ルノー・キャプチャーE-TECH HYBRID 燃費も走りもいい! コンパクトSUVの超優等生

ルノー・キャプチャーE-TECH HYBRID レザーパック 車両価格:車両本体価格:389万円
ドッグクラッチを使ったルノー独自のハイブリッドシステム「E-TECH HYBRID」を搭載するモデル第三弾として、キャプチャーE-TECH HYBRIDが登場した。輸入車SUVナンバー1の低燃費と楽しい走り、しなやかな乗り心地のキャプチャーE-TECH HYBRID。要注目だ。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

輸入車SUVナンバー1の燃費と使いやすいサイズが魅力

全長×全幅×全高:4230mm×1795mm×1590mm ホイールベース:2640mm 車重:1420kg

キャプチャーE-TECH HYBRID(イー・テック・ハイブリッド)は、アルカナ、ルーテシアE-TECH HYBRIDに次ぐ、ルノーのフルハイブリッド車第3弾だ。カテゴリー的に見ると、アルカナとキャプチャーは同じSUVとしてくくることができる。ルノー・日産・三菱のアライアンスで開発したCMF-Bのプラットフォームを採用する点も、143psのシステム総合出力もアルカナと同じだ。

もっというと、22.8km/LのWLTCモード燃費もアルカナと同じであり、輸入車SUVナンバーワンの低燃費である。違いはボディサイズと重量、それにムードだろうか。アルカナの全長×全幅×全高は4570×1820×1580mmなのに対し、キャプチャーE-TECH HYBRIDの寸法は4230×1795×1590mmで、アルカナより330mm短く、25mmスリムで、10mmだけ背が高い。ホイールベースはアルカナの2720mmに対し、キャプチャーは2640mm(-80mm)だ。車両重量はアルカナの1470kgに対し、キャプチャーE-TECH HYBRIDは1420kg(-50kg)となっている。

ボディカラーはブルーアイロンメタリック

アルカナはルーフ後端が緩やかに傾斜するクーペスタイルとしているのが特徴だし、内外装にモータースポーツの血統を受け継ぐR.S. LINEのトリムを採用してスポーティに仕立てているのが特徴だ。全長方向の余裕を生かし、広々とした荷室スペースを備えているのも利点である。アルカナの荷室容量が480Lなのに対し、キャプチャーE-TECH HYBRIDは440Lだ。メーカー希望小売価格はアルカナが429万円なのに対し、キャプチャーE-TECH HYBRIDは374万円~389万円(レザーパック)となる。

トランスミッション:電子制御ドッグクラッチマルチモードAT ギヤ比はアルカナと同一だ。

全長4.2mクラスの輸入車SUVの視点で見ると、キャプチャーE-TECH HYBRIDはフォルクスワーゲンのT-Cross(304万3000円~370万8000円)やアウディQ2(408万円~445万円)のガソリンエンジンエンジン搭載車と競合することがわかる。ちなみに、1.3L直4ターボエンジン(最高出力113kW(154ps)/最大トルク270Nm、WLTCモード燃費17.0km/L)を搭載するキャプチャーのガソリンエンジン仕様は309万円~332万円だ。

エンジンは、日産開発の1.6ℓ直4自然吸気エンジンを積む。

ルノーもご多分に漏れず、将来的には全面的に電気自動車(EV)に移行する意思を表明しているし、本拠地フランスをはじめ、ヨーロッパでは2012年のゾエ(Zoe)を筆頭にEVの販売実績がある。ところがルノーはEVに切り替わるには長い時間が必要だと判断し、完全EVに移行するまでにCO₂排出量を削減する実効的な手段として、ハイブリッド車が必要だと判断し開発に臨んだ。それが、E-TECH HYBRIDというわけだ。

有り体にいえば完全EVに移行するための「つなぎ」なので、開発コストは抑えたい。例えば、E-TECH HYBRIDが搭載する1.6L直4自然吸気エンジンは専用開発ではなく、アライアンスの資産を有効活用したものだ。ルノーの表記ではH4M型だが、日産風に表記すればHR16DE型で、気筒あたり2本のデュアルインジェクターや摩擦抵抗低減に効くミラーボアコーティング、DLCコーティングを施したバルブリフター、ポンピングロス低減に効果のあるクールドEGRなどの技術はHR16DEから受け継いでいる。

ハイブリッドシステムは燃費を向上(させるとCO₂排出量削減につながる)させるために効率にこだわったが、それが結果的にシンプルな機構につながり、ダイレクトで気持ちのいい走りにつながった。機構がシンプルなので軽量・コンパクト化にもつながり、コストに関しても有利に働く。エンジンとメインモーターを走行状態とドライバーの意図に合わせて効率良く使うため、エンジン側に4段、モーター側に2段の変速機構を設けた。マニュアルトランスミッション(MT)のギヤ機構をベースに、変速を自動化させたものだ。

