日産キャラバン ディーゼル仕様は完全新開発エンジン搭載 4N16型とはどんなエンジンか?

新型日産キャラバンが搭載する新開発ディーゼルエンジン、4N16型
日産はマイナーチェンジしたキャラバンに新型ディーゼルエンジン搭載社を追加した。このディーゼル、完全新開発の2.4ℓ直4ディーゼルターボだ。どんなエンジンか?
新型日産キャラバン

日産キャラバンは2021年10月にマイナーチェンジを受けている。内外装を変更したほか、先進安全装備を追加している。今回のディーゼルモデルは、そこに進化したディーゼルエンジンを追加したカタチだ。

今回のキャラバンは、
ビジネスユースのユーザーには
プロ中の、プロの道具
プライベートユースのユーザーには
プロのクルマで、遊びを極める
というキャッチコピーでアピールする。プロが使うパワーユニットなら、ディーゼルだ。

現行キャラバンは5代目モデルで2012年にデビューしている。ディーゼルモデルも設定されていた。2.5ℓ直4ディーゼルエンジンのYD25DDTi型である。

前型が搭載していた2.5ℓ直4ディーゼルのYD25DDti型

YD25DDTi
ボア×ストローク:89.0mm×100.0mm
排気量:2488cc
圧縮比:15.0
最高出力:129ps(95kW)/3200rpm
最大トルク:356Nm/1400-2000rpm
最大噴射圧:200MPa

パワートレーン開発を担当した大林和弘さん(日産自動車第三製品開発部第一プロジェクト統括グループ 車両開発主管)にお話しを伺った。

日産車のなかでキャラバンがもっとも平均年間走行距離が長いという。また、積載を考えるとトルクがあるディーゼルが好まれるだという。

「旧型でいうと45%くらいがディーゼルでした」(大林さん)

今回、新搭載となったディーゼルエンジンは、4N16型直4DOHCディーゼルターボである。
「4N1」でお気づきになった方も多いだろう。このエンジンは三菱製である。
三菱のクリーンディーゼルは、4N13型(1798cc)、4N14型(2267cc)、4N15型(2442cc)と4つがすでに存在している。

つまり、今回キャラバンが搭載する4N16型がシリーズ最新作。その初出しが日産キャラバンだったということだ。

今回の新エンジンのポイントは次の通り。
新たに国内で施行されたWLTPに対応
アルミブロックによる大幅は軽量化、燃料最適化、バランサー採用による音振動性能の向上

YD25型のデビューは1998年だから、YD25型を使って厳しい環境規制に対応するのは難しい。となると、選択肢はどうなるか?
「4N16型にするという決定については、パワートレーン専門の組織がいろんな候補を出していって検討しました。自社開発がいいのか、排気規制に対応するにあたっていまのYDでは難しいぞ、と。そのときに、日産開発するか、ルノーのディーゼルを使うか、三菱さんも同じように規制に対応しないといけないので、彼らも新型を開発しなくてはいけなくなる。そういういろんな選択肢のなかで、どれが一番効率的かを考えて決定しました」(大林さん)

ルノー・日産・三菱の3社のアライアンスをうまく活かすという至極リーズナブルな決定だ。ルノーもディーゼルエンジンを持っているが、2.0ℓ以下の小さい排気量しかない。日産は欧州でエクストレイルやキャシュカイにルノー製ディーゼルを搭載するが、キャラバンに載せるには小さい。

ということで、三菱の4N1シリーズの新型エンジンの開発となったわけだ。当然、このあと、三菱もこの4N16型を使っていくだろう。

「開発の分担としてはエンジン本体の開発は三菱さんがやる。それをキャラバンに載せるにあたっての適合は日産側でやるという分担で今回やっています」(大林さん)

