EV車の知っておきたいこと

「これからどうなる? 充電渋滞」桃田健史がわか〜りやすく徹底解説! そこが知りたいEVのこと PART1 基礎講座#003

リチウムイオン電池を搭載するプジョーE-2008。
EV車と言ってもまわりで乗っている人も少ないし、どうやって充電して良いかもわからない。そんなEV車に関して気になっていることや知っておいたほうが良いことを質問してみた。

もっと知りたいEV車のコト

第1弾では電動車の成り立ち、第2弾ではハイブリッド車とプラグインハイブリッド車について解説したが、第3弾ではEV車についての細かな解説を桃田健史先生にしてもらいました。

日産リーフの+eでは一充電走行距離を伸ばす62kWhバッテリーを搭載。

Q6 EVやハイブリッドカーを購入する時の補助金とか税制面での優遇ってあるんですか?

<回答>
EVを購入する場合に、国では経済産業省によるクリーンエネルギー自動車導入事業補助金(CEV補助金)がベースです。また、年度によっては、経済産業省の別枠での補助金や、環境省にも補助金がありますが、予算がなくなると制度も終わります。その他、地方自治体での都道府県や市町村で独自の補助金制度もあります。ハイブリッドについては普及台数がかなり増えたこともあり、補助金対象よりも税制優遇が主体になっています。

補助金を使えばシトロエンE-C4など憧れの輸入車にも手が届く。

Q7 電気自動車の場合、1回の充電で走れる距離は?

<回答>
EVでは『満充電での航続距離』と表現します。航続距離は端的に、搭載するバッテリー容量によって決まります。例えば、バッテリー容量が20kWh程度だと航続距離は150km前後。また、テスラなど100kWh搭載だと600km程度まで伸びます。つまり、航続距離が長いクルマは車両価格も上がります。また、車内の暖房を使うなどバッテリーに対する負荷が増えると航続距離が減る傾向があるなど、こうしたEVのデメリットを各社が工夫して改善を目指しています。

日産リーフの+eでは一充電走行距離を伸ばす62kWhバッテリーを搭載。

Q8 全国に充電ステーションってどのくらいあるんですか?

<回答>
ゼンリンによりますと、2021年2月時点で全国に約3万基。その内訳は、急速充電器が7950基、また普通充電器が2万1700基です。ただし、課題はこうした設置数が近年になり若干減少していることでしょう。原因は2010年代初頭に国が主導してEV普及を行った際に設置された充電器が製品寿命を迎えているからです。収益性から再購入しない事業者も多くいます。国としては2035年に向けて公的な充電器の普及を補助金などで後押しする計画です。

専用スマホアプリなどで充電スポットのチェックが可能だ。

Q9 高速道路で充電渋滞をみたことがあります。これからどうなりますか?

<回答>
そう簡単にこの問題は解決しないでしょう。EV普及には充電器普及が必須ですが、課題は充電時間です。ガソリン車やディーゼル車ならば燃料満タンまで数分間で済みますが、EVは急速充電で満充電の80%ほどを満たすのに30分程かかります。今後、電池技術の発達によって充電時間が短くなっても、ガソリン車などと同じような短時間で充電する技術が確立するのはかなり先になりそうです。EVの肝は、計画的な利用を徹底することだと思います。

アウディeトロン GTなど輸入車も日本の急速充電に対応。今後ますます混雑か!?

Q10 普通充電と急速充電の違いは?

<回答>
普通充電は、日本では電圧100Vまたは200Vの交流による充電方式です。出力6kwで「リーフ」標準モデルを充電すると約8時間とひと晩かかりますが、価格面で自宅や企業での設置がしやすいといえます。一方、直流による急速充電は,満充電の80%ほどを約30分間で充電できますが、機器の価格や設置費用が高く、事業者向けです。電池業界では、急速充電はバッテリーに対する負荷が大きいという認識が一般的で、普通充電を推奨しています。

右が急速充電のCHAdeMO、左が普通充電口となる。

Q11 チャデモってなんですか?

