マツダCX-5 フィールドジャーニーとスポーツアピアランス 大幅商品改良で魅力アップを果たしたか?

マツダCX-5 XD Sports Appearance(2WD) 車両本体価格○367万4000円
マツダの主力SUVであるCX-5が21年末に大幅商品改良を受けた。エクステリアデザイン、ダイナミクス性能の向上ともに、2種類の特別仕様車が追加された。Field JourneyとSports Appearanceだ。CX-5はどう進化したか?
TEXt & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

ふたつの個性 Field JourneyとSports Appearance

Sports Appearance

Sports Appearance ボディカラーはソウルレッドクリスタルメタリック

Field Journey

Field Journey ボディカラーはジルコンサンドメタリック

2017年にフルモデルチェンジしたマツダCX-5が大幅商品改良を実施したのは、2021年末のことだ。エクステリアデザインの進化、2種類の特別仕様車の追加、ダイナミクス性能の進化が、大幅商品改良の三大ポイントである。

エクステリアはフロントフェイスと前後ランプのデザインが大きく変わっている。従来のヘッドランプは他のマツダ車と共通した“丸”を強調したデザインだったが、新型はLの字をふたつ並べたようなライトが点灯する。シグネチャーウイングと呼ぶフロントグリルまわりの加飾はワイドになり、力強さを増した。デザイナーはフロントフェイスのデザインについて、次のように説明している。

「魂動デザインで大事にしてきた生命感は、引き続き表現したいと考えました。(片側2灯で構成する)ヘッドランプは、外側にロービームが入り、内側にハイビーム専用の機能を入れています。片側2灯化して4眼になったことをデザインで表現したいと思いました。外周を円弧にし、水平成分でつなげて内側もクッと上げることで、全体的に丸を想起させるデザインにしています」

Sports Appearance

Field Journey

リヤランプのグラフィックはフロントの「丸を想起させるL字」を反復させている。そのうえで、二次元的に発光するようにした。

「平面的なグラフィックにしたのは、そのほうが夜間のメッセージ性が強くなるからです。競合が強化しているなかで埋没しないよう、しっかり進化させたいと考えました」

新しくなったことがはっきりわかるデザイン変更だし、CX-5の魅力を一段と引き上げているように感じる。CX-5は初代から2代目に進化した際、一段と上質かつスポーティになって登場した。ところが、もっと上質さが欲しいという声があり、2018年11月に行なった商品改良で、「エクスクルーシブモード」という特別仕様車を設定した。

いっぽうで、「もっとスポーティなCX-5が欲しい」という声もあり、その要望に応えたのが、2020年12月の商品改良で設定した特別仕様車、「Black Tone Edition(ブラック・トーン・エディション)」である。“スポーティ”のキーワードを受け継ぎつつスポーティさ加減を強化した特別仕様車が、今回の大幅商品改良で設定した「Sports Appearance(スポーツアピアランス)」だ。シグネチャーウイングや下部のガーニッシュ、ホイールなど要所をグロス(つや消し)ブラックで引き締めることで、「成熟した落ち着きとスポーツテイストを合わせ持つ」外観に仕立てている。

Sports Appearance(スポーツアピアランス)のグリル
初代ロードスターのクラシックレッドを使う、

スポーツアピアランスはアクセントカラーに赤を用いているのがポイントで、フロントグリルに入る赤は、初代ロードスターのクラシックレッドそのものである。まめ情報をお伝えしておくと、リヤバンパーの中央部にくぼみがある。そこにも赤のアクセントカラーを入れる考えだったが、内部構造的な問題などから泣く泣く見送ったのだとか。結果的にくぼみだけが残っているが、ユーザーが自分でカスタマイズする際の「余白」としてあえて残したという。

Sports Appearance(スポーツアピアランス)の内装
Sports Appearanceには、10.25インチのセンターディスプレイが標準で付く(Field Journeyは8.8インチ。10.25インチはオプション設定)

今回の大幅商品改良では、「Field Journey(フィールドジャーニー)」と呼ぶ特別仕様車も設定された。これもスポーツアピアランスと同様、ユーザーの声に応えたものだ。シルバー塗装のフロント&リヤバンパーセンターガーニッシュやサイドガーニッシュでラフさを表現。タイヤは標準でオールシーズンタイヤとなる。インテリアでは、シートのステッチやパイピング、エアコンのルーバーにライムグリーンの差し色が入り、(皮肉に聞こえるかもしれないが)近年のマツダ車にしてはポップな雰囲気を漂わせるようになっている。

Field Journey(フィールドジャーニー))の内装
エアコンのルーバーにライムグリーンの差し色
ポップな印象である。

整理すると、最新のマツダCX-5は標準仕様だけでなく、上質さを増したエクスクルーシブモードと、スポーティさを強めたスポーツアピアランス、アウトドアが似合うフィールドジャーニーが選べるようになった。堅苦しく総括すると、「多様化するお客様のライフスタイルや価値感に対応した」ということになる。

キャプション入力欄
キャプション入力欄

ダイナミクス性能の向上は?

