AT限定免許でも楽しめる!2020年代のロードスター選びはRFのATがアリな理由。

スポーツカーはMT一択でしょ!はもう古い。現代のロードスター選びはAT限定免許でも楽しめる2.0Lエンジンの「RF」がアリな理由。

ロードスター RF
ロードスター RF
日本国内で存分に楽しめるパッケージのスポーツカーといえば「マツダ・ロードスター」は外せない存在。そんなロードスターは、ライトウェイトスポーツカーの代名詞でもある。そのため現行型に設定されている軽量バージョン「990S」が絶対的正義のイチオシという声も大きい。しかし990Sには6速MTの設定しかなく、AT限定免許では運転することができない。では、ロードスターはATで楽しめないクルマなのか? 否、むしろATの2ペダルだからこその2面性を味わってほしいグレードも存在する。

TEXT◎山本晋也(YAMAMOTO Shinya)

多くの若者がAT限定免許を選択するなか、ロードスターでは990Sが本当にイチオシ?

ターボエンジンを積んだパワフルなスポーツカーが各社から出てくるなか、NA(自然吸気)エンジンだけの設定となるロードスター・シリーズはスペック的には若干地味な印象となっているかもしれません。しかし、全長4m足らずのコンパクトな2シータースポーツカーである「マツダ・ロードスター」は、日本を代表する「日本的なスポーツカー」といえるのではないでしょうか。

そのコンセプトを象徴するワードが「人馬一体」というのはよく知られているところでしょう。まさに理想のライトウェイトスポーツカーを目指したのがロードスターで、2021年12月の商品改良に合わせて登場した特別仕様車「990S」は、名前の通りに990kgと軽量に仕上げられている究極のロードスターという見方もあります。自動車メディアなどを見ていても、多くの著名ジャーナリストが「990S」を推している記事が多くあります。

しかし、特別仕様車「990S」は1.5Lエンジンと6速MTを組み合わせたパワートレインしか設定されていません。軽さを追求するという尖ったコンセプトからATという選択肢があり得なかったのは理解できますが、いまや新規で運転免許を取得する方の7割前後がAT限定免許を選んでいるという時代に、MTしか設定のないモデルをオススメするのは、どこか違和感を覚えます。

そもそもスポーツカーはMTで操るべきという主張は20世紀のマインドであって、2020年代にはふさわしくないような気もします。

いまや新規免許取得者の約7割がAT限定免許を取得しているという。スポーツカーはMT一択!という考えに固執するのではなく、ATでも楽しめるスポーツカーとしてロードスターRFをオススメしたい。

ロードスターには1.5Lソフトトップと2.0L格納式ハードトップの2種類がある。

あらためて、マツダ・ロードスターのラインナップを整理すると、1.5Lエンジンとソフトトップを組み合わせているのが「マツダ・ロードスター」となり、2.0Lエンジンと格納式ハードトップを組み合わせているのが「マツダ・ロードスターRF(リトラクラブル・ファストバック)」となります。いずれのエンジンも絶対的なパワーというよりは操りやすさを優先したもので、それぞれに6速MTと6速ATが設定されています。

ソフトトップも運転席に座ったまま開閉操作ができるように設計されていますが、よりスマートなのはインパネのスイッチを操作するだけでルーフが開閉する「RF」の方でしょう。実測値で13秒程度で開け閉めすることができるうえに、ルーフの状態はメーター内にアニメーション表示されるので、操作しながらシークエンスの妙を楽しめるのも魅力です。

電動式のリトラブル・ハードトップはスイッチひとつで開閉操作が完了する。開放感溢れるオープンスタイルと快適なクーペスタイルを簡単に切り替えることができる。

「ロードスターRF」ならAT限定免許でもスポーツカーの魅力を満喫できる!

さて、結論からいえばAT限定免許でスポーツカーを楽しむためにオススメしたいのは、2.0Lエンジンを積んだ「ロードスターRF」の方です。

ライトウェイトスポーツカーとしてみると、大人ひとり分以上重くなるRFは、ロードスターの魅力半減という声もありますが、それでも1.1t程度の重量ですから現代のスポーツカーとしてみると十分以上にライトウェイトです。
なお、大まかなイメージいえば排気量の大きなエンジンで20kg、ATで20kg、格納式ハードトップで60kgで、ソフトトップに比べ合計約100kgの重量増といったところでしょうか。

このように格納式ハードトップの影響でリヤが重くなっているのは、個人的な印象でいえば美点です。1.5LソフトトップのATと比べてもオープン時の前後バランスが優れているように感じます。ロードスターの走りはオープンで味わってこそ、というのであればRFの重さというのは決してネガになるとは思えません。

ちなみに、手元のメモに残っている数字を記せば、「ロードスターRF VSテラコッタセレクション」の前後軸重は、前580kg:後550kgとなっています。適度にフロントにバランスがいく重量配分なのでアクセルオフでフロント荷重にして、ステアリングを操作するというドライビングをリズミカルに楽しむことが可能です。

ATの方がクラッチやシフトの操作がない分、アクセルワークやステアリング操作に集中できるので、運転する楽しみをストレスなく感じることができるという利点もある。

スポーツカーだからといって常に峠を攻めるわけではない、余裕のトルクとATで街乗りをラクに流すのもアリじゃない?

そんなロードスターRF(2.0L・AT)ですが、パッと乗った印象はツアラー的かもしれません。ATのシフトスケジュールは燃費を考慮した印象があり、2020年代に求められる環境性能を意識させられる部分があるのは事実です。

ただし、スポーツカーだから常にギンギンの走りをするというのはスマートではないでしょう。日常とスポーツカーの共存という意味では205Nmという余裕のトルクを発生する2.0LエンジンとATの組み合わせというのは非常に現代的です。6速というのは少し足りないような気もしますが、せわしないシフトチェンジするよりも落ち着いた変速マップがスポーツカーらしいダイレクト感につながっているともいえる。

電動ルーフ化による重量増を考慮して搭載された2.0Lエンジンは184ps/205Nmを発生。トルクを生かした余裕のある走りと高回転でのキレの良さを両立していて、ATとのマッチングも良い。

ロードスターRFは「モード切り替えの2面性×ルーフの2面性」の味変を楽しみたい。

そして、なによりポイントはロードスターはAT車のみ「ドライブセレクション」という機能を備えている点です。

シフトレバー手前のスイッチで「SPORTモード」を選ぶと、エンジン特性、変速プログラムがアクセル操作に対して、よりダイレクト感が味わえるように変化します。ノーマルモードで乗っているときは刺激が少ないと思った2.0Lエンジンも、スポーツモードで高回転域を多用するようになるとエンジンサウンドの刺激があり、ロードスターという名前にふさわしいスポーツユニットであったことに気付かされるはずです。

こうした「日常と非日常、ハレとケ」を行き来するようなスポーツ性は、むしろロードスターRFの真骨頂といえるでしょう。ハードトップのルーフをクローズドにすればノイズも少なく、非常に快適な空間となるのもロードスターRFのアドバンテージです。

ルーフを開けるか閉じるか、ドライブセレクションをノーマルにするかスポーツにするか。それによって生まれるふたつ2面性でスポーツカーを楽しむ。という味変や肩肘張らないリラックス感は、むしろ2020年代のスポーツカーとして適切と感じますし、MT免許を持っている人でも、あえてATで2ペダルのロードスターRFを選びたくなる特徴といえるのではないでしょうか。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…