<回答>
急速充電方式は大きく3つ。日本が主導するチャデモ(CHAdeMO)方式、欧米が主導する通称コンボ方式、そしてテスラが独自採用している方式です。充電の規格と標準化については、2010年代に入ってから、世界各国に影響力があるアメリカの自動車技術会で議論になってきました。ところが、チャデモ方式とコンボ方式のそれぞれを推奨する関連団体での折り合いが、現時点でもついていません。そのため、国や地域によって導入方式が違う状況です。

チャージ/電気/ムーヴの意味を含むCHAdeMOに対応したホンダe。

Q12 クルマから家に給電できるシステムがあると聞きました

<回答>
最近は、100V/1500Wを出力できるコンセントが装備されているハイブリッドがかなり増えています。一方、EVから住宅向けや外部機器に電気を流すことを、給電と呼びます。V2H(ヴィークルトゥホーム)とも称され、この場合は専用機器を使って電気を取り出す必要があります。一般的に、家庭では1日あたり使う電気量が10kWh程度ですので、例えば電池容量40kWhのEVだと4日分に相当します。V2Hでは、EVを走行用と給電用に賢く使い分けることが必要です。

トヨタホームではV2Hによる「クルマde給電」をアピール。

Q13 搭載電池のライフは

<回答>
10年間で新品に対して2割程度は劣化するといわれています。基本的に充電回数がリチウムイオン二次電池の劣化に影響します。ただし、EVのリユース(再利用)を事業化している企業によりますと、EVの使用条件によって劣化の状態にかなりのバラツキが生じるそうです。これまで蓄積された同社データでは、アクセルのオンとオフの頻度も劣化に影響が大きいそうです。都心など走行速度が低くても渋滞が多い場所などが該当します。

リチウムイオン電池を搭載するプジョーE-2008。

Q14 ICEって、最近よく聞くようになりましたけど…

<回答>
ICEは、インターナルコンバッションエンジンの略称。日本語では内燃機関のことです。気筒内で燃料と空気の混合気体を燃焼させるタイプの原動機です。つまり、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを指します。正確には、ハイブリッドはICEとモーターの複合ですが、欧米の政府発表資料でのICEにはハイブリッドは含まないなど、政治的な思惑が見え隠れします。EVシフトが進む中、ICEの解釈について今後、世界各国で議論になりそうです。

日産GT-Rニスモ2022年モデル搭載の3.8L V6ツインターボエンジン。

Q15 ハイブリッドで「48Vシステム」って聞くようになりましたが?

<回答>
自動車に搭載されている電装品は、12Vの鉛電池で作動します。これを4倍に高めた48Vとしてハイブリッド機構に活用する方式です。エンジンの補機類であるオルタネーターを活用するハイブリッドシステムに使います。2010年代前半に、ドイツの大手自動車部品メーカーが主体となり開発が進んだため、ドイツ車での搭載が多く見受けられます。また、車載装置のIT化によるバッテリーへの負担が増えたことも48V化の後押しになっています。

48Vシステムを搭載したメルセデスベンツEクラス。

Q16 世界初の量産EVは?

<回答>
三菱i-MiEVは、世界自動車史の中でも極めて重要な存在です。i-MiEVが登場した2000年代末の時点では、大手自動車メーカーの多くがEVに対して基礎研究や限定的なリース販売にとどめていました。EVの本格普及に対して疑問を持っていたからです。i-MiEVは三菱経営陣による英断でしたが、量産化に向けて開発陣は多大な苦労を強いられました。そうした現場での知見の積み重ねが、新型アウトランダーPHEVや日産と共同開発した軽EVに活かされています。

i-MiEVの生産は終了したが、ミニキャブMiEVは今も健在。

PROFILE
桃田健史

1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

著者プロフィール

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