ルノー・日産・三菱自動車がアライアンスのロードマップ「Alliance 2030」を発表。EVとコネクテッド・モビリティに注力

ルノー・日産・三菱自動車アライアンスは1月27日、2030年に向けてともに未来を切り拓くため、モビリティのバリューチェーンに焦点を当てた共通のプロジェクトと実行計画「Alliance 2030」を発表した。

5つの共通EVプラットフォームをベースに、2030年までにアライアンス合計で35車種の新型EVを投入する予定

「Alliance 2030」の要点は以下のとおり。


・2030年に向けて、アライアンスは電気自動車(EV)とコネクテッド・モビリティに注力。
・2026年までにプラットフォームの共用化率を80%まで向上させることを目指す。
・三菱自動車は、ルノーの最量販車をベースとする新型車2車種を欧州市場へ投入。
・電動化を加速するため、今後5年間で230億ユーロを投資。
・2030年までに5つのEV専用共通プラットフォームをベースにした35車種の新型EVを投入。
・日産は、CMF-BEVプラットフォームをベースとした、欧州で販売するマイクラの後継となる新型EVを発表。フランス北部のルノー・エレクトリシティでの生産を予定。
・2030年までにグローバルで220GWhのバッテリー生産能力を確保することを目指し、共通のバッテリー戦略を強化。
・日産は、全固体電池の技術開発をリードし、アライアンスでそのメリットを享受。
・ルノーは、一体型の共通電気・電子アーキテクチャーの開発をリード。2025年までに完全にソフトウェア定義(software defined)された車両を投入。

協力し合い、互いに貢献する「リーダーとフォロワー」の枠組み

アライアンス各社は、プラットフォーム、生産工場、パワートレイン、車種セグメントなど、共用化の対象となり得る要素をまとめ、各車種に適した共用化の度合いを定めた「Smart Differentiation(スマート差別化)」手法を開発した。この手法により、デザインやアッパーボディをより細かく差別化していく。例えば、C/Dセグメントの共通プラットフォームにより、アライアンスの3つのブランドから5モデル(日産の「キャシュカイ」と「エクストレイル」、三菱自動車の「アウトランダー」、ルノーの「オーストラル」、および今後発売予定の7人乗りSUV)がつくられる。

このプロセスを強化することで、アライアンスはプラットフォームの共用化率を現在の60%から2026年には合計90車種の80%以上にまで高める予定。これにより、各社はカスタマーのニーズやコアモデル、コアマーケットへの注力を深めるとともに、アライアンス全体でイノベーションをより低コストで推進することが可能となる。また、その取り組みの一環として、三菱自動車は、ルノーの最量販車種をベースにした新型ASXをはじめとするふたつの新型車を投入し、欧州でのプレゼンスを強化する。

5つのEV専用共通プラットフォーム:業界最多レベルのラインナップを提供

アライアンス3社はEV市場におけるパイオニアとして、これまで電動化の推進に100億ユーロ以上を投資してきたが、今後5年間で電動化に総額230億ユーロ以上の投資を行い、2030年までに35車種の新型EVを投入する予定だ。そのうち、90%の車種は5つの共通EVプラットフォーム(下記)をベースとし、ほとんどの市場、すべての主要地域をカバーする。

