名車に乗るなら純正にこだわりたい! R32スカイラインGT-Rを大人スタイルで楽しむオーナーに脱帽!

奥多摩湖畔にある大麦代園駐車場は、毎月第三日曜日になると朝早くから古いクルマが集まる。東京旧車会というミーティング形式のイベントが開催されるからだ。年式に制限がないため比較的新しいモデルの姿も多く見受けられることが特徴で、8月21日には程度良好なR32スカイラインGT-Rが駆けつけた。オーナーのこだわりを聞いて大人の楽しみ方だと感じたので紹介しよう。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
1994年式日産スカイライン2ドアスポーツクーペGT-R。

国産中古スポーツカーが世界的に注目され、相場が高騰する原因にもなった存在がR32スカイラインGT-R。現在は人気が落ち着いたようでR33やR34の高騰ぶりが激しく感じられるが、それでもR32GT-Rの多くの売り物が新車価格以上で流通していることに変わりはない。もはや国産旧車の代名詞といっていいほど人気が定着したR32GT-Rだから、今後も大きく相場を上下させることはないだろう。むしろこれからは値上がりを期待して投機的に買うケースが減り、本当に好きな人たちの間で乗り継がれていくと思われるし、そうあってもらいたい。

R32GT-Rとして最終年式になる。

8月21日に東京の奥多摩湖畔にある大麦代園駐車場で恒例となった東京旧車会が開催されたが、この日は雨模様であることを嫌ってキャブレター時代の旧車が少なく80年代以降の比較的新しいモデルが目立つことになった。中でも朝一番から駐車場に停められていたR32GT-Rは、比較的ノーマルを維持しているように見えて注目度が高かった。GT-RといえどもR32は発売開始からすでに30年以上が経つ古いモデル。当時のように激しいチューニングを施したとしても最新の高性能車と同じようには乗れなくなっている。それであるなら、古いクルマらしく雰囲気を楽しむのが今風といえるかもしれない。そう考えると、このシルバー塗装のGT-Rに好感が抱けることだろう。

ニスモダクトやフードトップモールなどを追加している。
アルミホイールは純正のままにしている。
GT-Rの特徴である巨大なリヤスポイラーの下にもニスモと同じ小型スポイラーを追加。
マフラーもニスモ製に変更してある。

クルマのそばにいたオーナーにお話を聞いた。児玉孝志さんは現在60歳になる方で、このGT-R以外にもスーパーセブンやカマロなどをお持ちのマニア。いずれも走りの方向性は異なるから、同時に所有していてもそれぞれの個性を楽しむことができるようだ。児玉さんがこのGT-Rを手に入れたのは比較的最近のことで、今から5年前のこと。R32GT-Rの中古車相場が上がり始めた頃であり、高騰する直前であったため驚くような金額ではなかったそうだ。ただ、当時から安い買い物ではなかった。というのもシルバー塗装は新車時のままであるし、さらには走行距離を聞いて驚いてしまったほどだ。

ステアリングホイールをナルディに、ペダルをアルミ製に変更。
走行距離は驚きの6万キロ台!

注目の走行距離はなんと今も6万キロ台に留まっているほどで、購入時から距離を伸ばさない程度に楽しまれているというのだ。距離が伸びていないということもあるのだろう、児玉さんはノーマルであることも大事にされている。一見ニスモ風に見える外装だがこの個体はベースグレードのGT-R。スタイルを変更するとしても純正で存在した姿でありたいと考え、すべてニスモ製をパーツを使って仕上げたもの。社外品を使わないようにしているから、今後手放すことがあったとしても個体の価値は変わらないことだろう。

傷んだ運転席の座面だけ張り替えた。

室内も外装同様にいつでも純正に戻せる程度にしかカスタムしていない。ステアリングホイールとペダルを変えるだけに留めているからだ。ただ、運転席の座面が傷んでしまったので、ここだけ張り替えてあるくらい。R32に多いダッシュボードの浮きなどなく、保管状態も良好なのだろう。紫外線が大敵なのは古いクルマに共通することで、比較的新しいR32といえども今後はできるだけ直射日光が当たらない場所で保管したいもの。

オーバーホールもチューニングもしていないRB26DETT型エンジン。
年式を考えてタイミングベルトは交換している。
ストラットタワーバーもニスモ製を装着。

距離が伸びてなく程度も良好な状態だから、購入されてからはトラブルと無縁だったように思える。ところが、やはり年式相応にトラブルが頻発されたそうだ。まず壊れたのがエアコン。この年代だとお約束のように壊れる筆頭で、児玉さんも無縁ではなかった。けれどR32は人気車種であるため補修部品に困ることはなく、また修理に対応してくれる電装工場も多いことから費用はかかったものの修理することができた。壊れたのはエアコンだけでなく、エアフローメーターも続いて壊れた。走行距離というより経年劣化によるもので、エンジンの調子が崩れた場合に疑う筆頭でもある。ここも純正部品に交換することで対処した。さらに壊れたのがパワーウインドー。電装系は年式が古くなるとどうしても接点やハーネス自体の劣化、さらにはモーターの寿命などにより不動となるケースが多い。こうなると故障と修理を繰り返しているように思えるが、一通りトラブルが出尽くせばしばらくは安心して乗ることができることだろう。新車を数年で買い替えるケースと比較すれば、同じクルマに長く乗ることは費用がかかる。けれど、かかった費用を上回るくらい楽しいクルマなら、それでも乗り続けられるということだろう。ノーマルを維持しながら、月に一度のミーティングをワインディングロードまである奥多摩で楽しむ。大人な楽しみ方をされているとつくづく思ったオーナーとGT-Rの付き合い方だった。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…