東京都民の足として親しまれる仕様で登場の大型バス『トミカ』

トミカ × リアルカー オールカタログ / No.20 いすゞ エルガ 都営バス

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.20 いすゞ エルガ 都営バス (希望小売価格550円・税込)

いすゞ エルガは、いすゞの代表的な大型路線・送迎バスで、様々な路線バスや企業の送迎用に幅広く使われています。新世代にふさわしい路線バスとして2000年にデビューし、2015年に現行2代目モデルのV290系にフルモデルチェンジしました。

いすゞ エルガ実車フロントビュー。都市型(中乗)ホイールベースN(5300mm)LV290N3型カタログ用特別仕様車。(『トミカ』のモデル車両と必ずしも一致する仕様ではありません)
いすゞ エルガ実車リヤビュー。都市型(中乗)ホイールベースN(5300mm)LV290N3型カタログ用特別仕様車。(『トミカ』のモデル車両と必ずしも一致する仕様ではありません)

この2代目モデルは、開発に際して“次世代ノンステップ・バスの対応”を大きなテーマに掲げていました。そのため、初代モデルよりもノンステップエリア――乗降性を高めるための出入り口との段差をなくした部分――を拡大するために、長さ、通路幅、室内高、および後方段上部の室内高が拡大されています。また、ノンステップエリア拡大のために、ホイールベースの延長とあわせて、フロントタイヤハウス上部への燃料タンクの移設や中扉の後方移設などの様々な工夫や改良が施されています。

実車車内レイアウト図。都市型ホイールベースN(5300mm)定員79人(座席27人+立席51人+乗務員1人)。前方の低い床の部分がいわゆるノンステップエリア。

ノンステップエリアを拡大することで広々とした室内空間を実現する一方、優先席を前向きにし、伝い歩き棒を新設するなど優先席まわりの安全性も向上させており、これに加えて反転式スロープ板の採用による車いすの乗降性もさらに容易なものとしています。

前向き優先席。都営バスは青の地色にマスコットキャラクターの『みんくる』をあしらった視認性の高い配色となっている。(写真:東京都交通局)
足腰に不安を抱える人でも車内移動をより安全で安心なものにするため、左前タイヤ上部に伝い歩き棒が設置されている。
スイッチ類を集約し、操作性を追求したラウンドフォルムコックピットにより、さらに快適な運転を実現している。

運転席は圧迫感の軽減と運転スペースの使いやすさを重視した、ドライバーを丸く囲うようなデザインのラウンドフォルムコックピットとなっており、各種スイッチ類が集約され、操作性が追求されています。

また、エンジンには環境・燃費性能の向上を目指して、2ステージターボを搭載した4HK1-TCS型エンジンを採用しています。2ステージターボの搭載により、全回転域において高効率なターボ効果が発揮され、排出ガス中のPM(粒子状物質)を大幅に低減させています。また、EGRクーラーの冷却性能向上と、超高圧噴射化による燃焼状態の均一化で燃費性能がさらに高められています。

環境・燃費性能の向上を目指して、2ステージターボを搭載した4HK1型エンジン。
高圧・低圧2種類のターボを最適に制御することで、全回転域における高効率なターボ効果を発揮。燃焼効率を損なうことなく高EGR化を実現し、NOxを低減。また高圧段ターボを小型化したことにより、低回転域での高い応答性も実現している。

さらに、AMT(自動クラッチマニュアルトランスミッション)とATの2種類を設定することで2代目モデルは一段と運転しやすい車両となっています。AMTではクラッチ操作を不要としたアクセルとブレーキの2ペダル方式を採用、ATのようにクリープを利用した微速走行も可能としています。尚、AT車には操作パネルにメンテナンス時期診断機能を追加し、オイルやフィルターの状態をモニターし、最適な交換時期をサービスインジケーターで知らせる機能があります。

AMT(自動変速マニュアルトランスミッション)。クラッチ操作をせず、シフトレバーのアップダウンのみで変速が可能な次世代トランスミッションで、自動変速モードでは、適切なギヤポジションへ自動的に変速を行なう。
AT(オートマチック・トランスミッション)。トルクコンバーター採用により優れた動力性能を備えたトランスミッション。

