三菱自動車とDeNAが商用EVの本格普及に向けた協業の検討を開始。水平分業型連携によりEVのサーキュラーエコノミー実現を目指す

三菱自動車とディー・エヌ・エー(DeNA)は3月23日、物流車両、営業車、自治体の公用車、カーシェア・レンタカーなど商用EV分野におけるコネクテッドカーの協業モデルの検討を開始したと発表した。

両社は自動車メーカーとインターネット企業の双方の強みを最大限に生かすため、自動車メーカーのデータ主権や既存の車両システムは維持しながら、EVの車両データ管理や各種サービス事業者との連携はクラウド事業者が担う、水平分業型の産業構造の構築を目指す。また、この新たな機能分担を通じて、商用EVのLTV(ライフタイムバリュー※1)を最大化させる新しい経済モデル(サーキュラーエコノミー※2)にも挑戦していく。
※1:顧客生涯価値
※2:従来の3R(リデュース/リユース/リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動

EVの共同利用やエネルギー活用をはじめ、車両としても役割を終えたEVバッテリーの再利用など、多用途化や長寿命化によりEVのLTVを最大化させる

現在、自動車メーカー各社が力を入れるコネクテッドカーは、車両とクラウドがモバイル通信を介して接続されているが、通信フォーマットや車両データの規格は各社で異なる。そして、これまで自動車メーカーのコネクテッドサービスは個人向けが中心で、対象は自社ブランドの車両のみであることが多く、通信フォーマットや車両データの規格が各社で異なることは問題となりにくい状況だった。

しかし、カーシェアリング、レンタカー、EVを蓄電池として電力連携させるサービス(ピークカット※3/VGI ※4)のように、さまざまな車種やメーカーのEVを束ねるコネクテッドサービスを展開する場合、こうした規格の違いは、サービス事業者にとって大きな負担となり、事業上の制約となる。他方、データを提供する自動車メーカー各社にとっても、第三者のサービス事業者にその都度対応していくことは非効率。そのため、商用車向けのコネクテッドサービスを本格的に普及させるためには、車両、クラウド、サービスといった各階層間で分業化するのが合理的で、欧米ではこのような水平分業化が進みつつある。
※3:使用量の多いピーク時の電力を様々な方法を用いてカットし、電力の使用量そのものを低減させる取り組み。
※4:Vehicle-Grid Integrationの略。EVと電力網を統合し、EVを電力供給システムの一部として利用すること。

●VPP(Virtual Power Plant):仮想発電所。分散型エネルギーリソースをIoT技術を用いて遠隔制御することで、発電所のような発電と調整の機能を提供する仕組み。●V2G(Vehicle to Grid):EVを動く蓄電池としてみなし、EVに蓄えられた電力を電力会社が管理する電力網に供給する技術、またはその考え方。●V2B(Vehicle to Building):EVとビルの間で電力を相互供給する技術、またはそのシステムの略称。●DP(Dynamic Pricing):電力供給側が電気料金を需給バランスに応じて設定する仕組みのこと。

三菱自動車は国内唯一の軽商用EVである「ミニキャブ・ミーブ」を用いて、国内外の物流会社などとともにさまざまな実証実験に参画し、商品力の強化とEVのさらなる普及に取り組んでいる。また、車両のコネクティビティ機能の強化を目指し、“With Partners”という思想のもと、異業種との積極的なパートナーシップを検討している。

一方DeNAは、自動車メーカー各社のEV情報をクラウドで管理するとともに、データサイエンスを活用したデータ分析(効率性、環境性、経済性、製品寿命など)を行い、各社のEV情報を共通形式でサービス事業者に提供するシステムを開発。これまでにも、企業や自治体のEVから得られたデータをクラウド上で管理、解析することで、車両利用用途に合致したEVの導入支援や各種データの見える化で商用EVをカーシェアリングする取り組みを実施してきており、同社も脱炭素社会実現に向けて、商用のEV普及を加速させ、社会のEV化を推進することを目指している。

三菱自動車とDeNAは今後、モビリティビジネスにおける自動車メーカーとインターネット企業の協業により、自動車メーカー主導の垂直統合型から異業種連携による水平分業型への新たな産業構造変革に挑戦する。

さらに両社は、この新たな産業構造を通じて、
●EVの共同利用やエネルギー活用など、多用途化による日常の稼働率向上
●バッテリーの劣化により変化するEVの車両性能とお客さまの利用用途とを高精度にマッチングさせることによる車両寿命の延伸
●車両としての役割を終えたEVバッテリーの再利用
など、多用途化と長寿命化により、EVのLTVを最大化させる新たなサーキュラーエコノミーの実現を目指す。

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