4N16型のスペックは
4N16型
2.4ℓ直列4気筒DOHCディーゼルターボ
ボア×ストローク:86.0mm×105.0mm
排気量:2439cc
圧縮比:15.1
最高出力:132ps(97kW)/3250rpm
最大トルク:370Nm/2000rpm
燃料噴射インジェクター:ピエゾ式
過給:VG/VDターボ

となっている。

132ps/370Nmのスペックは前型YD25型の129ps/356Nmから向上しているが、びっくりするほどではない。

「当然、排気、燃費とパワーは、トレードオフになるところです。そこのバランスをとった結果ですね。動力だけに振るならいくらでもとはいわないですが、やりようがありますが、排気規制がありますし、燃費も良くしていかないといけません。そのバランスをとって、このパワー&トルクにしている、ということです」(大林さん)

4N1シリーズは、エンジンによっては吸気側にディーゼルエンジンでは極めて珍しい可変動弁機構(MIVEC)がついていた(国内仕様では未装着)。今回もおそらくMIVECはついていないだろう。

今回の新型4N16型の技術ハイライトのひとつは、排気後処理システムの刷新だ。酸化触媒の後段にDPF+SCRとSCRという2段のSCRシステムを備え、尿素水(AdBlue)を噴いてNOxをN₂とH₂Oに変えて浄化させるシステムだ(AdBlueは尿素水のことで、これが熱で加水分解して二酸化炭素とアンモニアになる)。

新型キャラバンの場合は、AdBlueのタンクは11.4ℓ。補給サイクルは11000kmである。

トランスミッションは7速ATを組み合わせる。ジヤトコ製ですでに北米で販売しているナバラやパトロールが使っている信頼性の高いユニットだ。

三菱製エンジンと日産(ジヤトコ)製トランスミッションを合わせるは大変ではなかったでしょうか? という問いに対しては

「通常エンジンとミッションでいろんな組み合わせがあります。エンジンに合わせてミッションの制御を変更していくということは通常やっていますから、今回も通常通りです。いろいろ大変だったのは、三菱さんがエンジン開発するのと同時並行で日産はパワートレーン、ミッション、車両側の開発をやっていた。三菱さんのエンジン部隊と日産側のエンジン、パワートレーン車両部隊が同時並行で会社をまたいで連携しながら、難しさはありました」(大林さん)

新型ディーゼルに新トランスミッションを合わせたことで、ロックアップ領域が拡大。走りにも燃費にも好影響を与えている。

さて、短時間だが試乗もしてみた。

新旧載り比べてみたのだが、もうこれは歴然と差があった。前型では終始エンジン音で社内はかなり騒々しい。前後席にわかれての会話もなかなか聞こえにくい。これが新型になると、格段に静か。まったく別世界である。

またATの制御も変わったから、低速でアクセルを踏み込んだ場合など、パワートレーンのレスポンスがいい。走りがタイトになった印象だ。

キャラバンが属するキャブオーバーバンは、その車型ゆえ、音振動対策が難しい。エンジンは乗員の下にあってバルクヘッドもない。今回は音振動にも力を入れている。4N16型はバンサーシャフトを備えているし、車両側もかなり手を入れたという。そのかいあって、もちろん乗用車並みとはいかないが、音振動はかなり良くなっている。

トヨタ・ハイエースのディーゼル,2.8ℓ直41GD-FTV型

キャラバンの宿命のライバルといっていいトヨタ・ハイエースのディーゼルは2.8ℓの直4ディーゼルターボ(1GD-FTV型)である。こちらも最新の排気後処理装置を備えた最新ディーゼルである。

キャラバンは4N16型で、ハイエースと対等に戦えるパワーユニットを得たことになる。キャラバンのディーゼル比率も気になるが、やはりハイエースとの販売競争の行方が気になるところだ。

日産キャラバン ロングボディプレミアムGX 全長×全幅×全高:4695mm×1695mm×1990mm ホイールベース:2555mm
トレッド:F1475mm/R1450mm
キャプション入力欄

キーワードで検索する

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…