかなものだった。残念ながら筆者はパンダを所有したことはないのだが、そんな筆者ですら仕事を忘れて楽しんでしまった。おそらく、パンダのオーナーならさらにミーティングを楽しめたことだろう。

なお、実行委員会では2025年10月5日(土)と6日(日)の2日間、滋賀県長浜市にある「ウッディパル余呉」フリーサイトにて『秋のパンダリーノ2025』の開催を予定している。すでにエントリーは募集しているようなので、興味のある人は公式HPにアクセスしてほしい。なお、なお、今回のパンダリーノにエントリーした車両の紹介は次回から行なう予定だ。



































