都会派のカッコいいクレーン、『トミカ』にあります!!

トミカ × リアルカー オールカタログ / No.73 コベルコ ラフテレーンクレーン パンサーX 250

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.73 コベルコ ラフテレーンクレーン パンサーX 250 (運転台旋回/ブーム伸縮&上下・希望小売価格550円・税込)
No.73 コベルコ ラフテレーンクレーン パンサーX 250のリヤスタイリング。コンパクトにまとまっているのがよくわかる。
No.73 コベルコ ラフテレーンクレーン パンサーX 250のブーム最大伸長時。大きくスタイルが変わる面白さはクレーンならではの魅力。

ご存じのようにクレーンとは人の力では持ち上げられない大きなものや重いものを吊り上げて運ぶ機械――起重機――です。新しい機械のように思えますが、日本では867年ごろ、奈良・東大寺の大仏の修復作業に初歩的なクレーンが使われたという記録が残っています。このクレーンにも様々な種類があり、自分で現場まで移動できる自走式クレーンのうち、走行とクレーン操作を一つの操縦席で行なえ、4輪駆動・4輪操舵システムを搭載して凹凸の悪路や狭い道でも走行や作業が可能なものをラフテレーンクレーン、あるいはラフタークレーンと呼びます。ラフテレーンとは英語で荒れた地面や土地、不整地のことで、そのような場所で使用できるクレーンという意味です。

コベルコ ラフテレーンクレーン パンサーX 250(RK250-8)の実車フロントビュー。

『トミカ』の『No.73 コベルコ ラフテレーンクレーン パンサーX 250』のモデルとなっているラフテレーンクレーン『パンサーX 250』は、コベルコ(神戸製鋼)グループに属するコベルコ建機が開発・製造する25トン級のラフテレーンクレーンで、最初のモデルは2008年にデビューしました。以後、改良が続けられ、2022年現在の最新モデルは初代『パンサー250』から数えて9番目のモデルとなる“RK250-9(ダッシュ・ナイン)”になりますが、名称は『パンサー250』へ戻っています。

逆サイドから見たコベルコ ラフテレーンクレーン パンサーX 250実車。

『パンサーX』シリーズは初代『パンサー250』から数えて7番目――“RK250-7(ダッシュ・セブン)”――そして17年ぶりのフルモデルチェンジとなるモデルで、日本国内だけでなく世界市場の開拓も目指し、様々な技術を詰め込んだ画期的なラフテレーンクレーンです。従来より軽量コンパクトでありながら、従来機と同等のクレーン能力を持つラフテレーンクレーン、つまり従来の25トン機では進入できなかった狭小地にも入ることができ、高いつり上げ能力で作業ができることを基本コンセプトに開発されています。

道路は一定の構造基準により造られていますが、道路の構造を守り、交通の危険を防ぐため、道路を通行する車両の大きさや重さの最高限度が道路法という法律で定められています。この最高限度のことを「一般的制限値」といい、いずれか一つでも超えた車両は「特殊車両通行許可」を得なければなりません。審査の結果、道路管理者が通行することがやむをえないと認めるときは、通行に必要な「条件」を附して「許可」します。この「条件」を「通行条件」といいますが、これは最も運行自由度が高いAから最も厳しいDまでの4段階に分かれています。従来、22~25トン級のラフテレーンクレーンの基本通行条件は誘導車などが必要なC条件となるのが普通でした。

『パンサーX』シリーズは運行の自由度が増して利便性が高まるように、軽量コンパクトを追求されて作られた。車幅は車両制限令の制限値以下の2.49mに抑えられている。

『パンサーX』シリーズは誘導車などが不要となり、さらに運行の自由度が増して利便性が高まるB条件を目指して開発されました。特に車両サイズのコンパクト化は極限まで追求され、車幅は車両制限令の制限値以下で、ミラーと電柱の接触する不安のない2.49mに抑えられています。また新型スラントブーム(1989年神戸製鋼が開発)を搭載し、突出部分は収納時で、従来機の約半分に抑えることに成功。さらに収納時にブーム先端が下がる形状によって、座席からの視界が大幅に改善されています。

