「ここに何を積んでやろう、と実にワクワクしてしまう」ダイハツ・アトレー【’22上期、最も刺さったこの1台】

「趣味のスポーツカーと、もう一台持つなら軽バンか軽トラがいい」と言うのはジャーナリストの佐野弘宗氏。昨年末、17年ぶりにフルモデルチェンジしたダイハツ・アトレーは、その積載性だけでなく、CVTもACCも実に具合が良く、ハイゼットトラックとともに、実に悩ましい選択肢のひとつだとか。
REPORT:佐野弘宗(SANO Hiromune) PHOTO:神村 聖(KAMIMURA Tadashi)/中野幸次(NAKANO Koji)

アシグルマは、維持費が安くて取り回しやすいのがイチバン

FFのホンダ N-VANと比べても、アトレーの小回り性能は圧倒的だ。

これはひとつの個人的な理想なのだが、とっておきの趣味のスポーツカーをガレージに置きつつ、自分専用のアシグルマを1台もてる生活ができるとしたら、アシグルマは維持費が安くて取り回しやすい軽バンか軽トラがいいと思っている。

私の場合、普段は1〜2人しか乗らないので、後席は必ずしも必要ない。だから乗用車である必要はまったくなく、バンやトラックなどの商用車のほうが頑丈で小回りもきく。これが白ナンバーの小型商用車だと車検が1年ごとになるなどのデメリットもあるのだが、軽商用車なら車検は2年ごとなので、その点も乗用車と大差ない。

そんなことを考えていた矢先、ダイハツがアトレー/ハイゼットカーゴを17年ぶり(!)にフルモデルチェンジした。この記事のテーマは「’22上期、最も刺さったこの1台」であり、アトレー/ハイゼットカーゴの発売も厳密には昨2021年末なので対象外ではある。ただ、「実質的な納車開始は年明け2022年から」であり、個人的にアトレーの実車を観察できたのも2022年初頭だったので、今回はお許しいただきたい。

4ナンバー商用車のプレイベート利用は増えている?

さて、アトレーはもともとハイゼットのワゴン版(5ナンバー乗用車登録)の商品名だったが、新型では4ナンバー商用車(の豪華版)に切り替わった。そういえば、ホンダのN-VANも、それ以前のバモスにあたるワゴンが廃止となった。軽商用車をプライベートに使いたい向きは、私と同じようなことを考える人が多いのだろうか。

乗り心地や操縦性だけでいえばFFベースのN-VANに分があるが、キャブオーバーのアトレーのほうが圧倒的に小回りがきく(アトレーの最小回転半径4.2mに対して、N−VANのそれ4.6〜4.7m)し、見切り性能も圧倒的にいい。それに、ひとめ見ただけで「ここにナ二を積んでやろう?」と純粋にワクワクしてしまう荷室長も、キャブオーバーならではの美点。こういうところが、個人的にアトレーに強くひかれてしまうツボである。

荷室長の長さにキャブオーバー車の利点が活きる。

ただ、お尻の下にエンジンを置いて、ボディ前端ギリギリに運転席があるキャブオーバーの場合、静粛性や高速性能、ドラポジに少しばかり難があるケースが多い。しかし、基本骨格から新しくなったアトレーは基本的な直進性や安定性が高まったことに加えて、新開発のCVTや、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)の実効性が素晴らしく高い。

CVT仕様のアトレーは100km/h巡航でのエンジン回転数が3000rpmを大きく下回り、先代とは比較にならないくらい静かになった。それにCVTならではの無段階変速がエンジンの美味しい領域をうまく引き出してくれるので、走りそのものも明らかに活発になった。私は今までMT車以外を購入したことのない強固なMT派なのだが、アトレーだけは圧倒的にCVT派である。

高速巡航時のエンジン回転数の低さやACCの出来の良さなど、もはや動的な快適性も従来の軽バンの範疇ではない印象。

そんなアトレーとはいえ絶対的な動力性能にはかぎりがあり、アクセルペダルを踏み続ければならない高速長距離走行はけっこう骨が折れるし、理想的とはいえないドラポジがさらに疲れを助長する。しかし、そこで重宝するのがACC。安全が確認できていればアクセルやブレーキ操作から解放されるので、高速長距離走行も圧倒的にラクになる。

……と、アトレーにひかれつつも、実際に購入するとなると、アトレーと同時に刷新された軽トラ=ハイゼットトラックとおおいに迷うことになるだろう。新しいハイゼットトラックはアトレー/ハイゼットカーゴとは異なり、厳密にはマイナーチェンジでACCもつかないのだが、CVTによって静粛性や動力性能は同じく大幅にアップしたし、アトレー以上に小回りがきくのだ。それにしても、クルマ選びというのは、こうして迷っている間がいちばん楽しい。

アトレーと迷うとしたら、さらにアシグルマ感の強いハイゼットトラックだ。

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