「ワークス、音楽、ファッションの順に好き。」人気キャラクターも登場した2代目アルトワークス【連載|スズキ・アルトワークスを語り尽くす】

2代目スズキ・アルトワークスはスタイル一新。コレが速いんだ!|Dr.SUZUKIのワークス歴史講座_Vol.3

2代目アルトワークスのカタログ写真
2代目スズキ・アルトワークスのカタログには、人気キャラクターを起用し、幅広い層へアプローチ!
人気連載・週刊【スズキ・アルトワークスを語り尽くす】。スズキ・アルトワークスを語らせたら終わらない(?!)スズキ博士の “ワークスの歴史” を繙く連載、第3回。
今回は、1989年に3代目アルトとともに登場した、2代目ワークスを語ろう。人気キャラクターも立て、幅広い層へアプローチしながらも、さすがのワークス。速いのだ!

TEXT / PHOTO:スズキ博士(Dr. SUZUKI)
2代目アルトワークス 1988年9月~1990年2月

見た目は丸く、力は強く太いワークスへ

アルトツインカムターボ “ワークス”。初代はどこか硬さのある風貌、個性だったが、1989年9月登場の2代目ではスタイルを一新。実用面でも大きな進化を遂げた。人気キャラクターを起用することで幅広い層の身近な存在にしながら、速い。そんな、強靭な1台となった
DOHCターボのRS/X(FF)、RS/R(4WD)、SOHCターボのS/X(FF)、S/R(4WD)が登場。アルミホイールのデザインは4車種で異なる。RS/X、RS/Rのヘッドライトはイエローバルブ

2335mmのホイールベースはクラス最大

2代目ワークスは、3代目アルトとともに登場した。
アルトは角目ヘッドライトで、丸目のマスクはワークス専用の意匠である。顔つきは、見る角度によって愛らしく映り、一方からは特徴的なロングホイールベースと調和する、ワイドなローフォルムに魅せた。

そのホイールベース長は当時、クラス最大を謳った2335mm。アルト系の新ボディはタイヤを車体の四隅に配す。初代の2175mmから160mm延びたのだ(参考までに、後発の初代ワゴンRも2335mm)。

結果、ワークスではゆとりある室内空間や、運転しやすい非対称ドライバーズシートレイアウトなど、実用面の進化が叶った。
テレスコ付きステアリング、2WAYリフター付きドライバーズシート等の装備もクラス初で新しい。グレードはFFがRS/X、フルタイム4WDがRS/R。5MTと、RS/Xはワークスの性能を身近にする3ATも選べた。

カタログはキャラクターも立て、スタイルと室内のデキを強調。初代の四面図と比べると、ディメンションの違いが瞭然。なお、RS/X、RS/Rの車両価格は約96万円、約106万円

F5B型DOHCエンジンを直立状に搭載

DOHC4バルブの3気筒ターボエンジンは、初代に載るF5A型の後継機、F5B型だ。ボア65.0mm×ストローク55.0mmの比で、オーバースクエアが際立つ。総排気量は543ccが547ccになった。
車両への搭載状態も注目点だ。初代のF5A型は、車両前方やや傾斜して積まれた。そして、インマニが車両後方へ延びた。
いっぽう、2代目はF5B型が直立状に収まる。インマニ、インタークーラー等の周辺部品はエンジンに寄せた。
丸目ライトも意味あり? そんなわけで2代目のエンジンルームは奥行が短く、小ぶり。それもあって室内が広い。

F5B型はF5A型に対してボアが3mm大きく、ストロークが5mm短い。基本構造、ボアピッチ、圧縮比、インジェクター容量はF5A型を継承(写真は2代目ベースの次期モデルCN21S型)

最大トルクは0.5kgm増、7.8kgmに向上

ターボは、初代と同じIHI製RHB31型だ。F5B用は、排気側のタービン径が少し大きい。タービンハウジングのA/RはP7。中高回転に強みを持つ、ショートストロークエンジンに合わせた仕様といえる。レッドゾーンの9000rpm近くまで、綺麗に回ったのを覚えている。もちろん、定格値も高まった。

