町で見かける働き者、赤いアイツも『トミカ』であります!!

トミカ × リアルカー オールカタログ / No.68 郵便車

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.68 郵便車 (サスペンション可動/後部ドア開閉 ・希望小売価格550円・税込)

郵便車と一口に言っても鉄道車両と自動車の2種類があります。この『トミカ』の『No.68 郵便車』は当然ながら自動車の方の郵便車で、郵便物を運送するために郵便事業者――日本郵政グループ(日本郵便株式会社)――が主に郵便物の集配に用いる自動車です。このほかにも郵便事業者から郵便物運送委託法などに基づき郵便物の輸送の委託をうけた輸送委託事業者――日本郵便輸送(旧・日本郵便逓送)や日本通運などの運送会社――が主に郵便局間などの拠点間の郵便物輸送に用いるトラックなども郵便車と呼びます。

郵便物の集配に用いられる郵便車の主力は軽自動車の1BOXバンだ。現在、日本郵政グループでは脱炭素社会への取り組みとして積極的に画像のような電気自動車を導入している。(PHOTO:日本郵政グループ)

昔は郵便物は郵便馬車や人力の荷車で運ばれていましたが、技術の発達とともに自動車が用いられるようになります。最初はトラックによる郵便局間などの拠点間の郵便物輸送から自動車の利用が始まりました。これを特に逓送車(ていそうしゃ)と呼びました。乗り合いバスに貨物として積み込んで輸送することもあり、これは現在でもJR四国バスなどで行なわれています。

まだまだ郵便車の主役はおなじみの軽自動車とスクーター。画像の車両は『トミカ』と同じスズキのDA64V型エブリィだ。(PHOTO:伊豆の国市)

こうして自動車によって郵便局に運ばれた郵便物は、徒歩や自転車で各戸に配達されたり郵便ポストなどから集められたりしましたが、この集配業務もやがてスクーターや自動車が使用されるようになっていきました。『トミカ』の『No.68 郵便車』は、主にこの集配業務に使用される軽自動車の商用1BOXバンを再現しています。郵便車は1950年に当時の郵政省――現在は総務省と郵政事業庁――によって定められた『郵便専用自動車車体規格規準』により箱型車体を原則とすることが定められ、車種別の荷台容積や塗色、標識表示についても全国統一規格化されました。この時に車体の赤色塗装と郵便マークの標識掲出が定められています。しかし郵政民営化以後、近年では郵便物の輸送委託をうけた新規参入事業者の車両の中には、郵便マークの標識掲出はしているものの、赤以外の塗色を車体に用いている車両も見られるようになってきています。

スズキ DA64V型 エブリイ 実車フロントビュー(GA 標準ルーフ スペリアホワイト)
スズキ DA64V型 エブリイ 実車リヤビュー(PA/PU ハイルーフ スペリアホワイト)

さて、近年ではSDGsや脱炭素社会を目指す取り組みに則ってEV化も推進されている郵便車ですが、『トミカ』の『No.68 郵便車』は、何車種かある郵便集配業務に使用される軽自動車の中でも依然として幅広く使用されているスズキのエブリイをモデル化しているようです。これは車体前後にスズキのエンブレムが入れられていることから推測できます。

エブリイは1964年に登場した軽バンのキャリィバンが1979年に7代目を迎え、1982年にそれがマイナーチェンジされた時、型式名をST30型からST41V型にあらためるとともに車名を『キャリィバン・エブリイ』としたものを初代と数えます。以後、代を重ねて2015年にデビューした6代目(キャリィバンとして数えると通算12代目)にあたるDA17V型が現行最新モデルとなりますが、『トミカ』の『No.68 郵便車』はスタイリングと各部のデザインから、2005年にデビューして2015年まで製造された、先代となる5代目モデルのDA64V型を再現しているようです。

DA64V型のインパネまわり。画像はPCの3速AT車のもの。
DA64V型はATだけでなくMTもパネルシフト化されていた。画像はPCの5速MT車。

この5代目モデルは外観上、GA以外の全グレードがリヤコンビランプをバンパーに組み込んで後部ドアの開口部を広くしているのが特徴なので、細かく言えば『トミカ』の『No.68 郵便車』もGAグレード以外のグレードを再現したものとなります。また、この5代目モデルは5速マニュアル車を含めて全車がインパネシフトを採用しており、前席の左右ウォークスルーが可能になっているのも大きな特徴です。乗用モデルのエブリイワゴンでは軽自動車では初となる後席パワースライドドアを装備(PZターボと同スペシャル)したことも話題となりました。この5代目モデルは長い販売期間中に仕様変更が重ねられ、1型から6型まで進化しています。

DA64V型のインテリア。画像はPCの3速AT車。貨物車だけに基本的には後部シートはヘッドレストさえ無い補助的な物だが、「プロの仕事道具」といったおもむきがある。

さらに、エブリイは2代目モデルからマツダに対してスクラムとしてOEM供給されていましたが、この5代目モデルは新たに日産に対してNV100クリッパーとして、三菱自動車に対してはミニキャブ(あるいはタウンボックス)としてOEM供給されることとなり、日本国内の自動車市場では珍しい4兄弟車種となっています。赤塗色ボディの例は見当たりませんでしたが、新規参入業者による白塗色や銀塗色の郵便車の中にはNV100クリッパーやミニキャブのものがあるようですので、少し難しいですが、『トミカ』の『No.68 郵便車』を塗り替えて他車種として楽しむのも面白いかも知れません。

可愛らしい赤いボディに細かく描かれた郵便マーク類、後部ドアの開閉機構など、たいへん上手く実車を再現している『トミカ』の『No.68 郵便車』は、部屋に1台あるだけでも、きっと楽しい気分にさせてくれることでしょう。

■スズキ エブリィ PA 2WD/MT(DA64V型) 主要諸元(『トミカ』モデル車両とは同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):3395×1475×1875

ホイールベース(mm):2400

トレッド(前/後・mm) :1300/1290

車両重量(kg):880

エンジン形式:K6A型直列3気筒DOHC

排気量(cc):658

最高出力:36kW(49ps)/5800rpm

最大トルク:62Nm(6.3kgm)/4000rpm

トランスミッション:5速MT

サスペンション(前/後):ストラット/トレーリングリンク

ブレーキ(前/後) :ディスク/ドラム

タイヤ:(前後) 145R12-6PR LT

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