MINIがポール・スミスとコラボレーション! ワンオフモデル「MINI STRIP」を初公開

MINIはこのほど、イギリスを代表するファッションブランド「ポール・スミス」とのコラボレーションによって製作されたワンオフモデル「MINI STRIP」を、ロンドンで初公開した。

シンプルさ、透明性、持続可能性をテーマに、デザインにより持続可能なアプローチを可能とするための刺激的なアイデアを盛り込む

MINI STRIPは、自動車製造における持続可能性というテーマへの革新的なアプローチに主眼を置いて製作。シンプルさ、透明性、持続可能性をテーマに、この車両はデザインにより持続可能なアプローチを可能とするための刺激的なアイデアが盛り込まれている。ベース車両となった3ドアボディのMINI Cooper SEは、その名が示す通り、全体的に不要物を取り除き、その構造上の真髄にまで削ぎ落とされた。そして、絶対に不可欠であると考えた要素のみを定義し、実装し、実現。持続可能性が前面に押し出されたルックスとなったのである。

外部からの視点を重要な発想源に

MINIは、外部からの視点に対して常にオープンに受け止め、自身に目を向け、様々な課題に対する独自の理解を深めている。自転車や書籍など、数多くのものに情熱をもつデザイナーとして、ポール・スミスは数々の問いを投げかけることで、目に見えるものの背後にあるものに光を当てる新鮮な刺激をもたらした。

ポール・スミスは次のように語っている。
「伝説的なMINIを新たな視点で捉えなおす機会が与えられたことに非常に感謝しています。従来のクルマにはなじみがあり大好きですが、私たちは伝統を尊重しつつ、未来を見据えることで、実にユニークなクルマを作り出しました。
MINIチームは、車両デザインを作り出すにあたって新たな手法を取ることに信頼を寄せ、自由を与えてくれました。それは私にとって冥利に尽きるものでした。私たちは、本質的なものを洗い出し、アイテムを絞り込み、自動車から不要なものを取り除くことで、何か全く特別なものを一緒に作り出した、と信じています」

”完璧な不完全さ”を表現したデザイン

エクステリアデザインは共同プロセスにおいて、最大限に削ぎ落すことで文字通りミニマリスティックで高品質のデザインが生まれたが、それでも斬新で型にはまらない雰囲気が保たれている。数多くのディテールに工夫が施され、エクステリアに全く独自の美しさを生み出している。

素材そのものがエクステリアデザインの意図的な要素となっている。カラー塗装は使用せず、ボディはむき出しの状態。薄く透明な塗膜のみがボディを腐食から保護している。亜鉛メッキ鋼板は、工場での研削痕を意図的に残しており、車両が紛れもなく実用品であり、頑丈な日々使用するアイテムであることを示している。この意図的にむき出しに見せる表面効果をポール・スミスは「完璧な不完全さ(the perfect imperfection)」と名付けている。

むき出しの素材がもつ表現力

MINI特有のブラックベルトのパーツは、再生プラスチックから3Dプリントされ、パネルと同様にむき出しの素材のままとなっている。自ら作業を行い、レーシングバイクのパーツを自身で交換したり改造する自転車愛好家のポール・スミスの着想で、ボディパーツには目に見えるボルトが使用されている。これは取り外しがいかに容易か、車両がそのライフサイクルを終えた後、原材料サイクルに再び組み入れることがいかに簡単かを示すものだ。3Dプリントによる際立つ質感を持った、3Dプリント製のフロントおよびリアエプロンインサートは、機能的で独特な印象を添えている。

電気自動車で典型的な、閉じたラジエーターグリルとホイールカバーはこのMINI STRIPでも採用されており、空気抵抗を低減し、理論上の航続距離を向上させている。グリルカバーとホイールのエアロプレートは、再生プレキシガラス製。これにより軽量化するだけでなく、資源も節約する。大きなパノラマサンルーフも再生プレキシガラス製で、室内の広範に内張りされていないむき出しの構造を見ることができる。

ディテールへのこだわり

MINIの「目の輝き(Twinkle in the Eye)」であれ、ポール・スミスの「ひねりのあるクラシック(classic with a twist)」であれ、いずれも、例えばコントラスト豊かなカラーアクセントなど、思いもよらないディテールを表している。これらのディテールをまずじっくり見るとデザイナーの仕事ぶりをうかがい知ることができ、そのディテールへのこだわりが感じられるものだ。これはMINI STRIPにもあてはまる。

ドアを開けると典型的なポール・スミスのストライプが目に飛び込んでくる。これは細いカラフルなラインで構成する5色のストライプである。また、充電リッドは、開いた状態でネオングリーンのカラーアクセントを添える。充電リッド上の刻印されたコネクターの図案は、ポール・スミス自身が作成したものだ。

