近くて遠い国のエトランゼ、パリのイギリス車たち

溝呂木 陽の水彩カースケッチ帳/連載・第23回 パリに息づくヴォワチュール ブリタニークたち

クルマ大好きイラストレーター・溝呂木 陽(みぞろぎ あきら)さんによる、素敵な水彩画をまじえた連載カー・コラム。今回は溝呂木さんの“アナザースカイ”であるフランス、パリの空の下に息づくMINIやジャガーなどのイギリス車たちのお話です。
パリ16区で見かけた白いオースティン 850 ミニ。

ここ何回かはパリで見た車たちを描いた拙作をシリーズ的にご紹介していますが、今回はパリで見たイギリス車をご紹介していきましょう。

まずは白いオースティンの初期の850のミニから。パリの街並みにはクラシックミニがよく似合いますが、これはその中でも珍しい、マーク1タイプのスタンダードミニになります。パリのミニといえばゴツいフレンチバンパーがついた――駐車で前後にバンパーをぶつけるので、低いバンパーのミニは灯火類が割れないようにライトの高さに大きなバンパーガードがついていたのです――ミニが多かったですが、この白いミニには細い繊細なフレンチバンパーがついていました。おまけにボディと共色の白いキャンバストップが最高におしゃれで、2003年ごろのパリでは希少になっていた古いパリの黒ナンバーも魅力的な一台でした。

こちらは1枚目と同じミニを前から見たところ。何でもない交差点に単に路駐しているだけの光景でも、なぜか雰囲気がありますね。
パリでよく見かける黒いボディカラーのミニはシックです。

こちらもミニ。これはオペラの界隈だったでしょうか。パリではなぜかイエローバルブに黒いボディカラーのミニを多く見た気がします。多くは若い女性がオーナーで、彼女たちが颯爽と乗り込んでエンジンをかけて走り去っていく姿は、とても絵になる感じでした。黒いミニはゴツいフレンチバンパーのものが多かった気がします。

マレで見かけたおしゃれなマーク1クーパー。

こちらはマレの細い路地から入ったところにあった、中庭があるお店に佇んでいた最高におしゃれなアーモンドグリーンのマーク1クーパーです。こちらも2000年ごろでしたが古い黒ナンバーのクルマで、奥のグリーンの窓と相まった素晴らしい佇まいにはうっとりしました。この頃はたまたま路地を曲がるとびっくりする車が佇んでいることが多かった記憶があります。

セーヌ通りのプチホテル前に停められていた赤いヒーレーと通りすがりのお嬢さん。

こちらはギャラリーなどが立ち並ぶセーヌ通りで見た、可愛いプチホテルの前に停まっていた赤いオースティン ヒーレーです。70年代のロスタイル ホイールの感じがとても良く、奥を横切ったピンクのスカートのお嬢さんと共に素晴らしい“絵”を見せてくれた瞬間でした。横に停まっていた赤いシュペール サンクが時代を感じさせてくれます。

バスから見たジャガー Eタイプ。突然、横に現れてビックリ。

こちらはエッフェル塔の近くからバスに乗ったとき、偶然、横に現れたジャガーEタイプのオープンです。2014年ですから最後にパリに行ったときですが、こんな車に偶然出会えるとびっくりして嬉しくなるものですね。バスから慌てて写真を撮りました。

エッフェル塔近くのホテル前で出会ったモーガン。トノカバーが雰囲気があります。

最後はこちら。こちらはエッフェル塔の近くのホテルに泊まったとき、ホテルの前に停まっていたモーガン4/4です。ホロではなくトノカバーでコックピットを覆っているのが雰囲気ありますね。朝、ホテルを出たところだったので、朝の光が斜めから差しています。

フランスにとってのイギリスは、たった数時間で来られてしまう“近い外国”ですが、クルマの文化や思想は驚くほど違っています。しかし、そんな英国車を楽しむフランス人も少なくありません。そんなパリの風景に溶け込むエトランゼたち。そんなクルマたちを今後も色々と絵にしていきたいです。

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著者プロフィール

溝呂木 陽 近影

溝呂木 陽

溝呂木 陽 (みぞろぎ あきら)
1967年生まれ。武蔵野美術大学卒。
中学生時代から毎月雑誌投稿、高校生の…