最大ブースト0.9㎏/㎠で最高出力64㎰/7500rpmは、自主規制値ゆえに不変だ。その代わり最大トルクは7.8kgm/4000rpmと0.5㎏-mも上り、新車時では一番だ。この増加にはインマニ系とインタークーラーの形状変更、加えてエンジンの搭載角度も奏効したと思う。ターボで圧縮された空気の流路、つまりパイピングを効率的な取り回しにできた。

F5A型(上)とF5B型のパイピング構成。エンジンが前傾するF5A型は、ターボ側の配管が四角状。車体との位置関係がある。経路が長く、Uターンもある。F5B型は簡素で最短
制御系はEPI電子制御燃料噴射とESA電子進角。個別だったユニットは、一部改良で8ビット1マイコンのECUに機能を統合。また、ターボのサージ音を抑えるABVバルブも追加

SOHCターボ仕様もラインアップ

F5B型SOHCターボエンジンを搭載するFFのターボ S/Xと、フルタイム4WD のターボS/Rも展開した。定格は最高出力58㎰/6500rpm、最大トルク7.4kgm/4000rpm。扱いやすい低中速トルクは評判だった。S/Xは3ATも設定。89年5月には快適装備が充実、スペシャルモデルのターボ i.e.を発売する。

サス周辺と駆動系は要所を改良

サスはダンパー、スプリングともに2代目専用の特性だ。I.T.L.式のリヤは、初代ではアルト系のリーフリジッドからの置き換えだった。新ボディの2代目は車軸の位置が修正され、ホイールベース160mm増の内訳になっている。
駆動系では、5MTのギア比がすべて変わった。現行型まで採用が続く4.705のファイナル比は、この2代目が始まりなのだ。RS/Rのフルタイム4WDについては、仕組みの基本を初代から受け継ぐ。
装着タイヤは総幅が10mm拡がり、サイズが155/65R13。フロントブレーキはキャリパーの変更で13インチ用ディスクを対にするなど、要所が改良を受けた。

サスの構造は初代から4代目まで共通。フロントはI型ロアアームにテンションロッド兼用スタビライザー。リヤのI.T.L.はトレーリングアーム、ホーシング、ラテラルロッドで成立

2代目は新軽自動規格対応への基礎づくり

登場から半年、1989年春に購入したRS/Xは、俺にとって初のワークスだった。
楽しんでいたものの1990年春、練習会で桜木にヒット。軽傷で済むも、翌月に同じ会場で左旋回中に横転……。
板金も考えたが、軽自動車の規格変更を迎え、新ワークスの注文に踏み切った。

そう、2代目の販売期間は短く、1990年1月頃に終えたと記憶する。2代目投入は1990(平成2)年1月の規格改定に向けた、基礎づくりだった。そして1990年2月、マイナーチェンジで改まる。

次回に続く

社外の競技用部品が多数あった。筑波でのワンメイクレースは規定がN1からNEリブレに変り、ターボ交換と排気量の700cc化が可能になる。FFはデフにL.S.D.装着が実現
仕様・諸元(一部)
駆動方式(RS/X):2WD(FF)
    (RS/R):フルタイム4WD
型式(RS/X):M-CL11V
  (RS/R):M-CM11V 
エンジン:F5B型DOHC4バルブ直列3気筒インタークーラー付きターボ
ボア×ストローク:65.0mm×55.0mm
総排気量:547cc 
トランスミッション:5速MT/3速AT(RS/Xに設定)
全長×全幅×全高:3195mm×1395mm×1375mm(RS/R 1400mm)
ホイールベース:2335mm
トレッド:フロント1225mm(RS/R1220mm)/リヤ1200mm
車両重量:RS/X 610㎏(3AT 630㎏)/RS/R 660㎏
乗車定員:2名(後部座席使用時4名)
最大積載量:200kg(2名乗車時)/ 100㎏(4名乗車時)
タイヤ:155/65R13
車両規格:昭和51年1月施行 旧々軽自動車規格
※DOHCターボエンジン搭載車の初期モデルを掲載

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著者プロフィール

スズキ 博士 近影

スズキ 博士

当時の愛車、初代ミラターボTR-XXで初代ワークスと競って完敗。機会よく2代目ワークスに乗りかえ、軽自動…