清水浩の「19世紀の技術を使い続けるのは、もうやめよう」 第11回 

脱・温暖化その手法 第11回 —21世紀の現代でも主流の発電所は19世紀の技術が基本という不思議—

温暖化の原因は、未だに19世紀の技術を使い続けている現代社会に問題があるという清水浩氏。清水氏はかつて慶應大学教授として、8輪のスーパー電気自動車セダン"Eliica"(エリーカ)などを開発した人物。ここでは、毎週日曜日に電気自動車の権威である清水氏に、これまでの経験、そして現在展開している電気自動車事業から見える「今」から理想とする社会へのヒントを綴っていただこう。

発電機の発明は19世紀

長年続けられてきた発電の原理は、N極とS極の磁石を向き合わせた間にできる磁場の中でコイルを回転させることで回転の力を使って電力を得るというものである。その磁場を作るのは、永久磁石やコイルに電流を流す電磁石である。発電機は構造的には回転部であるローターと固定された状態のステーターからなる。構造的に容易でもあるため磁石側をローター、電流を取り出すコイル側をステーターとすることが多い。

モーターの原理 
磁場の中をコイルが回転すると、電流が流れる。コイ
ルを固定して、磁場を回転させても同じ効果が得られ
る。回転を電力に変換するのが発電機。図中Bが磁場
の方向、Fが動いた方向。そのためIの示す方向に電流
が流れる。

発電の仕組みは有名なフレミングの右手の法則で説明される。これは親指に力の方向、人差し指に磁場の方向をかけると、中指の方向に電流が流れるという法則である。

フレミングの右手の法則 
右手の親指を力のかける方向、中指を磁場をかける
方向とすると、電流は中指の方向に流れる。

発電機の発明はフランスのヒポライト・ピクシーによるもので、1832年のことであった。

発電は1878年、水力を利用して行うイギリスのウィリアム・アームストロングによるものが初めてのことである。

これを商用の発電所として建設したのが、トーマス・エジソンで、1881年のことである。この時の発電機は直流発電機であった。それが1889年にアメリカ国内だけで200箇所の建設が行われている。

1882年にはエジソンがニューヨーク・マンハッタンに発電機6台で540kWの出力を持つ火力発電所を建設している。

また、ニコル テスラが発明した交流発電機による発電所がナイアガラで稼働を始めたのも1881年である。結果的には変圧が容易で、遠くまで送電が可能であることから直流よりも交流発電がその後の主流となった。なお、電気自動車で有名なテスラモータースはニコル テスラの名前からとったものである。

水力発電は水の落差を利用して羽根車すなわちタービンを回し、その車軸と発電機のローターを直結して動力を電力に変える。水力発電は水そのものの力でタービンを回していたが、火力発電所は石炭や石油、天然ガスを燃やして作る熱で水を高圧の蒸気として、その蒸気をタービンの羽根に当てることでこれを回す。

コンバインドサイクルを用いれば効率は60%になるが・・・

原子力発電も火力発電と原理は同じで、核分裂反応で生まれる大量の熱で高圧蒸気を作りタービンを回している。

ガスタービンは、燃料を燃やすことで発生する高圧のガスの噴射の力でタービンを回す。この力を発電機に伝えることで電力を起こすのがガスタービン発電機である。

現在最も高い効率が得られる発電法は、コンバインドサイクルである。これはガスタービン発電機で発電を行うとともに、にその排熱を利用して水を蒸気としてその力で発電を行うものである。この2つの方法を用いることで、コンバインド(結合)と呼ばれている。

現在火力発電所では、燃料から電力を得るための発電効率が40%を上回る。これに対してコンバインドサイクルは60%近い効率を持つ。こうして熱を用いてタービンを回して発電する発電法が現在の主流の発電法であるが、その発電効率は極限に近いところまで来ている。

ここまで成長してきた発電法であるが、忘れてはいけないことが一つある。

それは、その原理は水や蒸気や高圧ガスの力をタービンに当てて発電機を回して電力を得るということでは19世紀以来変わっていない。つまり21世紀の現代でも19世紀の技術を基本に発電が行われている、ということなのだ。

2009年に自動運転用車両として開発したコモビリティ。
GPSで自車位置を特定し、地図情報と照らし合わせなが
ら走行する。

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著者プロフィール

清水 浩 近影

清水 浩

1947年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部博士課程修了後、国立環境研究所(旧国立公害研究所)に入る。8…