スタイリッシュコンパクト、日産キックスの使い勝手を詳密チェック!

日産キックスの使い勝手を徹底チェック!小さな車体に秘めた高い実用性と居住性

後席に乗り込むと、広さと居住性の良さに驚くばかり。そして荷室はクラス最大。そんなキックスは小さな車体ながらファミリーにもおススメできるSUVだ。プロパイロットなど先進技術もフル装備でライバルをリードする。

REPORT●工藤貴宏(KUDO Takahiro)
ASSISTANT●菅原樹里亜(SUGAWARA Jyuria)(身長160㎝)
PHOTO●中野幸次(NAKANO Koji)
※本稿は2020年7月発売の「日産キックスのすべて」に掲載されたものです。

取材車のプロフィール:X ツートーンインテリアエディション
ボディカラー:プレミアムホライズンオレンジ/ピュアブラック
インテリアカラー:オレンジタン(ツートーンインテリアエディション=オレンジ×ブラック)
オプション:インテリジェントアラウンドビューモニター/インテリジェントルームミラー
※一部のカットは別グレードの車両を撮影しています。

ファミリーユーザーでも安心の後席

後席の広さはキックスのアドバンテージ。膝まわりのゆとりはクラストップのヴ ェゼルに迫り、C-HRやCX-30よりもゆったりしている。頭上のゆとりはクラストップで、サイドウインドウが大きいから開放感が高いのも美点だ。

好みと状況に合わせ選べる走行モード

走行モードはノーマルのほか燃費重視の「ECO」や燃費と加速を両立した日産おススメの「S(スマート)」を用意し好みで切り替え可能。また、隣のスイッチを操作することで、エンジンを極力掛けずに静粛性を高める「マナーモード」も選べる。

運転席まわり

ステッチ入りのソフトパッドで広範囲を覆い、専用デザインのナビを周囲から浮かび上がらせて取り付けるなどモダンな印象。シフトも駐車ブレーキも電気式で、走行機能系のスイッチをステアリングとシフトレバー周辺に集めているのも今どきだ。
周囲を立体リングで囲んだアナログ速度計はシンプルで見やすく、左に7インチのカラーディスプレイを組み合わせる。表示はモーターの出力/回生を示すエネルギ ー計がメイン。起動時にはキックスのアニメーションがドライバーを迎えてくれる。
被視認性を高める工夫として、ワイパ ーにヘッドライトも連動。AUTO状態でワイパーが数回作動すると雨天と判断され、安全のためライトが自動点灯する。
ライトスイッチはAUTOが基本。点灯タイミングは早めだ。オートライト法制化に対応しているので、周囲が暗い状態での走行中は任意での消灯はできない。
操作後に手を離すと中立位置へと戻る電気式レバー。手前(後方)に倒すとDに入り、奥(前方)へ倒してRとなる。Dと切り替えるBはアクセルオフの減速を強めるモード。Pへはボタンで入れる。

右側にプロパイロットと発話&ハンズフリー通話。左側はメーター内ディスプレイとオーディオ操作のコントローラーが組み込まれる。目的に合わせて異なるスイッチ形状としているのが操作性を高める工夫。

セレクトレバー前方には右から起動スイッチ、マナー(EV)モード切り替え、ドライブモード切り替えボタンを置く。
インパネ右端にはライト光軸調整、 VDC停止、ステアリングヒーター、エマ ージェンシーブレーキ停止のスイッチが。

■インテリジェントルームミラー

後方カメラの画像を液晶に映すカメラ式ミラーを設定。広範囲が見えるのが美点で、左側には車両周囲も映せる。新世代となり、ミラーはフレームレスで小型化。解像度は1.5倍となり、夜でも画質が鮮明になった。

■メーター内インフォメーションディスプレイ

【表示は切り替え可能】マルチディスプレイの画面は各種車両情報が表示可能。走行支援システムの状態やデジタル速度計も示す。
【マナーモード】エンジンを止めて走る「マナーモード」は青い表示で。画面には水温計やシャシー制御状態も表示できる。
【ECOモード】エコモード時は「ECO」表示が加わる。平均燃費、バーグラフ表示の瞬間燃費計や燃費履歴も表示可能だ。
【スマートモード】右側は時計、外気温などを表示。走行モードを「S」にすると、シフトポジションの下に緑で「S」と示す。
【ディスプレイ表示内容】パワーメーター(出力/回生計)を中心に、航続可能距離、ガソリン残量、バッテリー残量などが表示される。

