三菱のレジェンドドライバー増岡浩が語るラリーアートの復活とアジアクロスカントリーラリー参戦への意気込み。トライトンラリーで上位入賞を目指す!

7年ぶりに復活した三菱ラリーアートがモータースポーツシーンにも帰ってくる! その第一歩として挑むのがアジアクロスカントリーラリーだ。チーム三菱ラリーアートを率いるのは総監督となった三菱のレジェンドドライバーの増岡浩氏。増岡氏の語るアジアクロスカントリーラリーの展望と、三菱ラリーアートの未来とは!?
REPORT:MotorFan編集部 PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

増岡浩監督が語るラリーアートと三菱の未来

7年ぶりの復活となった三菱のモータースポーツを担う「ラリーアート」。すでにアフターパーツの展開やコンプリートカーの製作など、積極的に活動している。その一環としてモータースポーツにも復帰が決定。アジアクロスカントリーラリー(AXCR)2022にトライトンでの参戦を発表し、増岡浩氏を総監督としたチーム体制も公開されている。
今回その増岡監督に、復活を果たしたラリーアートと三菱の役割や将来の展望について語ってもらった。

「チーム三菱ラリーアート」がアジアクロスカントリーラリー2022の参戦体制を発表。増岡浩氏が総監督として参画。

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■「三菱らしさ」を広く伝える
世界中に多くの自動車メーカーが群雄割拠し、その一方でグローバル化やグループ化が進んでいく中で「三菱らしさとは何か?」を考えたとき、それは「走り」であり「楽しさ」であり、やはり「モータースポーツ」だという。特にWRCやダカールラリーなどで長年培ってきた「4WD技術」や「走破性」については特に自信を持っていると言う。
安全で安心、しかもどこにでも行けるのが三菱のクルマである。
そういった「三菱らしさ」を伝えることがラリーアートの大きな使命であり、その一環としてのモータースポーツなのだ。

チーム三菱ラリーアート総監督・増岡浩氏

■三菱の伝統を受け継ぐ社員を育てる
やはり三菱はダカールラリーやWRCといったモータースポーツに憧れて入社してきた社員も少なくない。ラリーアートの復活はそういった社員、社内のモチベーションをより高める役割も担っている。
さらに、増岡監督を中心としたベテラン世代から若い世代への世代交代を進め、三菱の伝統を受け継いでいく時期に来ていると言う。

今回のアジアクロスカントリーラリーでも増岡監督自身がドライバーとして出場しないのか?と言う声はあったそうだ。
「確かにまだまだ乗れるけどね」
と笑うが、世代交代のために総監督というポジションでラリーの臨むことにしたのだ。
トライトンラリー先行試験車の同乗試乗でドライバーを務めた小出一登氏は、増岡監督が育てた三菱のナンバーワン開発ドライバー。このように、かつて最前線で戦ったベテランと若手が融合した体制が上手く作られてきている。
アジアクロスカントリーラリーはまさにその試金石となる。

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実戦への展望……目指すは上位入賞!

■主戦場はアジア
復活ラリーアートのモータースポーツ活動としてアジアクロスカントリーラリーを選んだ理由はどのあたりにあるのだろうか?
ラリーアートはまだ復活したばかりでリソースは限られており「今あるものでどこまでできるか?」を考えたとき、三菱の現在の主戦場の一つであるアジアをターゲットにすることにしたと言う。アジアでモータースポーツを戦うのであれば、アジアでも人気のピックアップトラックが鎬を削るアジアクロスカントリーラリーという選択になる。
幸い三菱にはトライトンがある。

トライトンラリー先行試験車

■競技車両社内開発の伝統
トライトンはアジアクロスカントリーラリーのT1(ディーゼル)クラスに出場する。チームの運営は三菱社員が派遣されるが基本的に現地チームに委ねられている。では、競技車両の開発はどのような体制なのだろうか?
三菱は伝統的に世界で戦う競技車両も社内で開発してきている。
WRCでもスバルがプロドライブ、トヨタがTTEといったヨーロッパのモータースポーツ会社で開発を進めるなか、三菱はRAE(ラリーアートヨーロッパ)がチームを運営していたものの、開発は一貫して岡崎で行われていた。
これは「競技車両の開発は市販車の開発とリンクしているべき」と言う三菱の哲学であり、トライトンラリーの開発についてもそれは貫かれている。

競技車両の開発については既報の通りだが、その先行開発としてノーマルのトライトンを北海道のテストコースに持ち込み、増岡監督と開発ドライバーの小出氏が交代々々で1kmのダートコースを3日で600周走行。過酷な状況でのウィークポイントの洗い出しが行われたが、驚くほど壊れなかったと言う。

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■ライバルはイスズ&トヨタ
開発は順調に進んでいるようだが、実際どのくらいのリザルトが残せるだろうか?
ラリーアートは2009年のダカールラリーを最後にモータースポーツから撤退しており、その後は三菱として2012年〜214年のパイクスピーク挑戦や、アジアクロスカントリーラリーにアウトランダーPHEVで出場するなど、電動車の先行開発がメインになっていたため、本格的な競技にはブランクがあるのは否めない。

特にイスズ・D-MAXとトヨタ・ハイラックスはアジアクロスカントリーラリーで長年鎬を削っており、2022年大会でも優勝争いを繰り広げることは間違いない。先行するライバルにどれほど迫るかはわからないがが、増岡監督はそこに割って入って上位入賞を勝ち取りたいと考えており、着々とその準備を進めている。

総監督・増岡浩とは?

■増岡浩
1960年、埼玉県生まれのらラリードライバー。1987年より三菱/ラリーアートのドライバーとしてダカールラリーに参戦。2002年には1997年の篠塚健次郎以来となる日本人2人目の総合優勝を果たしたばかりか、翌2003年には日本人初の連覇を成し遂げている。ダカールラリーには2009年まで出場し16度完走。総合優勝2回、総合2位2回、クラス優勝2回などの好成績を収めた。三菱のダカールラリー撤退後の2010年からは三菱の社員として活動。2012年〜2014年にはパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに電動車で挑戦し、好成績を収めた。

2002年ダカールラリー優勝車(パジェロスーパープロダクション仕様)と増岡監督。「V6NAエンジンのサウンドは最高」と語る。
取材当日は2002年にダカールラリーで優勝したパジェロ(スーパープロダクション仕様)と、2015年にバハ・ポルタレグレ500に出場したアウトランダーPHEV(TE仕様)も展示された。どちらも増岡監督がドライバーとして駆った車両だ。

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