ジウジアーロ作品だから、初代VWゴルフと似ている車も多いのだ!

独創的だった初代ゴルフだが、1970年代のキャリィ、フロンテクーペそしてロータス・エスプリと似ているのはなぜ?

個性的な車を生み出してきた、ジョルジェット・ジウジアーロ氏。しかし、彼にはどの時代にも自分なりのテーマがあり、その思いに従った車を誕生させてきた。ここでは初代ゴルフとその時代のジウジアーロ作品を見てみよう。

VWゴルフが8代目となったが、ゴルフがゴルフらしく感じられるのはその変わらないデザインにもあるのではないだろうか。1974年に登場した初代ゴルフは、ジョルジェット・ジウジアーロ氏によるデザイン。その合理的でバランスの良いデザインが、まさにゴルフらしさの象徴となったのだった。

1974年誕生の初代VWゴルフ。実に飾りっ気のないシンプルな造形。なのに安定感があり、生命力が感じられる。

しかしジウジアーロ氏のデザインの面白いところは、様々なメーカーのモデルを手がけてもその作品に自分らしさも失わなかったことだ。それは、同時代のジウジアーロ作品を挙げてみればよくわかる。

1975年登場のロータス・エスプリ。こちらもジウジアーロ氏によるデザインだ。

ジウジアーロ氏は日本の車も数多くてがけていたが、1969年に登場したスズキ・キャリィ、そして1974年登場のスズキ・フロンテクーペはまさに代表作。そして、VWゴルフから1975年にはロータス・エスプリが登場する。この頃のジウジアーロ氏は超多忙で、こればかりではなく、多くのメーカーの車のデザインを手がけている。

こちらは1969年登場のスズキ・キャリィバン。第16回東京モーターショーにて。軽バンながらフロントとリヤウインドウの傾斜を同一にした個性的造形。実はこの形が荷物は入らないと不評を買ってしまうことに…。しかしスズキのデザインの躍進をイメージづけた。
1974年登場のスズキ・フロンテクーペ。当初は2シーターのみのリヤエンジンモデルで、軽スポーツの地位を築く。のちに2+2となる。写真は2+2モデル。

これらのモデルを並べてみれば、折り紙細工のような直線と平面で構成される合理的な形はどう見ても共通。それが軽バンなのか、軽クーぺ、はたまたハッチバックなのか、そしてスポーツなのかの違いによって、表現が変わってくる。しかし基本的な要素は一緒。

VWゴルフの安定感あるプロポーション。この基本的なフォルムは8世代目の現代のモデルにも受け継がれているともいえる。

車体をぐるりと回る直線のキャラクターラインと、四角く囲ったグリル。そしてフラットなパネル。しかし決して退屈ではないのは、面に張りを持たせているため。またこのキャラクターラインの高さと前後への通し方には細心の注意が払われ、それこそ車種の個性に見合った高さと傾斜が吟味されている。


上からキャリィバン、フロンテクーペ、エスプリ。キャラクターラインがボンネット先端につながりその下にグリルを構成。フラットに近いパネルによるボディ構成など、共通する要素によって構成されている。ゴルフと併せて4部作といってもいいほどのバリエーションだ。

この車体を一周するキャラクターラインはジウシアーロ氏にとってそれ以降も追い続けたテーマで、その後、1981年のいすゞ・ピアッツァや1985年に登場したFFジェミニにも踏襲されている。量産化に当たってもキャラクターラインの位置については、一切妥協はしなかったという。

しかし考えてみれば、スズキだったりVWだったり、ロータスだったりとメーカーは違う。なのに、似ているのってどうなの? とも思うところだが、少なくともいずれのメーカーもこれらのモデルを起点に企業のイメージアップを図り、そしてそれから先の大きな躍進の力になったことは間違いない。また、いずれもが名車として今なお賞賛されているのも事実だ。

それと同時に、似ているといってもまったくの瓜二つというわけでもない点にも注目だ。

車のデザインはスケッチから生まれるが、それだけではなくモデラーが立体にし、幾多の吟味を繰り返し、生産要件なども含めて生産モデルの造形が決定される。そしてそれぞれの工場で生産され世にでる。

ロータス・エスプリを俯瞰する。スケッチからそのまま出てきたような美しさ。撮影は1977年の都内某所。周囲のものも色々気になる。

車のデザインは、デザイナー一人の作品ではなく、こうした多くの人の手によって生み出される。そこには、各メーカーなりの審美眼があり、また事情もある。基本スケッチから、最終的にどんな車が生み出されるのか? そこには、やはり結果的に各メーカーの個性が表現されることになる。だからこそジウジアーロ氏は多くのクライアントを持ちながらも、デザインに対する姿勢はよりピュアに、その時代のベストに取り組めばよかったのだろう。似ているのではなく、彼にとってはその時代に必要な形だったのだ。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…