ナビ・AV・空調

ナビは販売店オプション。車両のナビ用スペースにジャストフィットする、従来の規格にとらわれない専用デザインのナビ(MM319D-L)が取り付け費も含めて24万9407円で用意されている。画面は9インチと大きめで、もちろんタッチパネル操作式だ。メニューや現在地など、頻繁に押すボタンを、ドライバーの手が届きやすいよう右側に配置しているのも気が利いている。よりリーズナブルな7インチ画面のナビも選択可能。
一部はオプションサービスとなるが、通信機能「NissanConnect」にも対応。オペレーターによる目的地検索サービスなども利用できる。
地図の見やすさに加えて大きな画面によるメリットのひとつが、操作時に画面上のボタンが大きくて見やすく、押しやすいこと。接続したスマホから音声認識で目的地設定も行なえる。
ラジオやCD/DVD再生をはじめ、Bluetoothオーディオ、そしてiPod/iPhoneやWALK MANなどさまざまな音楽ソースに対応。
真上から見下ろすように車両周囲を映す「アラウンドビューモニター」はナビ画面に表示可能。人などを注意喚起する移動物検知機構付き。
▲ 路肩に寄せる際などはドライバーからは死角となる助手席側前輪付近を拡大するカメラ映像が便利。右画面は前/後方のカメラ映像だ。
オートエアコンを全車に標準装備。エンジン停止中もしっかりと冷風を送れるよう、コンプレッサーは電動式を組み合わせる。温度調整はダイヤル式で、設定温度を大きく変える時の操作性がいい。18℃から32℃まで0.5℃刻みの温度設定は左右独立ではなく、全席共通だ。
前席用の電源アウトレットは、エアコン操作パネルの下にDC12 VとUSBポートを用意。後者はモバイル機器充電用で出力は急速充電対応の2.4A。
後席にも充電用のUSBポートを標準装備。場所はセンターコンソールの最後部だ。こちらも出力は2.4A。隣は後席のシートベルト着用を促すリマインダー。

注目装備

【証明付きバニティミラー】サンバイザーに内蔵されるバニティミラーは、運転席と助手席の両方に採用。 リッドを開くと鏡の上に組み込まれたライトが点灯。
【SOSコール】事故など緊急時に、押すだけでオペレーターに接続できる機能。緊急車両の手配などをサポート。
ドライバーの膝付近に展開するエアバッグも装備。事故時にドライバーの姿勢拘束性を高める。

キーは、身に付けたりカバンに入れておくだけでドア開錠やシステム起動ができる非接触式。電池切れなどトラブル対策として、機械式キーも内蔵している。

居住性&乗降性

■前席

床に対する着座位置は高めで、相対的にインパネ上面も低いので視界良好。ステアリングの前後調整機能も備える。シートは骨盤をしっかり支えつつ、背もたれは筋負荷が最小となるように身体を支える構造によるフィット感が好印象だ。窮屈さを感じさせず優しく身体を包み込む。シートヒーターも設定。

シート高:620㎜ ステップ高:390㎜

何より実感できるのは、クロスオーバーSUVの美点である身体負担が少ない着座位置の高さ。床とサイドシルの段差が約80㎜と少ないから、足の出し入れもスムーズに行なえる。

■後席

短い全長にこれだけの広さをどうやって確保したのだろうか。そんな疑問さえ浮かんでしまうほど広い後席空間は、クラストップレベル。大きなサイドウインドウに加え、フロントシートよりも座面を高くしていることで前方視界が良く、開放感が高いのも特筆すべきポイントだ。かつての多くのコンパクトカーとは異なり、中央席のシートベルトもシートに内蔵。リクライニング機構やセンターアームレストは付かない。

シート高:650㎜ ステップ高:405㎜

前席に比べると着座位置は高め。天井は後方に向かって下がるものの、ライバルに比べると傾きは少なく比較的頭上に余裕がある。足元は、車体下の樹脂部分がふくらはぎに当たりやすいので服を汚さないように注意。