極端まで削ぎ落したインテリア

シンプルさと透明性をモットーに、MINI STRIPは、インテリアに極端なまでの削ぎ落しを行っている。ダッシュボード、トッパーパッドおよびリヤシェルフを除いて、すべてのトリムパーツが意図的に取り除かれ、ボディシェルが視覚的にインテリアで大きな存在感を示している。とりわけ目を引くのは、ブルーのカラーで、ポール・スミスのたっての希望によるものだ。むき出しの素材と強烈なブルーがインテリアに独特な美しさをもたらしている。むき出しではあるが「装っている」ように見える。

通常は複数のパーツから成るダッシュボードは、スモークガラスのルックスを持つひとつの大きな半透明のコンポーネントのみで構成されている。円形のエレメントを備えたおなじみのMINIデザインに準拠し、形状はかなり単純化され、きわめてグラフィカルに実装されている。クラシックなセンターメーターパネルに代わり、所有者のスマートフォンがその役割を担う。スマートフォンがセンターディスプレイの位置に置かれ、自動的に車両に接続され、メディアコントロールセンターとなる。室内の唯一の触覚的な操作エレメントは、センタースタックの下にあるパワーウィンドウとスタート/ストップ機能用のトグルである。

革新的な素材が資源を大切にする

サスティナビリティ(持続可能性)の観点で、MINI STRIPの室内ではミニマリスティックな形状デザインと並んで、リサイクルされた環境に配慮した素材が中心に添えられている。内装にはレザーとクロームはまったく使用されていない。代わりに、シートはニットテキスタイルでカバーされている。単一素材として完全に実装することで、パイピングを含むシートカバーが完全にリサイクルされ、マテリアルサイクルが維持できると考えられる。フロアマットは再生ゴム製だ。人造大理石のようなパターンは、再生と製造プロセスの副産物であり、カラフルな要素を演出し、この素材において第二の活躍の場が与えられたことになる。

ダッシュボードのトッパーパッド、ドアパネル、リヤシェルフも形状が大幅に削ぎ落され、再生コルクで作られている。ここで使用されているコルクは、人工的な結合剤なしで成形でき、完全にリサイクル可能だ。コルクは、その心地よい強度と柔らかな感触が相まって、将来的には発泡プラスチックの代替品になると見られている。リサイクルの可能性と再生可能な原料としてのコルクは、製造中に二酸化炭素を結合するため、温室効果ガスを節減する可能性を提供する。さらにもうひとつプラスの副次効果がある。多孔質性の素材としてニットとコルクは室内音響にプラスに作用するのだ。

ミニマリスティックで機能的 —ディテール—

インテリアで目を引くステアリングホイールは、必要最小限の機能にまで絞り込まれている。ステアリングホイールのリムは、自転車構造に準じてハンドルバーテープが巻かれている。3本のアルミスポークが、ホーンパッドと接続されており、ホーンパッドはネットだけで覆われ、エアバッグが見える。目に見えるボルトは、エクステリアと同様に、アルミニウムを再利用できるように後で簡単に取り外すことができることを示している。1時の位置にある小さなポール・スミスのファブリックラベルは、インテリアで見い出すことのできるコラボレーションを示すものだ。

ドアパネルは、エアバッグを覆っているのと同じネット製。フレームで保持され、ドア構造が見えるようになっている。見る角度によって編み込まれたネットの透け具合が変化し、視覚的に室内の雰囲気を和らげる。ドアパネルのプルグリップには、クライミングロープが巻かれている。インテリアが明るいオレンジで、同色のベルトと同様に生き生きとした印象をもたらしている。アルミ削り出しのドアオープナーは、コルク製のパネル部分にあるプルグリップと同様に、ドア領域を高品質に仕上げている。ドアの上方に目を向けると、ルーフフレームに目に見えるエアバッグカートリッジが設置されているのがわかる。室内の目に見えるケーブル経路と同様に、このエアバッグカートリッジは、車両構造において基本的に表には出ない機能を意図的に演出し、美的に組み込まれている。

より持続可能な未来を見据えたアプローチ

その細部へのソリューションすべてにおいて、MINI STRIPではフォルムは機能に従っている。シンプルさ、透明性、持続可能性が、デザインプロセスにおける中心テーマとして、車両のあらゆる側面で認められる。特にインテリアではMINIの信条である「クリエイティブな空間の使用」を、先鋭的かつ本質的なMINIの新デザインで実現しており、自動車デザインにおいて資源のより持続可能な使用のための新たなアプローチでもある。

キーワードで検索する

著者プロフィール

モーターファン 近影

モーターファン