また、2代目モデルはノンステップ仕様のみの車型設定となったため、前後オーバーハングを短縮することでアプローチ・アングルとデパーチャー・アングルを増大させ、ノンステップ車でありながらワンステップ車並の走行性を確保しています。

乗降時に車両を左に傾けることで、より低い乗降口を実現し、スムーズで安全な乗り降りをサポートするニーリング機構が装備されています。また低速走行中、踏切内の凹凸路や路面の障害物を避ける時の車高アップ機能、頭上の障害物を避ける時のロアリング機構も備えています。

さて、『トミカ』の『No.20 いすゞ エルガ 都営バス』は、東京都交通局が路線バス、いわゆる“都営バス”として使用しているいすゞ エルガをモデルとしています。行先表示が「錦糸町駅」となっていますので、錦13甲または乙など10路線以上が該当しますが、路線を特定するだけ野暮というものでしょう。

グリーンを基調とした車体カラーでおなじみの都営バス。現在の車体カラーは1982年にアンケートで決定された。(写真東京都交通局/編集部にて一部加工)

現在、都営バスといえばグリーンを基調とした車体カラーでおなじみですが、このグリーン色、実は1982年に都民のアンケートで決定されました。この時、4つの車体カラー案が出されましたが、そのうちの一つは大阪万博会場の太陽の塔などでおなじみの故・岡本太郎画伯が提案されたものだったそうです。ちなみにそれ以前、1968~1981年までは発展した街の色と調和するアイボリー×ブルーが、その後、1981~1982年の1年間だけ視認性の高いイエロー×マルーンが都営バスの車体カラーに使われていました。

視認性に配慮されて色彩デザインされている都営バス車内。(写真:東京都交通局)
極めて視認性が高い黄色が用いられている都営バスの降車ボタン。細かな部分まで色彩設計されている。(写真:東京都交通局)

また、現在の都営バスの座席には、青地に都営バスのマスコットキャラクター『みんくる』を配した生地が使用されていますが、これは国土交通省が定めた『室内色彩』の基準をもとに決められたそうです。「座席や手すり、通路および注意箇所などは十分な明度差をつけたものにすること」とされているため、天井や壁面、床や通路に用いられているグレー系と十分な明度差のある青色が座席に選ばれたのだそうです。青色系の座席はバリアフリーモデルデザインとして、他社のバスでも多く採用されていますが、都営バスでは、カメラを持っていたり、傘をさしていたり、様々なポーズの『みんくる』が、座り心地のよい座席を楽しく彩っています。

『トミカ』の『No.20 いすゞ エルガ 都営バス』は、この大型路線バスの特徴をよくとらえているモデルだと言えます。路線バスは街中でよく見かける“働くクルマ”だけに、世代や性別を問わず人気が高く、この『トミカ』もまた人気商品となっています。また、都営バスということで、東京土産に購入する人も少なくないとか。このモデルに限らず、バスの『トミカ』は様々な地域の路線バスの仕様で特別品や限定品などが作られていて種類が豊富なため、それ専門のコレクターもいるそうです。

(参考:東京都交通局Facebook)

■いすゞ エルガ 主要諸元 (『トミカ』モデル車種と同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):10430~11130×2485×3045(全長は車型による)

ホイールベース(mm):5300~6000

トレッド(前/後・mm) :2065/1820

車両重量(kg):13565~14985(重量は車型による)

エンジン形式:4HK1-TCS型 水冷直列4気筒OHC 直噴 2ステージターボ ディーゼル

排気量(cc):5193

最高出力:184kW(250ps)/2400rpm

最大トルク:735Nm(75kgm)/1600-2300rpm

トランスミッション:6速AMTまたは6速AT

サスペンション(前/後):車軸式エアサスペンション

ブレーキ(前後) :空気式&ドラム(主)/フットブレーキ連動式排気ブレーキ(補助)

タイヤ:(前後):275/70R22.5

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