室内の収納スペース

収納スペースは豊富に用意されている。
奥行きたっぷりで大容量。実際に収まるのは形状の制約で大型の箱ティッシュ+取説一式だが、感覚的には大型箱ティッシュ2個分ほど。
チケットホルダーは、サンバイザーの裏側に用意。大きなカードなども挟める三角ポケット形状で使い勝手がいい。
インパネ右端(ドライバーの足元付近)にある小さなポケット。販売店オプションのETCユニットを選んだ場合は、この位置に組み込まれる。
センターコンソールの最前部にあるトレーは、大画面スマホも置けるように大型サイズ。すぐ上にUSBポートがあるので充電時も便利だ。

前席用のドリンクホルダーはセンターコンソールに配置。ペットボトルや太缶はもちろん、細缶もしっかり保持するアジャスター付き。500㎖の紙パックも置けるのが親切だ。アジャスター部分は取り外し式で、外せば眼鏡ケースなども収まる大型の収納スペースとして利用できる。

リッド付きのセンターコンソールボックスを備える。ただし深さは約65㎜とセンターコンソ ールボックスとしては比較的浅底だ。
フロントドアポケットにはB5サイズのノートも挟める。ボトルホルダーは750㎖サイズのペ ットボトルも置け、小物入れのマチも厚めだ。
シートバックポケットはスタンダードなシンプルタイプ。A4サイズの冊子を挟んでも余裕があるサイズで使いやすい。
リヤドアのポケットはボトルホルダーに特化した設計。海外で売られているような大きめのボトルも収まるよう考えられている。

ラゲッジルーム

開いたテールゲートのクローズグリップの位置は地上1860㎜で、開口部下端の高さは地上700㎜。いずれもクロスオーバーSUVとして平均的な高さだ。この角度から見るとトノボードよりも下は車両後部面(テールゲート)の傾斜が少なく、空間を広くとっていることが理解できる。電動テールゲートの設定はない。
【通常時】高さ:890㎜ 奥行き:900㎜

特筆すべきは圧倒的な広さ。ラゲッジスペースの容量は423ℓとクラストップを実現し、Mサイズスーツケース(60ℓ程度)が4つ積める積載性を誇る。床は奥行き(前後長)があるのに加え、テールゲートを開けた瞬間に驚くくらいに低いから荷室空間の高さを有効に使えるのがいい。凝った仕掛けはないが、シンプルで実用的だ。

【後席格納時】最小幅:980㎜ 最大奥行き:1730㎜

荷室の床と倒したシ ート部分に165㎜程の段差ができてしまうが、見方を変えれば、いかに荷室の床が低いかを物語っている。段差をなくす手法として荷室の床を2重にするボードなどは非採用で、格納時の収まりの良さよりも絶対的な広さを重視した空間設計だということが理解できる。

後席格納は6対4分割式。背もたれを倒すだけの方式で、倒した部分は水平ではなく若干の傾斜が残る。

トノボードは標準装備。驚くのは、コンパクトカーなのに大きなサイズだということ。端部で460㎜、中央では590㎜ある奥行きがライバル勢を凌駕することからも、キックスの荷室がいかに広いかがわかる。

リヤシートを倒す際のロック解除レバーは背もたれ上部に用意。荷室側(車両後方)からも手を伸ばせば届く位置にあるから、荷室を広げたい時はサッと倒せる。
ショッピングバッグなどを吊るすフックは左右両側に装備。ちなみに、ホイールハウスの張り出しがコンパクトなのも美点だ。
テールゲートを開けるのに連動して荷室を照らすランプを右側(運転席側)の壁に装備。横ではなく下向きになっているのが珍しい。
床下にはバッテリーやパンク修理キットが収まるほか、広くはないがジャッキ(標準搭載ではない)や三角表示板用のスペースも用意されている。

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試乗インプレッション「復権への先鋒」
日産の新型車攻勢の第一弾として登場したキックス。すでに世界で販売されていた車種だが、日本導入に向けe-POWER化され新デザインを纏い、ブランニューモデルに相応しいつくり込みのクルマとなった。

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