軽のBEV eKクロスEVは誰が買っている? 補助金は購入理由の第4位

三菱eKクロスEV P 車両本体価格:293万2600円
7月3日時点の情報(発売は5月20日)なので少し前になるが、三菱自動車の新しい軽自動車のEV、eKクロスEVは月販売目標の850台に対して4559台を受注したという。「三菱の軽からの乗り換えが多い?」と質問すると、担当者からは「それもありますが、弊社にはi-MiEVがありましたので……」との返答が返ってきた。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

「弊社にはi-MiEVがありましたので……」

三菱eKクロスEV P ボディカラーはミストブルーパール/カッパーメタリック(有料色8万2500円)

i-MiEVは2009年にまずは法人を中心に販売が開始され、翌2010年4月から個人向けの一般販売を開始した。i-MiEVを購入してEVの良さに惚れ込み、「次の軽EV」を待ち続けていたユーザーがいたということだ。i-MiEVユーザーのeKクロスEVに対する評価ポイントは、まず航続距離だ。モーターの最高出力が軽自動車枠の自主的な上限である47kW(64ps)であることは、i-MiEVもeKクロスEVも変わりない。最大トルクはi-MiEVの180Nmに対し、eKクロスEVは195Nmとなっている。

三菱i-MiEV。写真は最終モデル。価格は30万3000円だった。

搭載するリチウムイオンバッテリーの電力量は、i-MiEVが16kWhで、eKクロスEVは20kWhだ。単純計算するだけでも25%は航続距離が延びる。i-MiEVの一充電走行距離は10・15モードで160kmだった。筆者の実感としては、80km程度走ったら充電したくなる減り具合だったように記憶している。eKクロスEVの一充電走行距離は、JC08よりも現実に近いWLTCモードで180kmだ。短い試乗しか経験していないので自信を持っては言えないが、条件が良ければ8km/kWhは走りそう。7km/kWhとして実用上は140km走る計算だ。100km程度は電欠の不安を感じずに走れるだろう。ヒーターを付けるとガクンと航続可能距離が目減りするといった脅かし(?)も、eKクロスEVでは最新の技術によってだいぶ解消されているようだ。

MM48型交流同期モーター 最高出力:47kW(64ps)/2302-10455rpm 最大トルク:195Nm/0-2302rpm 駆動用バッテリー 総電圧:350V 総電力量:20kWh
バッテリー残量91%で航続可能距離は130kmと出ていた。計算上は142km走れることになる。
充電は200V 15A(3kW)から30kWのCHAdeMO急速充電に対応している。

eKクロスEVには衝突被害軽減ブレーキシステムをはじめとする予防安全技術が充実している(軽自動車トップクラスだ)のも、i-MiEVとの大きな違いで、買い換えユーザーから高評価を得ているという。そして、室内の広さ。eKクロスEVはハイトワゴンのeKクロスをベースにしていることもあり、室内の広さと使い勝手はeKクロス譲りだ。裏を返せば、結構な容量のバッテリーを搭載しているのに、居住性は犠牲にしていない。前席はもちろん、後席の足元スペースもゆったりしている。

後席はeKクロス譲りで広い。
ekクロスEVは運転席と助手席を分断するものがない。

i-MiEVは運転席と助手席の間にセンターコンソールがあり、手で引くサイドブレーキがあった。ekクロスEVは運転席と助手席を分断するものが何もない。運転席と助手席は独立して前後スライドが可能だが、ベンチシートのような密着ぶりなので、わざわざ外に出ることなく、左右に移動することができる。パーキングブレーキは手で引くタイプでも、足踏みでもなく、電動式だ。指一本で軽く操作ができる。リヤシートがスライドできるのもi-MiEVとの大きな違いで、「評価は雲泥の差」だという。

eKクロスEVに乗り換える理由

i-MiEVユーザーは「もうガソリン自動車に戻れない」と、eKクロスEVに乗り換える理由を説明するのだそう。静粛性の高さと、応答性が高く、リニアに加速するEVの走りの良さ味わってしまうと、どんなに静かに走ろうと思ってもエンジンノイズがつきまとう(当然だが)、エンジン車には戻りにくい。とくに、強く加速した際のEVとガソリン車の音とフィーリングの違いは歴然としている。EVはどこまでも静かで力強いのに対し、ガソリン車はエンジンがうなりを上げ、ワンテンポ遅れて車速がついてくる感じだ。

冒頭に記した受注の段階では、「三菱にお乗りのお客さまが半分くらい」だったという。当然だが、裏を返せば三菱ユーザー以外が半分を占めるということで、三菱自動車にとってはアウトランダーPHEV並みに、他社ユーザーからの乗り換えが多いという。そして、特徴的なのが、「増車」だ。他の軽自動車の2倍も、増車で注文するユーザーがいるのだという。

アウトランダーPHEVをすでに所有している、あるいは、新型アウトランダーPHEVの納車を待っているユーザーが、eKクロスEVを2台目として注文するのだという。自宅にすでに充電設備が整っているので、EVを初めて買うにあたって最大のハードルになる「充電」に関する問題がクリアされており、「購入に抵抗がない」と分析する。

パンプレットには、「補助金交付に関するご留意事項」として、 ●申請額が予算額に達した場合は受付終了となる婆があります。と書かれている。

注文するしないにかかわらず、eKクロスEVを検討しているお客さんにその理由を尋ねたところ、1位は経済合理性で、背景にあるのは昨今のガソリン高だと担当者は分析している。2位は静粛性を含め、EVならではの魅力。3位はガソリンスタンド。ガソリンを入れに行くのに、少なくないガソリンを消費しなければならない環境で生活しているユーザーもいる。そういう人たちで、かつ、自宅に充電設備を設けることができる層にとっては、ekクロスEVのような電気自動車が魅力的に感じられるということだ。掃除機を充電しておくような感覚で、クルマの充電ができてしまうのだから。

検討理由の4位は補助金で、全体の10%程度を占めるという。担当者の実感は「意外に少ない」というもので、東京・田町にある本社ショールーム(現在、ekクロスEVを展示中)を訪れた人を対象に調査したところ、3割が補助金の存在を知らなかったという。販売店に来店して初めて、「こんなに補助金出るんですか!」と驚く人もいるそう。
筆者もチラシを受け取って驚いた。これ見たら、「1台もらっておこうかな」と考える人が出ても、おかしくない。

三菱eKクロスEV P
全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm
ホイールベース:2495mm
車両重量:1080kg
乗車定員:4名
サスペンション:Fマクファーソン式/Rトルクアーム3リンク式
駆動用モーター
MM48型交流同期モーター
最高出力:47kW(64ps)/2302-10455rpm
最大トルク:195Nm/0-2302rpm
駆動用バッテリー
総電圧:350V
総電力量:20kWh


WLTCモード:124Wh/km
 市街地モード 100Wh/km
 郊外モード 113Wh/km
 高速道路モード 142Wh/km
一充電走行距離:180km

車両本体価格:293万2600円
メーカーオプション(33万円)
有料色8万2500円
先進安全パッケージ16万5000円
プレミアムインテリアパッケージ5万5000円
ルーフレール2万7500円

ディーラーオプション(10万3972円)
ドライブレコーダー(スタンドアローン)4万7322円
リヤドライブレコーダー(フロントドライブレコーダー)3万998円
フロアマット2万2352円
三角表示板3300円

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…