●CMF-AEV:世界で最も手頃なプラットフォームで、新型ダチア「スプリング」のベースとなっている。
●軽EV専用プラットフォーム
●LCV(小型商用車)EV専用プラットフォーム:ルノー「カングー」や日産「タウンスター」のベース。
●CMF-EV:グローバルでフレキシブルなEVプラットフォームであるCMF-EVは、まもなく発売になる「日産アリア」やルノー「メガーヌE-Techエレクトリック」のベースとなっている。CMF-EVプラットフォームは、革新的な技術とモジュール化がもたらす高い性能により、新世代EVのベンチマークとなるプラットフォームで、EV用のパワートレインに求められるすべての要素を統合・最適化し、高性能な新型モーターや超薄型バッテリーを搭載している。 2030年までに15車種以上にCMF-EVプラットフォームが採用され、最大で年間150万台が生産される。
●CMF-BEV:世界で最も競争力のあるコンパクトEV用のプラットフォームであるCMF-BEVは、2024年に投入される。最大400kmの航続距離と優れた空力性能を実現するCMF-BEVは、現行のルノー「ゾエ」比でコストを33%低減し、消費電力を10%以上改善する。同プラットフォームは、ルノー、アルピーヌ、日産の各ブランドで年間25万台分のEVのベースとなり、この中には、ルノー「R5」や、日産「マイクラ」の後継となる新型コンパクトEVも含まれる。なお、この新型コンパクトEVは、デザインは日産、開発はルノーが担当し、フランス北部のルノー・エレクトリシティでの生産が予定されている。

共通のバッテリー戦略、バッテリー技術の革新、220GWhの生産能力により、高い競争力と魅力的な商品ラインナップを提供

バッテリー戦略は、ルノーと日産のコアマーケットでは共通のバッテリーサプライヤーを選択するとともに、共通のパートナー企業と協業してスケールメリットによるコスト低減を実現し、バッテリーコストを2026年には50%、2028年には65%の削減を目指す。このアプローチにより、2030年までに世界の主要生産拠点で合計220GWhのEV用バッテリー生産能力を確保できるよう取り組む。

さらに、同アライアンスは全固体電池(ASSB)技術に関するビジョンを共有している。他社に先駆けてバッテリー技術の開発に取り組んできた日産は、蓄積してきた深い専門知識と経験に基づいてこの技術革新をリードし、アライアンス各社で活用できるようにする。ASSBは現行の液体リチウムイオンバッテリーと比較してエネルギー密度が2倍に向上し、充電時間は3分の1に短縮され、ユーザーはより便利に、より安心して、より楽しく、より長い距離を走行することができるようになる。2028年半ばまでにはASSBの量産を開始し、さらに将来的に1kWhあたり65ドルまでコストを下げることでエンジン車と同等のコストを実現し、グローバルにEVシフトを加速することを目指す。

2026年までに2500万台のクルマがアライアンス・クラウドに接続:トップクラスのデジタル体験を提供

インテリジェントなコネクテッド・モビリティは同アライアンスの重要なテーマで、イノベーションをアライアンス全体でさらに共有していく。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転の分野での20年の経験に基づき、同アライアンスは、日産の「プロパイロット」に代表される知能化や運転支援の技術革新を推進し、リアルワールドでの安全性や利便性、走る楽しさを向上させ続ける。具体的には、プラットフォームと電子システムの共用化により、2026年までにアライアンス全体で45車種に運転支援技術を搭載し、1000万台以上販売する見込みだ。

現在、既に300万台の車両がアライアンス・クラウドにつながっており、常時データのやりとりをしている。2026年までに年間500万台以上の車両にアライアンス・クラウド・システムが搭載され、計2500万台の車両が市場で走行することになる。また、同アライアンスは、世界で初めてグーグルのエコシステムを車両に搭載する。

ルノーが技術開発をリードして、電子機器のハードウェアとソフトウェアのアプリケーションを統合し、一体型の共通電気・電子アーキテクチャーを開発することで、その効果を最大化し、パフォーマンスの最適化を図る。

同アライアンスは、2025年までに完全にソフトウェア定義(Software Defined)された車両を初めて発売する予定だ。このモデルで、クルマのライフサイクル全体を通じてOTA(Over The Air)のパフォーマンスを向上させる。これにより、クルマがデジタルエコシステムに統合され、パーソナライズされた体験や新しい充実したサービスを提供し、メンテナンスコストの削減を実現することで、カスタマーにより高い価値を提供することが可能となる。これは車両の再販価値を高めることにもつながる。ソフトウェア定義された車両は、つながっているあらゆるモノやユーザー、インフラとの通信を可能とし、アライアンス各社に新たな価値創造の機会を創出する。

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