MTには変速時のショックを和らげるために回転同期機構(シンクロナイザー)が設けられているが、この機構を用いるとショックの低減と引き換えに伝達ロスが生まれる。ルノーはこれを嫌い、F1で使用しているドッグクラッチの使用を思いつき、実行に移した。回転同期機構を介さず、犬の歯の形状に由来するドッグと呼ぶ突起と突起をダイレクトに噛み合わせるため、変速スピードや伝達効率の面では非常に有利だ。だが、その代わり音とショックが出る。

そこで、ルノーは開発の途上でサブモーターを追加することに決め、このサブモーターで変速時の回転を同期させることで音やショックの問題を解決した。サブモーターは発電も行なう。E-TECH HYBRIDはコストを強く意識しているが、バッテリー容量は1.2kWhあり、いわゆるシリーズ/パラレル方式のハイブリッドとしては大きな容量を確保している。効率やコストを重要視しているが、「それを削ってしまってはオシマイだろう」という一線はあって、それがバッテリー容量だったということだ。

タイヤはF/R215/55R18サイズ
銘柄はグッドイヤーのエフィシエントグリップを履く
リヤサスペンションはトーションビーム式。CMF-Bプラットフォームのスタンダードだ。
搭載しているリチウムイオン電池の容量は1.2kWh

想像以上にEV走行のカバー範囲が広いのだ

おかげで、E-TECH HYBRIDはモーター走行(EV走行)の領域が広い。発進は必ずEV走行で、このときの運転フィーリングはまるっきりEVと同じだ。静かで、アクセルペダルの動きに対する力の出方がリニアで、ダイレクトだ。バッテリー容量はバッテリー出力に比例するので、バッテリー容量が小さなハイブリッド車だと、少し強めにアクセルペダルを踏んだだけでバッテリーが音を上げてしまい、エンジンの力を借りなければならなくなる。その点、E-TECH HYBRIDはバッテリーが結構粘り、想像以上にEV走行のカバー範囲が広い。

ラゲッジルームの積載量は440L(アルカナは480L)
2段になっている。

エンジンが主役になってからは、ドライバーの加速要求や車速に応じて、変速段を切り換える。前述したようにサブモーターで回転を同期するので、ショックとは無縁だ。発進から全開加速するようなシーンでは、段付きトランスミッションが自動変速していくように、ステップ状にエンジン回転が変化していく。加速のフィーリングとマッチして気分が盛り上がる仕掛けだ。

メーター内の表示を切り替えてエンジンとメインモーター、サブモーターの働きや回生ブレーキの様子を確認すると、エンジンとメインモーターの動力混合、エンジンのみ、エンジンで走行しながら同時に発電しバッテリーに充電、回生、EV走行と、目まぐるしく切り換えながら走っているのがわかる。低速時にEV走行しているときはさすがに静けさでそれとわかるが、主にロードノイズが大きくなる中高速域では、どのモードで走っているのかわからないし、気にならない。ただ、気分良く走るだけだ。

そうして気分良く走った後で燃費計を確認してみると、「こんなに走るの?」と驚きの燃費を記録していることに気づく。E-TECH HYBRIDは企業戦略的には完全EVに移行するまでの「つなぎ」かもしれないが、システムの仕上がりは場つなぎや時間稼ぎレベルではまったくなく、効率の高さと走りの楽しさを高次元で両立したクレバーな機構と制御で成り立っているのを実感する。走って楽しく、燃費の良さに驚かされるハイブリッド車だ。

ルノー・キャプチャー E-TECH HYBRID レザーパック
全長×全幅×全高:4230mm×1795mm×1590mm
ホイールベース:2640mm
車重:1420kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:H4M型
排気量:1597cc
ボア×ストローク:78.0mm×83.6 mm
圧縮比:
最高出力:94ps(69kW)/5600pm
最大トルク:148Nm/3600rpm
燃料供給:PFI
燃料:プレミアム
燃料タンク:50ℓ
メインモーター:5DH型交流同期モーター
 最高出力:49ps(36kW)/1677-6000rpm
 最大トルク:205Nm/200-1677rpm
サブモーター:3DA型交流同期モーター
 最高出力:20ps(15kW)/2865-10000rpm
 最大トルク:50Nm/200-2865rpm

燃費:WLTCモード 22.8km/ℓ
 市街地モード20.4km/ℓ
 郊外モード:24.1km/ℓ
 高速道路:22.6km/ℓ
トランスミッション:電子制御ドッグクラッチマルチモードAT
車両本体価格:389万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…