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第三次バイクブームを支えているのは誰だ?
新型コロナウイルスの影響としてマイナスの話ばかり目につく昨今ですが、二輪業界は「第三次バイクブーム」に沸いています。密を避けたレジャーとしてバイクツーリングが注目され、またバイクによる通勤・通学にも注目が集まっています。そのため各地の自動車学校・運転教習所では二輪教習の申し込みを制限しているところもあるというほどです。
さらに半導体不足やロックアウトの影響などによって二輪全体の生産台数も減っているということで新車の納期は伸びていますし、その影響で中古車相場も上がっているなど、二輪業界は大いに盛り上がっています。もっともユーザー的には欲しいモデルがすぐに手に入りづらいいというのは残念な話かもしれませんが……。
そうした第三次バイクブームを支えているのは、YouTube界隈でブームになっているモトブログに刺激された若年層と、いわゆるリターンライダーと呼ばれる久しぶりに二輪に乗ろうという中高年といわれています。いずれにしても、ライディングテクニックには不安のあるライダーがバイクブームを盛り上げているという面は否めません。
速さではなく安全を求めるライダーが集まる
残念な事実ですが、バイクというのは、ひとつのミスで大きな事故につながり、ライダー自身がケガをしてしまいやすいものです。そうしたビギナーライダー、リターンライダーにオススメしたいのがライディングスクールです。
ライディングのスキルアップを目指すスクールと聞くと、いかにも速く走るためのレッスン中心といった内容を想像してしまうかもしれませんが、ライディングスクールの中にはビギナー&リターンライダー向けの、ベーシックなレッスン内容のものも少なくありません。
そうしたスクールに集まるライダーの願いは、「立ちゴケしたくない」や「Uターンできるようになりたい」といったもので、とにかく安全安心にツーリングしたいというライダーばかりです。
そうしたスクールを見つけるポイントは開催場所にあります。サーキットでタイムを削るようなライダーが集まるスクールはミニサーキットなどで開催されることがほとんどですが、日常的なライディングスキルを磨く系のスクールは、教習所や駐車場といった会場で開催されていることが多いのです。
そうした場所では、せいぜい50km/hを上限とした速度域となりますし、主に低速でのバランスや安定したブレーキといったカリキュラムが主体となりやすいのです。
今回は、そうした条件から見つけてきた「ラヴィ・セーフティ・スクール」に筆者が自腹で参加してきました。他のスクールに参加した経験も踏まえつつ、ビギナー&リターンライダーにこそライディングスクールがマストといえる理由をお伝えします。
東京都大田区にある自動車学校(運転教習所)である『ラヴィ・ドライビング・スクール』を会場として、メイン講師に著名モータージャーナリストのケニー佐川さんを迎える、このスクールは「セーフティ」という文字が入っていることからもわかるようにアクシデントやインシデントを避けるための知識や技術を学ぶというのがメインテーマとなっています。
Uターンは半クラとリヤブレーキがポイント
座学では二輪交通事故の発生状況など統計データを元にして解説、ライダーが気を付けるべきシチュエーションを教えてくれます。
実技のスタートは低速走行でした。二輪の特性からスピードが出ているときは安定しますが、低速ではバランスを崩しやすいものです。そのため駐車時や渋滞というのは、意外に立ちゴケしやすいシーンとなっているのです。
低速バランス走行での三種の神器ともいえる技術的なポイントは「スロットル・半クラッチ・リヤブレーキ」というのがケニー佐川さんの教え。最初は、いずれの要素も一定を保つようにして低速走行にチャレンジ、バランスはハンドル操作で取るようにすると安定すると教えてくれます。
クローズドコースですから存分にゆっくりと走ることでき、慣れてきたところでリヤブレーキの踏力で速度をコントロールするような練習をしていくと徐々にUターンができそうな気がしてくるから不思議なものです。
とはいえ、低速でバランスをとって走れるだけでは安定したUターンにはまだまだ不足があって、遠くを見る意識、曲がりたい方向に目線を送るといった工夫も必要です。それでも、そうしたアドバイスをもらいながら練習していくとだんだんとUターンに自信が出てきます。
またUターンの練習では転んでしまわないようスタッフの方がバイクの後ろからサポートしてくれるのも安心要素といえるでしょう。そうして練習を見ていると、ほとんどの参加者が、しっかりとハンドルを切ったUターンができるようになっていきます。センスではなく適切な指導があれば誰でも上手になれるのです。
峠道を安全に走るキーワードは「1/3ミドル」
そのほか、「ラヴィ・セーフティ・スクール」でケニー佐川さんから教えてもらった内容で、おもしろいと思ったのは峠道を走るときに意識する「1/3ミドル」という考え方です。
上手いコーナリングというと、道幅を目いっぱい使ったアウト・イン・アウトのようなライン取りをイメージしてしまうかもしれませんが、サーキットでは正解でも、公道では危険極まりない走りになってしまいます。
対向車のはみ出しなども考慮すると、道幅を3分割して、その中央部分の範囲でライン取りをするのがケニー佐川流の「1/3ミドル」です。こうしたライン取りをスムースに行なうためにはアクセルワークだけで減速・加速をコントロールすることもポイントになります。
無理な速度を出すのではなく、アクセルオフによるエンジンブレーキで十分に減速でき、そこからアクセルを捻っていくことできれいに立ち上がるという走り方は安全で気持ちのいいワインディング走行につながるというわけです。
ここで気を付けるのは、アクセルを一往復させること。アクセルを開けたり閉めたりするのではなく、コーナー進入時にはスーッとアクセルをオフにして、立ち上がりでスムースに開けていくというのことがポイントとなるのです。
Uターンやワインディングを考慮したコーナリングといった練習を、愛車で学ぶということの意味は、自分のテクニックを自分のバイクに合わせるようにアドバイスを貰えるという点でしょう。どんなバイクでも上手に乗りこなせるスキルも憧れですが、それはモータージャーナリストのような人に任せておけばいい技術であって、ビギナー&リターンライダーにとっては愛車の適切な扱い方を教えてもらえる機会というのは貴重になるはずです。
ビギナー&リターンライダーだけでなく、自己流テクニックで走っているライダーも含めて、安全運転をメインテーマとしたライディングスクールに是非とも参加してほしいと思います。そうして二輪の事故を減らしていくことが第三次バイクブームをより盛り上げることになると思うのです。
<取材協力>
ラヴィ・セーフティ・スクール主催:株式会社ケイズオフィス