エンジンをアッパーに搭載し、クレーンのカウンターウェイトとして利用する国内ラフテレーンクレーン初の試みも導入されている。

さらに、従来はキャリア(走行車体)側に設置されてきたエンジンをアッパー(上部構造物)に搭載し、クレーンのカウンターウェイト(釣り合いを取るための重り)として利用する国内ラフテレーンクレーン初の試みも導入されており、発進加速性に優れて変速が滑らかなHST(静油圧変速機)による油圧走行駆動方式を採用しています。

『パンサーX 250』はまた、「威圧感なく街に溶け込むデザイン」という点が高く評価されて2008年度のグッドデザイン賞を受賞しており、まさに“シティコンシャスクレーン(市街地意識型クレーン)”(「荒れ地で使われるクレーン」という意味の「ラフテレーンクレーン」ではなく、都市で使われるクレーンにふさわしい名称としてコベルコが名付けた独自の名称)の面目躍如としています。

『パンサーX 250』の運転席は環境に配慮されると同時に、オペレーターに快適な空間を提供している。

『パンサーX 250』は世界中で高く評価されて様々な現場で使用されていますが、面白いところでは、その軽量コンパクトな点を買われたのか、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦『いずも』や『いせ』などの艦載クレーン車としても用いられています。

『トミカ』の『No.73 コベルコ ラフテレーンクレーン パンサーX 250』は、その外観デザインと施された塗装のパターンから、2008年にデビューした、『パンサーX』としては初代、初代『パンサー250』から通算7番目のモデルであるRK250-7をモデル化しているものと思われますが、実車のデモ車の塗装パターンとしては2013年デビュー『パンサーX』としては2代目となるRK250-8に近く見えます。モデルは走行時のコンパクトなスタイリングが上手く表現されており、ブームの伸縮や上下動、運転台の旋回など多彩なギミックが魅力的な1台です。

■コベルコ シティコンシャスクレーン パンサーX 250(RK250-7)主要諸元

全長×全幅×全高(mm/走行時):8960×2490×3475

ホイールベース(mm):4000

トレッド(前後・mm):2070

車両総重量(kg):25995

エンジン:日野J08E-UV型 直列6気筒インタークーラーターボ付き直噴ディーゼル

排気量(cc):7684

最高出力: 209kW(284ps)/2100rpm

最大トルク:996Nm(102kgm)/1600rpm

トランスミッション:2速HST(静油圧式変速機)

サスペンション(前後):全浮動式ハイドロニューマチック

主ブレーキ(前後) :空気式ドラム

タイヤ(前後):385/95R25 170E ROAD

クレーン形式:(ブーム)箱型6段式(2~4段単独伸縮、5・6段同時伸縮)ワイヤロープ併用油圧伸縮式/(ジブ)圧縮トラス式(2・3段箱型引き出し式)横抱下張出式ツイストジブ/(スカイチルトジブ)油圧無段階傾斜式

補助シープ形式:ブーム先端取付、フック巻切り上方格納式

クレーン最大定格荷重:25000kg×3.5m(7.35mブーム/7本掛)

ブーム長さ(m):7.35~30.62

ジブ長さ(m):5.8/8.9/12.0

フック最大地上揚程(m):(主)31.5/(ジブ)43.2

最大作業半径(m):(ブーム)28.2/(ジブ)33.6

巻上ロープ速度(m/min):(主巻)122/(補巻)107

旋回速度(rpm):1.9

アウトリガ形式:全油圧式H型またはX型

アウトリガ張出幅(m):(H型)6.3/5.9/5.1/3.8/2.12 (X型)6.3/5.9/5.1/3.8/2.98

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