ダイナミクス性能が進化したのも見逃せない。ひとつはハードウェアの進化で、「上質で疲れにくい乗り心地を目指す」のが狙いだ。転舵した際に旋回外側のフロントが沈み込むダイアゴナル(前下がり)のロールをする姿勢は、やや弱まりながらも維持しつつ、ピッチ(おじぎしたり、のけぞったりする動き)を減らすべく、サスペンションに手を入れた。具体的には、フロントコイルスプリングのばねレートを上げ、ダンパーの減衰力は伸び側を緩め、縮み側をわずかに上げた。

新世代商品群のMAZDA3やCX-30の商品改良で施したのと同じコンセプトの改良を、前世代と新世代の狭間に位置するCX-5にも施したということだ。「マツダ3の商品改良で得られた知見が非常に多かった」と、技術者は話す。

後席足元付近に位置するクロスメンバーに4つのパーティションを追加し、そのパーティションを接着剤で固定した。この接着剤は振動を減衰する役割を担っており、乗り心地や静粛性の向上に効く。これも、MAZDA3から取り入れた技術の転用だ。既存のプラットフォームに手を入れるのはコスト面でハードルが高いが、それだけの価値を認めたということだ。深読みすれば、やっておかなければ競合に対する競争力を保てないと判断したのだろう。解析技術を駆使し、最も効果のある場所を特定して手を入れたという。

シートフレームにも手を入れた。基本骨格は変えず、座面のばねとウレタン、シートバックの腰を支えるプレートの仕様を変更することで、より、自然にバランスが取りやすい姿勢がとれるようにした。これも、MAZDA3から取り入れた考え方に準じたものだ。さらに、ブラケットを変更してシートスライダーとボディとの接触面を増やすことにより、体の横揺れを減らすことができた(疲れにくくなる)。エクステリアデザインの変更や特別仕様車の追加に目を奪われがちだが、中身の進化も徹底しており、最新のCX-5は動きの面での質がさらに上がっている。

ダイナミクス性能のソフトウェア面では、MAZDA INTELLIGENT DRIVE SELECT(マツダ・インテリジェント・ドライブ・セレクト)、略称Mi-DRIVE(ミー・ドライブ)を新たに採用した。従来の「NORMAL(ノーマル)」と「SPORT(スポーツ)」に加え、「OFF-ROAD(オフロード)」を設定したのが特徴だ。NORMALモードは、従来どおり燃費と性能のベストバランスを狙ってパワートレーンを制御。ガソリン車専用のSPORTモードは応答性を最大化。エンジンを高回転まで引っ張る制御で、それに合わせ、GVC(Gベクタリングコントロール)のトルクダウン制御は、ゲインを高める方向で調整した。

OFF-ROADモードはフィールドジャーニー専用で、AWD、TCS(トラクションコントロール)、アイドリング、ATの各制御がオフロード走行(未舗装路から深雪路まで)に最適化される。AT(ガソリンのみ)は1速から2速にシフトアップするポイントを2500rpmに高めると同時に、スリップ領域を増やすことで、より滑らかで連続的なトルク伝達が行なわれるようにした。また、上り勾配ではアイドル回転を自動的に上げて発進性を高め、下り勾配ではアイドル回転を下げて速度調整がしやすいように制御する。

高速走行時はGVCを専用制御にすることで直進安定性を確保し、AWDは後輪へのトルク伝達を増やすことで、やはり直線安定性を高める制御としている。これを実現するために、フィールドジャーニーのみ、トランスファーにトルク振動を抑えて制御領域の拡大につながるラバーカップリングを採用している(マツダ3で初採用した技術)。

フィールドジャーニーが格好だけでないことは、OFF-ROADモードの中身ひとつ取っても想像がつくだろう。CX-5は今回の大幅商品改良によって、静的にも動的にも大きく進化し、選択の幅が広がった。さらに多くの支持を集めるに違いない。

マツダCX-5 20S Field Journey(4WD)
 全長×全幅×全高:4575mm×1845mm×1690mm
 ホイールベース:2700mm
 車重:1600kg
 サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
 駆動方式:4WD
 エンジン
 形式:2.0ℓ直列4気筒DOHC
 型式:PE-VPS型
 排気量:1997cc
 ボア×ストローク:83.5×91.2mm
 圧縮比:13.0
 最高出力:156ps(115kW)/6000pm
 最大トルク:199Nm/4000rpm
 燃料:レギュラー
 燃料タンク:58ℓ
 燃費:WLTCモード 14.0km/ℓ
  市街地モード:11.3km/ℓ
  郊外モード:14.2km/ℓ
  高速道路モード:15.5km/ℓ
 トランスミッション:6速AT
 車両本体価格:323万4000円
 オプション価格:9万9000円(地上デジタルTVチューナー 2万2000円、10.25インチセンターディスプレイ 2万2000円、クルージング&トラフィックサポート、ワイヤレス充電3万3000円、ハンズフリー機能付きパワーリフトゲート2万2000円)

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…