販売価格450万円の旧型「シビック タイプR 」が、もらい事故で提示された保険金額は180万円!という悲劇

昨今は古いスポーツモデルが新車価格を大きく超える高値で取引されるのは珍しいことではない。先日、プレミア価格が付き450万円となった「シビック タイプR (FD2型)」が不運にも交通事故に巻き込まれてしまったというニュースがあったが、注目すべきは事故後の展開だ。自分に非が無いもらい事故で全損扱いとなったタイプRが、保険会社から提示された保険金額は180万円だったという。希少な古いクルマが交通事故あった場合、どのように考えるべきなのだろうか?
TEXT●工藤貴宏(KUDO Takahiro) PHOTO●Honda

プレミア値で450万円の「シビック タイプR (FD2型)」が、もらい事故で全損。

シビックType Rが話題になっている。
といってもここで取り上げるのは先日発売されたばかりの新型ではない。歴代モデルの中でもっとも漢(オトコ)らしいといわれる「FD2」についてだ。つまり2007年から2010年まで発売されていたシビック Type Rに関することです。歴代モデルのなかではじめて、そして唯一の4ドアセダンモデルのシシビックType Rですね。

そんなFD2型Type Rに関して先日、大きく話題になった出来事がありました。
とある販売店が売値が450万円で翌日納車予定のFD2型Type R(2007年式)を販売店スタッフの運転で納車前試走していたとこと、交差点で赤信号無視のクルマに突っ込まれてしまったという。なんとも不幸な事故だと言わざるを得ない。貴重なFD2が……。

3代目シビックタイプR(FD2型)から3ナンバーとなり、現在でも4ドアのスポーツセダンとしての人気が高い。

プレミア値の付いた、90〜00年代あたりのスポーツカーは要注意!

多くの人は、その中古車の販売価格が「450万円(新品のナビ&ドラレコ込み)」ということに驚いたかもしれません。それは新車価格を大きく超えるものですが、昨今は古い、もしくはチョイ古のスポーツモデルが高値で取引されるのは珍しいことではない。FD2はもともと生産台数が少なかったこともあり、現在の中古車価格としては不当に高いものではないと判断してよさそうです。

いっぽうこの事故のニュースが瞬く間にクルマ好きの間に広がった理由は、事故後の展開じゃないでしょうか。報道によると「相手の保険会社から全損扱いで約180万円を支払うと提案があった」のだとか。
「販売価格450万円なのに、相手の保険会社から支払われるのは180万円に過ぎないなんて」と考えるか、もしくは「10年超落ちのクルマとしては、もともと180万円の価値しかないのだから、当然のこと」と考えるかは人それぞれでしょう。しかし、古いクルマに乗っている人や、最近の中古車価格高騰を知っているなら前者のように感じるのではないでしょうかね。
どう決着をするかは、当事者ではない我々としては今後の流れを見守るしかありません。筆者はこれを単に他山の石としないために参考になる部分があると感じたのです。

2007年の発売当時「シビックType R」の価格は283万5000円だった。

交通事故は他人事ではない、ドラレコ&任意保険は良いグレードを選んで損はない。

まずはドライブレコーダー、しかも高性能な機種を装着すること。
そもそもこの事故の発端は相手の信号無視にあるわけですが、相手は当初「青信号で進んだ」と主張していたとか。ドライブレコーダーがあったから相手の信号無視が判明したわけですが、もしドライブレコーダーがなければ証拠はなく、Type R側にもいくばかりかの過失が課せられたでしょう。
いまや、自分の無罪を証明するためにもドライブレコーダーは必須。しかし、ドライブレコーダーがあるだけで安心してはいけない。性能の低いタイプには信頼性に不安(肝心な時に録画できていない可能性)があるし、画像が不鮮明で状況がきちんと見られないパターンもあり得ます。そのため、ドライブレコーダーは安物を狙わず増しても信頼できる製品を選ぶべきでしょう。ついているだけで安心してはいけないのです(ドライブレコーダーで使うとSDカードの寿命が意外に長くないのでその定期的なチェックも忘れずに!)。

もうひとつは、任意保険の「弁護士特約」を必ずつけておくことでしょう。
今回のように自分側に非がない事故の場合、基本的に自分の任意保険は使えません。相手との交渉を自分のかけている保険会社におこなってもらうことはできないです。
しかし弁護士特約をつけておけば、自分に過失のない事故でも相手との交渉を弁護士に依頼できます。弁護士に間に入ってもらうかどうかで、交渉の流れが大きく変わるのは言うまでもないでしょう。
契約にもよるが、弁護士特約の掛け金は年間2000円~3000円程度。今回は「業務中の事故」なので一般ドライバーの状況とは違う面もあるようだが、こういった事故を知れば付けないなんてありえないと思いますが、いかがでしょう?

そしてもうひとつ、車両保険は絶対につけるべきですね。
損害保険料算出機構が発行する「自動車保険の概況2021年度統計」によると、2021年3月末における任意保険(共済を含む)の加入率は全国平均で88.4%。つまり10台のうち1台以上は任意保険に加入していないことになります。結構多くないですか? そういった車両に追突された場合、たとえ相手に全面的な非がある事故でも車両の損害に関する賠償を求めるのは事実上難しい。そこで、最悪のパターンとして自分が掛けている任意保険を使うことになるのですが、そもそも車両保険をかけていなければそれ自体が不可能。だから高額車両に乗っている場合は特に、車両保険は必須と考えたいですね。

過去のクルマには最新モデルにはない良さがある、生産数の少ない貴重なクルマなので大切に乗り継ぎたい。

「15年も前の車が450万円!」とか「信号無視のドライバーに突っ込まれるなんてかわいそう」とか、ニュースの感じ方は人それぞれだと思います。でも、その事故が単なる他人事ではなく、自分自身に置き換えてみるといろいろ学べることがあるな…と思ったりしたわけでした。

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著者プロフィール

工藤 貴宏 近影

工藤 貴宏

自動車ライターとして生計を立てて暮らしている、単なるクルマ好き。

大学在学中の自動車雑誌編集部ア…