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産業革命によって便利な技術が急速に登場そしてCO2も増加する原因に
第9回で、CO2はどこから出ているかについて述べた。その4割は発電、自動車で20%、製鉄で10%、セメント生産で4%であり、その他のほとんどは昔ながらの火を燃やして熱を得ることから出ている。
それでは、これらの技術はいつ発明されたのかを述べるために第10回から第13回目の連載によって各技術の発明と発展の経緯を述べるとともに、それがいつ誰によって発明されたかを見てきた。
これをまとめると、自動車は1886年、発電の商用化は1881年、製鉄は1856年、ポルトランドセメントは1824年である。
発明以後、それぞれの技術は社会にとってきわめて有用で便利であったために、世界中で広く使われるとともに、技術は著しく進化してきた。
発電は当初火力で始まりその後、水力が主となりさらに石炭を用いた火力に変わった。その後、燃料は石油から天然ガスに変わった。原子力発電も発明された。そしてより効率が高い発電としてガスタービン発電の排熱を用いて蒸気を作りタービンを回すコンバインドサイクルが実用化され、最新の技術となっている。
これらの技術は社会に受け入れられると普及が進み、普及が進むと技術開発に大きな投資がなされ、さらにより使い易い技術になり普及が進むという良循環が生まれ、ここまで来た。
人間は手を使いあらゆるものを創り出したが、自らの移動能力を代償にした
自動車も人間にとってとてつもなく便利なものだった。人類は手を使うことにより、あらゆるものが作れるようになり、それとともに脳が発達した。しかしその結果、唯一失ったのは移動の能力である。4本足で走れる動物と違い人間は2本足でしか走れない。このために走る速度はどうしても遅く、かつ長く動くこともできない。こうして人間は長い間馬を使ってきたが、やがて蒸気機関が発明され、これが鉄道に応用された。しかしそれよりももっと便利だったのは自動車である。このため社会に受け入れられ、より広く使えるようにするために、ヘンリー・フォードが1908年にT型フォードを製品化し、1914年までにベルトコンベアー式を用いる大量生産方式を発明した。その後の大きな技術変化はオートマチックトランスミッション、パワーステアリングにより運転が容易になり、最近の最も大きな変化はエンジンの弱いところをアシストするハイブリッド車であった。
実は自動車の普及を決定付けたのは、1912年にキャディラックにより初めて実用化されたセルモーターであったと考えている。それまでのエンジンの始動は、クランクを使って人間の手でエンジンを回す必要があった。そのために自動車の運転には運転助手が乗っていた。これがセルモーターにより、運転席に付けられたスイッチを押すだけでエンジンが始動できるようになり、力の弱い女性でも運転が容易になった。
このように現代に続くCO2発生の多い技術は人間にとって使い易かったために普及が大いに進み、その結果として温暖化を引き起こしている。そしてこれらの発明はすべて1800年代、すなわち19世紀の技術を原理の変わらないままに、今でも利用している。しかし実は、これが温暖化の本当の原因なのである。